聖王女と半身の魔王 作:スイス政府
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モモンを最後尾にして、馬車二台は首都ホバンスを目指す。
(しかし、ますます謎の人物だわ…)
カルカが最後尾の存在に注意を惹かれるのも仕方のないことと言える。話もまとまり、いざモモンを首都を案内する段階のこと。
問題は起きた。モモンが大きすぎるのだ。
とてもじゃないが、今ある馬車には乗れない。一人、歩いてもらうのも相手の印象を
考えるとかなり悪手である。
走力は落ちるが、馬車を引く馬に乗ってもらうしかないという案が出た時、モモンが自ら馬型のゴーレムを召喚したことによりこの問題は解決した。
(あれも冒険で手に入れたアイテムなのかしら…)
普通、あれほどのアイテムをほいほい人に見せるのは憚られるものだ。
この世界で強力なアイテムの価値は計り切れない。それでも簡単に披露できるのは。こちらを信用してくれたか。あれほどのアイテムは大したことがないと思っているのか。
それとも、奪われることなど考えられないほど強者なのか。
王族という面子を鑑み、冷静を保っていたが人目を気にしないのであればもっと話を聞きたかった。
勿論、珍しいゴーレムについてもだが冒険譚もである。
カルカは非常にしっかりしているとはいえ、まだ11歳。そういった好奇心や冒険心は人並みにある。むしろ、王族として危ない橋は渡らないからこそ惹かれるものでもあった。
また、モモンの人柄もかなり好印象でそこが、話をもっと聞きたいという気持ちを強くしているのかもしれない。
しかし…
(なぜか、モモンさんと接すると鳥肌が収まらないのよね…まるで、凶悪なモンスターと対峙しているときみたい)
あの、全身鎧の下がとんでもない化け物だったとしても不思議ではないとすら考える。しかし、実際にはかなり整った黒妖精の顔が出てきた。
人柄は紳士的で理知的。そういった好印象も抱いている。しかし、この感覚だけは抜けきらない。
他のもの達もそうなのだろうか?
歴戦の戦士であるグスダヴスにアントニオには、この感覚の答えがでているかもしれない。
レメディオスはうん…もしかしたら、鋭い勘でモモンさんに何か違和感を感じているかもしれない。眠そうな半目をしている時点で期待できないが。
レメディオスが居眠りをグスダヴスに注意される前にカルカが質問を投げかける。
「えーと、これからモモンさんを冒険者組合に案内して後日、おもてなしをしたいのだけど…その前に聞いておきたいことがあります」
グスダヴスとアントニオがカルカの言葉に姿勢を整え、畏まる。
レメディオスは姿勢はなんとか畏まっているが、相変わらず眠そうだ。
「モモンさん…いえ、あのモモンという騎士にあなた達はどういった感想をもちましたか?聞かせていただけます?」
「そうですね…基礎能力が異常に高い戦士という印象を受けましたね。感知能力やスピードも英雄の域に達している」
「私もグスダヴス様と同じ印象ですね。ただ、剣技はいまいちのようです。亜人種の基礎スペックで押していく戦闘スタイルかもしれませんね。しかし、冒険者に当てはめるのであればアダマンタイト級でもおかしくないと感じました。」
「そうか?体裁きがうまいもんだからそう感じるかもしれないが、剣技がおそまつすぎたではないか。大剣を二刀持ちの時点で、剣技の常識は通用しないので一概には言えないが」
グスダヴスとアントニオがモモンの戦闘スタイルの面から感想を述べる。実際モモンと戦闘したのだからこういう感想がでるのはあたりまえなのだが、カルカはそういったことを聞きたいのではない。
しかし、一度できた流れを切るのは、あまりいいとは言えないので、浮かんでいた疑問を投げかけてみる。
「そういえば、あの大剣はそうとう重量がありそうでしたね。あれを振り回せるのはアイテムの力でしょうか…それとも黒妖精の種族は力持ちな種族なんでしょうか?」
グスダヴスが苦笑いの様な表情を浮かべる。しかし、それはこちらを嘲笑したものではなく幼きものに向ける微笑みの類のように悪意のないものである。
黒妖精のスペックは、聖騎士団に所属するものにおいてどうやら常識だったようで、それを質問したカルカに微笑ましさを感じたんかもしれない。
しかし、主(雇い主)に向けるには相応しい態度ではない。
そのことに気づいたグスダヴスは、軽い謝罪を入れ話し始める。
「黒妖精は人間よりも感覚器官や肉体能力で優れた面の多い亜人です。しかし、特に彼らが腕力が強いという特徴は兼ね備えていないです。単純に鍛錬したか、カルカ様がおしゃるようにあの大剣が相当な魔法武器なのかも知れません」
グスダヴスがカルカが分かっていないであろう黒妖精の情報を伝える
しかし、いつになっても本題のカルカが感じたモモンへの違和感には触れない。自分が過敏になりすぎていただけだろうか?とカルカは思い始める。
「ところでレメディオスはどうだった?」
カルカが先程から、首をあかべこのように時々ガクカカクンさせているレメディオスに話を振る。
「ふぇ!!…私はあの鎧が相当高価な魔法武器だと思います!アントニオ…さんの攻撃はともかく、私の攻撃でも傷一つついていませんでした!」
「いちいち、余計なことを付け加えないと喋れないのか!?グスダヴス様がいるから一応、さんはついているが」
「五月蠅い!私は事実を言ったまでだ!」
「おーおーそうかい。ホバンスに戻ったらボコボコにしてやる。訓練所に来いよ」
「静かにしないか!カルカ様の前で騒がしい!!」
カルカは気にしないというジェスチャーをグスダヴスに送る。
しかし、一度話を振っただけでここまで騒がしくなるレメディオスの世話は大変だろうなとグスダヴスを気の毒に思うカルカであった。
「さて、話は逸れましたが皆さんの意見は大変参考になりました。お父様への報告は私が直接行いますが、グスダヴスに報告書の提出をお願いしますね」
「はっ!畏まりました。」
これだけ、話合ってもカルカの感じた感覚の説明に充るものはなかった。
きっと、彼の実力が威圧感となってカルカに伝わったのかもしれないな。今は、その様に自分を納得させておくことにした。
・・・
(もしかして、王族のおもてなしってめっちゃ豪華なパーティーとかなのでは!!?)
