先週に続いて「WEAKNESS」から「ghost」という楽曲の話を。
元々デモを作るその前からレコーディングの半ばまで、この楽曲を所謂リードトラックとしてビデオを撮ったりラジオで流してもらったりするつもりだった。
(「WEAKNESS」のリードトラックは結果的に「fallin`」を選んだ)
「岡林健勝によるソロプロジェクト」という文言を色んな場所での自分のプロフィール欄に並べているけど、名前は変わったものの今も昔もシンガーソングライターを自称しているし自負している。
高校の頃にバンドを組もうと試みるも、軽音楽部もなければ楽器を弾ける誰かも居なくて、いつか組めたらと思いながら曲を書いていた。
東京へ来てライブ活動を始めてからもバンドをいつか組めたらと思いながら活動していくうちに、一人で歌って弾き語る事への愛着や格好良さが芽生えて来て、シンガーソングライターである事に気付けば誇りを抱いていた。
それが大体上京してから3年目、2015年の頃で。
2015年は一年間の殆どを、音楽を辞めようか考えながら過ごしていて、そんな中でも辞める時は「このまま一人で」と考えていて、やってく内にやっぱり続けたいと気持ちが固まった年末も「これからも一人で」と考えた。
そうして迎えた2016年には加えて、というより更に進化して「新しいシンガーソングライターになりたい」と願うようになった。
その気持ちのままに、やり方が分からないものの自分なりに編曲をしたり、歌詞カードやジャケットのデザインをして自主制作盤を作った。
自費ゆえに制作費がまるで無い中で作ったからライブ会場でしか発売出来なかったり、CD以外の、例えばミュージックビデオなんかに出せる費用も全く無かったから、製作時は自信作になりそうなのに広めるきっかけが産み出しにくい事にもどかしさを正直感じていた。
それでもまずは作品を出して、次作で今作を超えて、その作品ではそういう事も出来るようにと、自分の音楽をより広められるようにしようと目標を立ててマスタリングという完成作業に向けての準備をしていた。
準備と並行してライブもやっている中で、当日券で来てくれて本番が終わると話さずすぐに帰っていく謎のお客さんが現れた。
「何だろうか」と思いながらも特に俺から話しかける事もなく、お互いがお互いをどこか不思議がるライブが3回ほどあって。
マスタリングの数日前、大学の講義中にメールが来た。
送り主はどうやらそのお客さんで、自分の音楽に対する思いと、CDを作らないかという話をしてくれていた。
正直次作を出せるとしたら早くても一年後だと思っていたから、まさか今作っている作品が完成する前にそんな話があるとは思ってもみなくて嬉しさと、そのあまりの動揺が凄かったのを覚えている。
マスタリングが7月31日、発売日が8月31日。
その一ヶ月の間に何度かご飯へ行って、色んな事を話した。
その中でシンガーソングライターである事への誇りが高まっている事も実感したし、より凄いものになりたいし作りたいとも思った。
CD発売から一週間後に改めてしっかり話をして次作を作る事、つまりは「WEAKNESS」を作る事が決定した。
「新しいシンガーソングライターになる事」「次作で今作を超えて、より自分の音楽を広められるようにする事」、最近掲げ始めた目標。
自分次第で早くも叶えられる事になった。
話し合いの中でミュージックビデオを作ろうとなった時、頭の中で巨大な時計をハンマーで叩き壊す映像が浮かんだ。
それと同時に浮かんだ「ghost」のイントロに新しさを我ながら感じて、リードトラックにしようと決めてから作曲を始めた。
当時の自分は大小限らず短所や暗い話をアクセサリーのようにしている節があった。見せびらかせば、それも過剰にすればするほど人が寄ってきたり貰える言葉があると知って、それに甘えていたから乗り越えようともしていなくて。
その甘えを断ち切って、色んな過去やこれからに真っ向から立ち向かいたいという気持ちが当時一番強かった。
何かから抜け出せてない姿を見せて、笑ってもらったり手を差し伸べてもらったりしていたし、それしか人と繋がる術を知らなかった。
だけど自主制作盤を作っている時、色んな壁を超えてみて、何かから抜け出そうとしている姿を見せても笑ってもらったり手を差し伸べてもらえる事を知ったし、自分も相手も本心を見せ合えてる気がして心地が良かった。
ちゃんと誰かと分かり合えるように、新しいシンガーソングライターになる為に、変わらないといけないし変わりたいと思った。
その上で色んな人に音楽を含め、自分を知ってもらおうと思って歌詞を書いた。
正直に言えば変われてない部分もあったりする。
未だに甘えてしまったり、陳腐な共感の誘い合いもしてしまう。
只、あの頃と比べて変えられた部分もあるし、その分超えなきゃいけないものも高くなったし増えている。
結局現実にはならなかったけど、今もあの時脳裏に浮かんだ映像みたいに、大きな時計をハンマーで壊すように生きている。
少しずつ変わっていけるように。
2018.11.2.PM25:36