先週に続き「WEAKNESS」から「煙と唾」についての話を。
この楽曲を作ったのは2年前、2016年9月の事で、「WEAKNESS」の中だと「雨降る夜にさよならを」の次に古い楽曲になる。
今でも1枚アルバムを作り終えると達成感と疲労感とでしばらく楽曲が書けない(書かない)状態に陥るのだけれども、例に漏れず本名名義での自主制作盤を作り終えた後もその状態に陥り、そこから心身を仕切り直せた2~3週間後にレコ発ライブで披露しようと「simulation」という楽曲が出来上がり、そのライブが終わるか終わらないかの頃に出来たのが「煙と唾」だった。
(当初「WEAKNESS」に「simulation」も入れるつもりではあったものの、バランス感だったりを考えて収録しなかった。とはいえボツにしたわけではないので、いつか聴いてもらえればと思う。)
この辺の時期には完全に「音楽でやってく」という気持ちを掲げきれていた。
17の頃から掲げてはいたものの、その頃のそれには芯があるとは今振り返ればあまり思えず、自分でもどうなりたいとかどうしたいかがいまいち曖昧だったけど、やっと芯のある言葉として自分に言い聞かせたり周りに伝える事が出来始めていた。
それはつまり本気になったという事で、それに伴って納得いかない事もより際立って見えてきて、急に怒りが募った時期でもあった。
全国ツアーでライブをしてお客さんから貰った投げ銭で風俗へ行くシンガーソングライター、相手に全ての非を押し付けた上で意地の悪い説教を繰り出す会社員。
一方は「社会経験」「曲作りや芸の肥やしとして」と性欲をカモフラージュし、一方は「愛情ゆえの」「こんな事言ってくれる人居ないよ」と加害欲や時折はみ出る自己顕示欲をカモフラージュしていた。
「ヤリたいから」とか「誰かを苛めたいから」とか率直に言ってやる分には最悪構わなかった、納得いかなかったのは生真面目そうに見える嘘を重ねている部分だった。
1秒ですら長いレベルの、本当の一瞬の一瞬でバレるような嘘の中でもまだ真人間だと思ってもらおうとしているその神経が許せなかった。
でも蓋を開けてみればライブをした時、自分よりもお客さんを呼べたり人気があったり「誠実そうだよね」と言われていたのはそのシンガーソングライターだったし、発言力や社会的地位を持っていたのはその会社員だった。
音楽という土俵で戦っている以上、音楽が良ければ勝ちだと思っていたけど場外は愚か、あるのか無いのかすら曖昧にも程がある場所で勝負が決められている雰囲気に嫌気が死ぬほど立ち込めていた。
戦いようもなければ抗いようもない、生まれ持ったものや王道な後付けで結局色々選ばれているその感じに、たとえ間違っていたとしても取り敢えずはっきり「間違っている」と言いたかった。
本質だけを見れば、つまりは音楽という土俵で音楽だけを見れば今ある勝敗がほとんど全て覆るんじゃないかと、負け犬の遠吠えと捉えられたとしても言いたくて書いたのが「煙と唾」だった。
弾き語りで作った当初は発表したものよりキーが3つ程高く、サビはメロディも全く違えば歌詞もあった。
何ならテンポも今より早かったし、ほぼほぼ別物のような楽曲だった。
アレンジする際に浮かんだイントロのフレーズがギターで弾くにはギリギリ過ぎて、一先ず弾きやすいポジションで弾いたのが良かった事からキーを下げて、それに伴ってテンポも下げた。
それに合わせて歌ってみた時にサビのメロディが新しく出来て、今の「煙と唾」が完成した。
原型のサビで歌っていた歌詞は、サイトによってはネットで見られるので興味があれば是非に。
曖昧な基準でジャッジが下される場面は今でも沢山あって憤りが募るけど、本来のやり方で、本質だけを見た時にせめて勝てるようではありたい。
次でWEAKNESS」のセルフライナーノーツはお終い。
これで現在発表している楽曲の解説を全て終えると今は言えるけど、来週にはもう言えなくなりそうだ。
何言ってるか分からないと思うけれど、取り敢えず来週をお楽しみに。
2018.11.14.PM27:40