馬型ゴーレムに乗って、気を抜いていた鈴木悟はとんでもない事実に思い至り、体をびくっと動かしてしまう。
乗っているのがゴーレムだからいいが、本物の馬であれば落馬は免れなかっただろう。
(ってことは、なんかこう…挨拶の仕方とか、食事のマナーとかあるの!?そんなの小卒の俺が知るわけないじゃん!!いや、食事は食べれないけど!)
正直、今回のおもてなしとやらに鈴木悟は乗り気ではない。確かに冒険者組合というのには興味があるが、アンデッドに豪華な食事など出されても困るだけだ。
では、なぜ断らなかったか…。それは、村人への恩返しのためだったりする。
(結構、長い間お世話になったからな。村人はいらないというだろうが、やはり恩には恩を返さねばな…今回の謝礼金をそのまま村に寄付しよう。それに、ちょうどいいからこの食事会とやらが終わったら旅に出てみるとしよう。立つ森跡を濁さずっていうしな!恩を返して、気持ちよくお別れだ)
微妙にあっていないことわざを無理に使い決意を固める鈴木悟。見る人によってはそれって手切れ金では?と思うだろうがそれは、本人は気づかないだろう。
「モモン!本当に俺もついていっていいのか!?」
ちなみにゴルカも連れてきている。本人には村に連れてきてくれた感謝を理由にしている。しかし、実際にはいつも「剣術を教えてくれ!!」とせがむゴルカを適当にあしらっていた罪悪感を晴らすためというのも理由だったりする。
自分が食べれない料理を食べる担当が欲しかっただけというのもあるが。
「ああ、俺はお前に村に連れて行ってもらったことに感謝しているからな。そのお礼だと思ってくれればいい」
(これで、剣術を教えなかったのは大目にみてくれよ!!)
(というか、こんなみてくれしてて剣が使えないってやばいよなぁ。まあ、これに関しては自分ではどうしようもないからな。後日の課題。そうだ!ゆくゆくは出来る様になればいい!)
