2016年に成立した改正通信傍受法が6月1日に施行されるのを前に、警察庁は25日、実施に関する通信傍受規則を改正した。専用機器を用いて各警察本部で電話の傍受ができるようになる。NTTなどの通信事業者の立ち会いは不要。特殊詐欺など組織犯罪捜査への活用が飛躍的に伸びるとみられる。適正捜査を担保するため「傍受指導官」を新設した。
通信傍受法は立法時、乱用やプライバシー侵害への懸念から反対があった。今後は傍受件数の大幅な増加が見込まれるが、担当者は「通信データは暗号化され、傍受指導官も客観的立場でチェックする」としている。
現行の通信傍受は数少ない事業者の施設で実施しているため、各警察本部が順番待ちの状態で、迅速性に課題があった。
警察庁によると、専用機器はパソコン型の「特定電子計算機」。通信事業者と専用回線で結ばれた警察本部の室内で使用。傍受内容は暗号化されたデータで送信され、同計算機で暗号化される前の状態に復元する。これまではリアルタイムの傍受に限られていたが、録音も可能となる。
同計算機は警察本部ではなく、警察庁の地方機関である管区警察局や各県の情報通信部で保管。捜査員は傍受のたび、裁判官の令状に基づいて機器を借りることになる。今年6月1日時点で全国に141台あり、年度内にさらに47台増やす予定。
傍受指導官は適正な事件捜査を指導する刑事総務課などに所属する警部以上の中から指名。事件ごとに指導官1人を配置して傍受現場に立ち会わせ、客観性や適正さをチェックする。
法務省によると、18年に警察は12事件の捜査で携帯電話の通話を傍受し、計82人を逮捕した。00年の通信傍受法施行以降の適用は計145事件、逮捕者は計857人。
また、改正刑事訴訟法により6月1日から裁判員裁判対象事件などの取り調べ全過程の録音・録画(可視化)が義務付けられることから、捜査方針の立案などを担当する「捜査主任官」が、録音などを再生して取り調べ状況を把握する新たな規定を犯罪捜査規範に盛り込んだ。〔共同〕
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