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2019-07-31

糸井重里が毎日書くエッセイのようなもの今日のダーリン

・格闘技ドクターの二重作拓也さんと対談をしました。
 ご自身が幼い頃からの空手家で、
 その少年が長じて医者になったという人です。
 同時にミュージシャンの「プリンス」の研究家でもあり、
 『プリンスの言葉』などの著作もあります。
 詳しいことは、いずれ「ほぼ日」でご紹介する予定です。

 そのなかで、どういう流れだったか、
 カープとジャイアンツの関係が話題になったのです。
 そこで、野球にあまり詳しくないドクターは、
 ご自身の格闘技の経験に照らし合わせてか、
 こんなことを言いました。
 「広島のほうは、巨人のことを
 強いと思っているのではないでしょうか。
 そして、それをほんの少しだけ上回ろうと
 戦っているのではないでしょうか」
 それは、ちょっと耳慣れない発言だったのでした。
 ぼくは、いままでの勝負事の世界で言われているように
 「相手を呑んでかかる」だとか「自信を持って」とか、
 そういう心理になっているほうが強いと思っていました。
 二重作さんの考えは、まったくそうではなく、
 「ほんの少しだけ上回る」がカギだというのです。
 つまり、簡単に倒せない相手であると理解して、
 ある程度の「負け部分」は覚悟しているとも言えます。
 その上で、ほんの1点でも上回れば勝ちなのですから、
 じっと堪えて油断なく攻撃し守備をして、
 ちょっとだけ上回るように試合展開を持っていっている。
 そういうふうに、ぼくは理解しました。
 たしかに、カープは、勝つにしても負けるにしても、
 その通りの試合をしてきていると思ったのです。
 「ちょっとだけ上回るべし」という戦い方のほうが、
 やりやすいということを、格闘技で考えたのだそうです。
 ついつい、ぼくのようなただのファンは、
 圧倒的な力の差でねじ伏せるような勝ち方を望みます。
 そのほうが感情的には快感が高いと思うのでしょう。
 そして、大差をつけるような展開で勝つほうが、
 「ひっくり返らせない」という安心感が得られます。
 でも、それは「過剰に安心を求める」不安の表れだった
 とも言えるなぁと思ったのです。
 このことについては、さらに考え続けるつもりです。

今日も、「ほぼ日」に来てくれてありがとうございます。
不安や怖れって、そこから逃げるためのコストが高いなぁ。


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