必死に心の中でいいわけしていると、ゴルカがそういえば、といったふうに質問を投げかける。
「てかモモンって最初、俺に敬語だったよな?あれなんで?」
「ああ、俺は初対面の人には丁寧な言葉を使うように心掛けているんだよ。乱暴な言葉は無駄なトラブルを生んだりするからな」
最初はプレイヤーだと思っていたからとは、勿論言わない。
「ふーん。やっぱりモモンはすげー頭いいな!!俺も将来、聖王国軍に入ったらそうするよ!」
(小卒のおれが賢いと言われるのも複雑な気分だ…)
「そうだな。今回、聖王国軍の関係者がいるんだから剣の稽古をつけてもらえるかもしれないぞ。俺は、魔王にどうやら力を封印されているみたいだから教えられないが」
ちなみに、剣が使えないいいわけも魔王のせいにしている。これは比較的最近考え付いたいいわけだが、案外重宝している。
一人になるまで、怪しまれる要素は極力排除しなければならない。
「まじか!!モモンありがとな!!俺が軍士になるのを応援してくれるのはモモンくらいだ!」
「おおそうか。まあ、あまり興奮しないようにな。」
(そりゃ、親は畑を継いでほしいから反対するだろ…それに軍って危険な仕事だろ?まあ、本人の憧れを否定するのもあまりいいとは言えないしこんな感じでいいか)
別に応援してるわけではないがそれも言わない。
あの村に世話になっていたのは、右も左もわからない状況で一人になるのは危険だったからだ。そこまで深い仲になろうと考えていないのだからこれでいい。
(あー。取引先での作法とかでいいのか?一般常識は村で学んだけど王族の作法とかさっぱりだぞ)
ゴルカとの会話を終了すると、すぐに近い将来恥をかくであろう自分が容易に想像できる。
(まあ、どうせ俺は人間でもないしこいつらと関わるのもそうそうないだろうから、気楽にやればいいんだよな。そうだよ。リアルの営業に比べれば楽なほうじゃないか)
などと、開き直ってみる。しかし、
(やっぱ、いやだなぁ)
それとこれは別。異世界に来てまで恥はかきたくないと色々、対策を考える。
策などなにも浮かばないまま、目的地につくことは薄々勘づいてはいたが。
(異世界にきてまで胃を痛めることになるとは…村にいた時は結構スローライフだったのにな…)
遠い目をしながら平和だった過去を思い出す鈴木悟であった。
・・・
「ふう、疲れた」
鈴木悟は、案内された部屋のベッドに腰を下ろす。
「さすがは、城の中の部屋なだけあるな。高級感しか感じない。」
言葉の内容は褒めているが、一番込めている意味は落ち着かないだ。
これでは溜まった心労を癒すこともできない。
「まあ、あともうちょっとでこの国ともお別れなんだし。たまにはこういう明らかにおちつかない部屋で過ごすのもいいか」
アンデッドには、大してありがたくもないふかふかのベッドに寝転がり、さっきまでの出来事を振り返る。
結果として、最初に懸念していた堅苦しいパーティーなどはなかった。
一応、王への謁見など現実では相対しえない特殊な場面もあったが、周りのメンツのマネをしてればなんか終わってたという印象だ。
日本のサラリーマンをなめてはいけない。空気を読むのはお手の物である。
ちなみにゴルカは今は部屋にいない。
今は馬車内にいた一人の軍人のアントニオに稽古をつけてもらっているそうだ。
プチ休憩が訪れた解放感から伸びをして、体のコリをとろうとする。筋肉もない体がこるわけないが、こういったことをしてしまうのは人間だったころの残滓ゆえかもしれない。
それだけ緊張していたということもあるが。
「しかし、冒険者組合って全然冒険関係なかったな。無駄足とかいうレベルじゃないぞ。
改名を要求するレベルだ」
掲げる看板に偽りしかなかった施設は、密かに楽しみにしていただけあってガッカリ度も二倍だった。もし、リアルにあれば消費者庁が大忙しになるであろう詐欺まがいな名称だ。憤慨したが、今はそこまで気にしてもいない。
どうせ、あと数時間後には適当に一人で遊ぶ気なのだから。むしろ組合などがあってもルールが煩わしかったかもしれないのだから、早々に損切りできたと喜ぶべきだろう。
しかし、小日本人的思考の鈴木悟からするとなんの組織にも属していないというのは心細かったりする。
(やっぱり、もう少し情報収集してからかな…旅するのは)
あの村にいる間にこの世界の常識を得れるだけは得ておいた。
しかし、なんせ調査対象は田舎の村人だ。彼らの常識だけでは補完できない知識など山ほどあるだろう。
(だからこその冒険者っていう選択肢だったんだけどなぁ)
一応、村で得た知識ではこの世界のレベルは今の自分…つまりLV33でも十分やっていけるということだった。それどころかかなり強いレベルであるらしい。
しかし、これは村人の私観だ。一日中畑を耕している彼らより、冒険者という強さを第一においたもの達の意見のほうが万倍参考になることには間違いない。間違いないのだが…
(中にいる冒険者を見る限り弱そうだったな…あれのせいで村人達の話が信ぴょう性をおびてきたしな)
LV33などユグドラシルプレイヤーであれば瞬殺できる。だからこそ村人の意見は話半分に聞いていた。しかし、平均的な冒険者があれかぁ…とかなり微妙な気持ちになったことを思い出す。
最上位のアダマンタイトという位にいる冒険者なら違う感想を抱いたかも知れないが、どうやらこの国にはいないらしい。他の国の王国、帝国、竜王国などにはいるらしいが。
それなら、なおさら聖王国で冒険者になる必要は皆無であるので、冒険者組合が鈴木悟のなかでスルー案件なのは間違いない。
しかし、聖王国で会った冒険者が弱すぎてこの世界の強者のデータが計れないことはデータが不足しているという不安につながる。そのことが、超がつくほどの慎重派鈴木悟に一人旅への決心を鈍らせる。
(はあ…せめてモモンガのステータスでこっちにこれたらなぁ。こんなに慎重にならずに済んだのに…)
他人など信用ならないのだから、自分一人で生きていける様にしなければならない。
植え付けられたトラウマがその思いを大きくし焦らせる。
「よし…考えても仕方ない。取り敢えず村に謝礼を渡したら、この国をでよう。まずは魔法技術が発展しているらしい帝国で色々、周ってみるか」
鈴木悟らしくない楽観的な決定を下したと同時に部屋のドアがノックされる。
完全に油断していたためにテンパってしまい、どうずべきか数秒迷うが、落ち着いた調子でどうぞと返事する。
骨の体は平静を保つのに向いている。とこの時ばかりはありがたく思う鈴木悟。
部屋のドアを開けて入ってきたのは、カルカ・ベサーレス。
いるはずがない人物の出現に完全に心中パニックになる鈴木悟。態度にはおくびにも出さないが。
というのも王族というのは何をするにも傍にいるメイドやらなんやらが行うのが普通らしく、一人で何かをやることなど以ての他という空気感を短い関わりで感じ取れていたからだ。
そんな人物が呼びつけるわけでもなく自分の部屋に訪れる。どうぞといった手前玄関で止めるわけにもいかない。
結果、カルカが失礼します。と丁寧に部屋に備え付けられた椅子に座る。
王族が一人部屋に入ってきたことにも十分驚きだが、このカルカ11歳とは思えぬ美貌である。
大人っぽい顔というのもあるが、所作がいちいち麗しい。
骸骨になっていなかったら。その美貌に押されて不審者を絵にかいたような挙動不審に陥っていたことは容易に想像できる。
(立てば芍薬。座れば牡丹。歩く姿は百合の花。だったか?この娘のためにあるような言葉だな)
鈴木悟のもてうる最大の賛美表現でその可憐な少女を褒め称える。
ちなみに賢者モードの様に冷静なのは一回精神沈静化が起こされているからである。
(俺はロリコンではない…決してロリコンではない!俺の中のペロロンチーノさんが非常に悪い顔してる!畜生!最終日に来なかったくせになんていい笑顔だ!しかし、美少女が部屋に入ってきただけで精神沈静化って先が思いやられるな。まあ、もうあれはないから暴発の危険性はないが)
実戦未使用でなくしてしまった相棒を思い浮かべ、悲しみを増す鈴木悟。
ここまで感情がコロコロ移動したのは、転移後初かもしれない。それはそれで嫌だが。
「えーと。カルカ様どうしてこちらに?見たところ、世話係なども居られないようですけれど?」
「世話係のメイドは今は連れてきてはいません。ですが、今はグスダヴスが外で待機していますので一人というわけではありませんよ」
カルカがニコリと笑い愛想の良い顔で返答する。
「ああ、そうでしたか。それは失礼しました。」
モモンはさらりと了解の意を伝えるが、内心少し焦っていた。
モモンガのアバターの時からガチの編成ではなかったため、どうしてもステータスには隙が多くなる。感知能力もそのひとつだ。暗闇を見渡したりレベルの低い<透明化>ぐらいは看破できるが、気配を感知するなどの能力は持っていない。モモンガの時は魔法でその隙を埋めていたのだが…
(グスダヴスっていうと、護衛の一人だった奴か。あのレベル帯のやつが近くにいることすら気づけない…これはかなりのディスアドバンテージだ)
大きく見積もって、LV30程度だった男の顔を思い出す。あのレベルの人間にすら不覚をとるのだ。これがプレイヤーであることを想定すると頭が痛い。
「本題がまだでしたね。私がなぜこの部屋に来たかということですが…簡単なことです」
くすりと笑う目の前の少女に緊張感を高める。
(なんだなんだ?俺が何か粗相をしたか!?それとも、もっとやばいことか!?俺がこの世界の人間でないことに気づいているとか!?この子やたら質問してきたからな)
体に力を入れ、窓の位置などを確認する。この世界は今の自分には油断ならない。自然と警戒心を強める。
「モモンさんとお話に来たんですよ」
「はい?」
だからこそ、目をキラキラさせてそう言い放つ少女に困惑した声をあげてしまう。
「あー言葉が足りませんでしたね…えーと、私にモモンさんの冒険譚をもっと聞かせてくれないでしょうか!?」
「そんなことのためにわざわざ来られたのですか??」
モモンの呆れともとれる返答に、カルカが少し恥ずかしそうにをもじもじしながら弁明する。
「わ、私は王族として広い世界が知りたいんです。これは立派な王族の務めです。」
「は、はぁ…そういうものですか」
鈴木悟は納得いっていない声色のままカルカの弁明を受け取る。しかし、これは仕方のないことと言えよう。22世紀に生きた鈴木悟と異世界のローブル聖王国で生きるカルカ・ベサーレスでは情報…重要ではない部類だが、娯楽創作等の価値が全然違うのだから。
22世紀において創作物を閲覧することはそこまで難しいことではない。無料もしくは軽微な金額で行うことが出来る。
しかし、ローブル聖王国…もといその周辺国家ではそうもいかない。この世界の創作物の主なものに英雄譚があるが、それは語り手、もしくはごく少数の本からしか得られない情報だ。
インターネットもないのだから、得られる情報もほとんど同じようなものばかりになる。
カルカにとって、モモンの英雄譚を聞きに行くという行為は、王族にとってはあまり好ましくないが、この世界の人間ならまあ理解できる範疇の行動である。
しかし、そんなことを知らない鈴木悟は
(え…わざわざ、俺のあの冒険を聞きに来たのか?お姫さまって暇なのか?それとも俺が気づけないだけで、何か裏があるのか!?)
疑心暗鬼になっていた。
そもそも、今の鈴木悟は軽く人間不信に陥っているのだから、そうなるのも仕方ないが。
(俺の話を聞きに来ただけとか絶対嘘だ!なにかしら、思惑があるんだろう…それが、何か分からない今は注意しながらあちらの要求に応えるしかない!)
さまざまな勘違いの結果ではあるが、鈴木悟は面倒くさすぎる自己問答に入る。
「あの~ご迷惑だったでしょうか?」
固まってしまったモモンにカルカは、不安そうに上目遣いで尋ねる。
狙ってやったのではないだろうが、その行為に一般的な男は罪悪感を感じてしまうだろう。
勝手に警戒心を上げている鈴木悟は、その可愛い行為に目はいかなかったので、単純に相手を待たしてしまったことを詫びる。
「いえいえ、迷惑などではありませんよ。ただ、なんの話をすれば良いか迷っていたのです…」
「でしたら!!モモンさんが住んでいた国の話をしてください!どんなところだったんですか?」
苦し紛れの時間稼ぎであったが、こう反応されてしまっては話さないわけには行かない。
「えーと、私の住んでいた国はヘルヘイムというところでした。基本的に毒の霧や濃い雲に覆われた不毛の地でしたが、私の住んでいた…地域のナザリックは豊かなエリアでした」
勿論、自分のことについて話す経験などそうそうない鈴木悟は、つっかえつっかえであるが話を進める。ユグドラシルでの話を元にほぼ100%フィクションである点も話の進むスピードを遅くしているがそこは仕方ないだろう。
「モモンさんはその国ではどんな職業に就いて居られたのですか?」
サラリーマンです。とは言えるはずもない。
「あー、私は冒険者ギルドの一員でしたね。こちらの冒険者とは違い、多くのダンジョンに宝を求めました」
「ダンジョンで一番大変だったところはどこでした!?」
「氷のスルトという敵が強くて厄介でした。私のパーティーにとても強い騎士と魔法詠唱者がいるんですが、この二人がダンジョンの前で揉めたというのも大変な原因の一つでしたね」
「えっ!?なにがあったんですか?」
最初はつっかえつっかえで、言葉も少なかった語り口がどんどん饒舌になっていく。
楽しくなってきたのだ。自分とギルメンとの思い出を語れることが。
あんなに、失望したというのに。“可愛さ余って憎さ100倍”とはよく言ったものだ。
本当にギルメンが好きだったからこそ、裏切られたと思った時その分憎しみに向いてしまったのだろう。
(彼らを憎んでも彼らに会えることはないだろうに…それに彼らだってみんながみんな最初から来なかったわけではない。今のご時世は忙しい。暇がなかった可能性だって十分あっただろう…)
鈴木悟は自分のなかのギルメンへの怒りがなくなっていっていると感じる。
もし、ギルメンを憎み続けていたら…別の対象に憂さ晴らしをしていたかもしれない。ギルメンと会う確率は非常に低いであろうから。
あの最終日のことはトラウマとして長い間鈴木悟のなかに残り続けるだろう。それは間違いない。
しかし、憎しみなどの負の感情が早いうちに取り除けたことに鈴木悟は安堵した。
(そうだ、この世界を楽しむことだってできるんだ。ネガティブなことばかり考えていたが…この世界は知らないことがいっぱいだ。その分危険だが、色々冒険すればいいんだ!俺はアンデッドなんだから時間をたっぷりかけて警戒すればいろんなところに行けるはずだし)
まるで、思考のもやが取れたような清々しい感覚だった。
ちなみにカルカに話している内容は興が乗ってきてまだまだ佳境に入りそうにもない。
最初は困惑していた鈴木悟だったが今はこの時間が少しでも長く続いてほしいと思ったりしていた。
・・・
時は少し遡り、モモンが冒険者組合を訪れていたころ
(あれ?どういうことかしら?)
今までとは異なる違和感にカルカは疑問を覚える。
モモンから漂っていた通常では感じられない感覚。それが消えているのだ。
(さっきまで感じていた猛獣と対峙しているような感覚…言葉では説明しにくいあれが完全に感じられないわ)
やはり、自分の勘違いだったのだろうか?周りはカルカとは違い、モモンの存在に違和感を覚えていなかった。
(でも、本当に気のせいならこんなに急に消えるかしら…)
モモンに最後に対面したのは馬車に乗る前。その後の移動と現在の冒険者組合訪問など時間はある。この間になにかしらした結果、モモンから発せられていたオーラが弱まった。ということだろうか?
(もし、そうだとしたらアイテムか魔法よね…まさかあの見た目で魔法は使えないだろうし、アイテムという線が濃厚ね)
もし、アイテムであの強烈な気配を隠したのであれば現在の状況にも納得がいく。
しかし…
(だとしたら、アイテムで隠したものはなんなのでしょう?)
名探偵のように状況証拠から、現在の自分の感覚の変化について説明を導き出していく。
実際、冒険者組合に手練れがいることを警戒した鈴木悟が気配を隠す指輪を装備したというのが、カルカの推理の正解にあたるので、カルカの推理はかなりいい線をいっていた。
そして、推理を突き詰め一つの結論を導き出す。
(もしかして…!)
冒険者組合から出てきて、自分達の馬車に近づくモモンの姿を凝視する。
これなら…確かにそれなら説明がつく…!カルカは自分が出した答えが正解にたどり着いているであることを確信する。
(もしかして…モモンさんはとんでもない実力の持ち主!?普段はそれは隠さずに放出しているけれど、今は人が多いところに向かうからアイテムを使って隠している…。これなら説明がつく!)
厨二病かな?現代人が聞いたら即このレスが帰ってくるような結論である。
だが、カルカが生きる世界には魔法やモンスターがあたりまえの様に存在しているのだ。
この、“とんでもない力を普段は封印している”設定も案外馬鹿にできない。
まあ、モモンの冒険譚に多少触発されてしまったのだろう。そういう路線に妄想が及んでしまうことは思春期には珍しいことではない。
ただ、カルカの優秀な頭脳が推理した結果、若干現実味を帯びてしまっているのはたちが悪いが。
厨二病のテンプレともいえるこの結論に、カルカの疑念は一応の収束をみた。
モモンと関わるうえで最大の障壁になっていたことが取り除かれたのだ。自然とカルカはモモンともっと関わりたいという方向に考えがシフトする。
(さっきの英雄譚をもう少し聞かせてくれないかしら…刺激的で凄い楽しかった。それにモモンさんに直接、“隠された力”の説明も聞きたいし)
警戒心の緩んだカルカは、一通り用事が済んだらモモンに話を聞きに行くことを心の中のメモ帳に書き込んだ。
…
そして、現在に至る。
モモンの話す内容はどれも刺激的で世界が広いことを教えてくれる。
最初は純粋な興味だった。モモンという遠い国の住人の知識を聞きたいだけだった。
(でも、もしかしたら…彼は私の夢を叶えるためのキーパーソンになりえるかもしれない)
新鮮な知識を濁流のように話すモモンを見ながらカルカは、思う。
話が佳境に入り、そして終わる。これだけのエピソードもこの男にとっては小話のひとつに過ぎないのであろう。
「モモンさん」
静かだが凛と通る声で、名前を呼ぶ。
「はい?どうされました?」
いきなり、声のトーンが変わったからだろうか?モモンは訝しげにそれに答える。
カルカが大きく息を吸う。
「私には夢があります」
モモンは黙ってこちらを見据えている。ヘルムの下の顔を想像することはできない。
興味を持っているかもしれないし、持っているかもしれない。怪しんでいるかもしれないし、怪しんでいないかもしれない。
こういうときに顔が見えないのは緊張するな。と考えながらも話は進める。いまさら引っ込みはつかないのだ。
「“弱き民に幸せを、誰も泣かない国を”」
言葉を短く切り、間を空ける。話しかたひとつひとつにカルカの能力の高さが伺える絶妙な間であった。
「これが私の信念です。幼いからこその無謀な理想と思われるかも知れません。ですが、わたしはこの理想を捨てたくないんです!」
「そうか…理想をすてないか……それは、とても大事なことではないでしょうか?その理想を達成するために努力を惜しまない姿勢。尊敬に値します」
モモンは本当に感嘆したという調子で、そして少し悲しそうにカルカの夢へコメントする。
それを聞いたカルカは本題はここからだと、膝に置いている拳を握り締める
「モモンさんにはその夢を達成する手助けをしてほしいのです」
「えっ!?」
突撃の勧誘にモモンは慌てふためく。関係ない話だと思っていたのにいきなり当事者になった。そう言って空気を感じられる。例えるなら突然、授業で指名された生徒といったところだ。
「え、いやー私がカルカ様を手助けすることなんてできるとは思いませんが…」
「そんなことはありません!」
今までしっとりとした声で話していたカルカの口調の勢いが強くなる。
「失礼しました…そんなことはないですよモモンさん。あなたの豊富な知識は大きな力です。どうか私の助けになってくれないでしょうか?私の理想は夢物語のような雲を掴むような…そんな話。それを将来、達成するには多方面の知識は不可欠なのです。どうかお願いします!」
「…事情は分かりました。ですが、そもそもカルカ様は王ではないのですよね?でしたら、私がここにいても意味がない気がするのですが…」
「…それはそうですね。モモンさんの話を聞いている間に勝手に盛り上がっていたみたいです…ただ、モモンさんの能力は私の理想を叶えるために本当に必要だと思うんです。それでつい先走ってしまって…」
「いえいえ、謝ることはないですよ。ただ…そうですね…」
モモンは手を顎に持っていき思案する。考え込んでいる時点であまりいい返事は期待できないように感じる。彼は冒険がしたい。最初からそう宣言している。
国政を手伝うということは、国に仕えるという事。つまり、それはひとつの国に縛られるという事でもある。
もし、自分が王になればある程度融通は利かせられるかもしれないが、現時点で国に仕えてもらうのであれば、既存の軍に参加することになる。
確実に自由は縛られる。それを聡明な彼が分からないはずがない。
「うーむ。やはりこの申し出、今はお断りさせていただきます。」
やはりか。カルカは表面に出さないように努力するが露骨にがっかりする。
その、様子を見てかモモンが間を図って言葉を続ける。
「ただ、今後については少しその選択肢をも考慮に入れておきたいと思います。」
「えっ!?」
モモンの引っかかるような宣言にカルカは顔を上げる。
「やはり、私は冒険がしたい。この気持ちに変化はありません。ですが、カルカ様とお話して、思ったんです…カルカ様の目標を補佐するのも悪くないかなって。ですが、私は見ての通り頭脳労働者ではありませんので、本格的なことはできないでしょう。それでも相談役くらいなら問題ないと思います。」
「つまり、私の提案を飲んでくださるということですか?」
「はい。ただひとつ条件があります。」
モモンがひとさし指をピンと立てる。カルカはごくりと唾をのみ、そのモモンがいう条件を待つ。
「“今は”といったことで察せられると思いますが、条件はカルカ様が王になることです。
私はカルカ様が王になるまで冒険をしてきます。もし、カルカ様が王になられたのなら私は“騎士モモン”としてあなたに仕えることをお約束しましょう」
「まあ、まるで私が王になるのことが難しいと考えているみたいですね」
カルカが意地の悪いことを冗談ののように言う。
「これは失礼しました。」
「いえ、実際私が王になることは難しいでしょう。私は女ですから。ですが…私はこの国の王族です!民に安寧をもたらすことが王族の務め…それを果たすために私は王になりましょう!…私が王になったらよろしくお願いしますね“騎士モモン”」
「ははは、まだ“騎士モモン”ではありませんよ。しがない一般人です。…ですがそうですね。そうなることを楽しみにしていますよ」
その恰好で一般人は無理だろ。とつっこみたくなるが、鈴木悟という人格は一般人のそれに間違いない。
ふふふ、と機嫌良さそうに笑うカルカと鈴木悟。不意に何かを思い出したカルカが笑いを止める。
「そういえばモモンさんって封印されし力とか持ってます?」
「ぼふぅ!!」
突然の質問にせき込むモモンをみてカルカは察する。やはり、自分の考えに間違いはないようだ
「え~と?」
「いえ、何でもありません。大丈夫です。突然、おかしな質問をしてしまって申し訳なかったです。今日は、実に有意義な時間を過ごすことができました。これからもよろしくお願いします」
「あっはい」
カルカはぺこりと頭を下げ部屋を後にする。
カルカがいなくなり再び部屋に一人になった鈴木悟。カルカの突然の質問に呆然としていた。
「もしかして…俺がプレイヤーだってばれてる??」
¥おまけ¥
① カルカとの対談中の鈴木悟の心情
(でも、もしかしたら…彼は私の夢を叶えるためのキーパーソンになりえるかもしれない)
「モモンさん」
「はい?どうされました?」
(なんか、真剣な顔になったぞ。嫌な予感がする)
「私には夢があります」
(ん?この感じ。なんか経験あるぞ…なんだっけな…そうだ!課長が無理な仕事を押し付けてくるときのテンションだ!いやまさか、異世界まできて変な仕事を押し付けられるなんてことはないだろ!…ないよね?)
「“弱き民に幸せを、誰も泣かない国を”」
(おぉー。いいこと言うなこの子。しかし、恐ろしいくらい落ち着いた子だな。王族ってみんなこんな感じのかな?でもまあ、実際国の運営って大変そうだしこれくらい賢い子が王様になったほうがいいよな)
「これが私の信念です。幼いからこその無謀な理想と思われるかも知れません。ですが、わたしはこの理想を捨てたくないんです!」
(まあ、“誰も泣かない国ってのは言葉のあやで幸せな国を作りたいってことでしょ?そんなに無謀なのかな…?確かに難しそうだが)
「そうか…理想をすてないか……それは、とても大事なことではないでしょうか?その理想を達成するために努力を惜しまない姿勢。尊敬に値します」
(俺も理想を捨てないで頑張っていれば、最終日をみんなとすごせてたのかなぁ。しかし、是非とも彼女には夢を叶えるべく頑張ってほしいな)
「モモンさんにはその夢を達成する手助けをしてほしいのです」
「えっ!?」
(ふぁ!???)
「え、いやー私がカルカ様を手助けすることなんてできるとは思いませんが…」
(おいおいおい!絶対無理だよ国の運営に関わるって!)
「そんなことはありません!」
「失礼しました…そんなことはないですよモモンさん。あなたの豊富な知識は大きな力です。どうか私の助けになってくれないでしょうか?私の理想は夢物語のような雲を掴むような…そんな話。それを将来、達成するには多方面の知識は不可欠なのです。どうかお願いします!」
(豊富な知識って…ギルド運営とかならまだ知識をあげられそうだけど…現実の国ってなにしてるんだっけ?みんしゅしゅぎとか、なんとかなら知ってるけど…正直、無理無理かたつむり!なんとか体よく断らねば…そうだ!)
「…事情は分かりました。ですが、そもそもカルカ様は王ではないのですよね?でしたら、私がここにいても意味がない気がするのですが…」
(確か、まだ王様じゃなかったはず!小さい娘を傷つけるのは良心が痛むからこのくらいで引いてくれればいいが…)
「…それはそうですね。モモンさんの話を聞いている間に勝手に盛り上がっていたみたいです…ただ、モモンさんの能力は私の理想を叶えるために本当に必要だと思うんです。それでつい先走ってしまって…」
(そうだぞ!少し落ち着きなはれ!しかし、こんなに褒められるのは悪い気はしないな)
「いえいえ、謝ることはないですよ。ただ…そうですね…」
「うーむ。やはりこの申し出、今はお断りさせていただきます。」
(そんながっかりしないでくれよ…こんなおっさんよりもっとやくに立つ人間なんでいっぱいいるって。俺もう人間じゃないけど。なんか…いい感じの折衷案があればいいんだが)
「ただ、今後については少しその選択肢をも考慮に入れておきたいと思います。」
(まあ、取り敢えず時間を稼ごう)
「えっ!?」
モモンの引っかかるような宣言にカルカは顔を上げる。
「やはり、私は冒険がしたい。この気持ちに変化はありません。ですが、カルカ様とお話して、思ったんです…カルカ様の目標を補佐するのも悪くないかなって。ですが、私は見ての通り頭脳労働者ではありませんので、本格的なことはできないでしょう。それでも相談役くらいなら問題ないと思います。」
(正直、そんなに責任が重くなければこの国で生活するのも悪くないかなって思っている
自分もいるわ…俺には無限に近い時間があるからいろんなことができる!それを気づかせてくれたのはこの娘だしな。でも、政治的アドバイスはむりだぞ!いやまじで!)
「つまり、私の提案を飲んでくださるということですか?」
「はい。ただひとつ条件があります。」
モモンがひとさし指をピンと立てる。カルカはごくりと唾をのみ、そのモモンがいう条件を待つ。
「“今は”といったことで察せられると思いますが、条件はカルカ様が王になることです。
私はカルカ様が王になるまで冒険をしてきます。もし、カルカ様が王になられたのなら私は“騎士モモン”としてあなたに仕えることをお約束しましょう」
(女性が王様になるのは難しいって聞いたことがある…それにまだまだこの子は小さいから王様になるとしても結構先だろきっと。この条件、結構いいんじゃね?俺も冒険できるしこの娘も王様になるために努力するだろうし。てか、大きくなったら別に俺はいらなくね?って気づくかもだし)
「まあ、まるで私が王になるのことが難しいと考えているみたいですね」
(うお!!気づいてるやん!心読めるの?心読めるの?)
カルカが意地の悪いことを冗談ののように言う。
「これは失礼しました。」
「いえ、実際私が王になることは難しいでしょう。私は女ですから。ですが…私はこの国の王族です!民に安寧をもたらすことが王族の務め…それを果たすために私は王になりましょう!…私が王になったらよろしくお願いしますね“騎士モモン”」
(あー!!俺が格好つけてした宣言を流用しないで!正直、結構恥ずかしい!)
「ははは、まだ“騎士モモン”ではありませんよ。しがない一般人です。…ですがそうですね。そうなることを楽しみにしていますよ」
(ここは大人の余裕で効いてませんよアピールしとこ)
「そういえばモモンさんって封印されし力とか持ってます?」
「ぼふぅ!!」
(中二病か!!…いやまてよ、この質問ってもしかして…)
「え~と?」
「いえ、何でもありません。大丈夫です。突然、おかしな質問をしてしまって申し訳なかったです。今日は、実に有意義な時間を過ごすことができました。これからもよろしくお願いします」
「あっはい」
(えっ?えっ?まって?まって?ん?)
「もしかして…俺がプレイヤーだってばれてる??」
ラキュース「私と同じ意思を感じるわ!」