どう見る れいわ農政 食料自給率100% 1次産業所得補償 夢の政策ずらり “台風の目”なるか
2019年07月29日
第25回参議院選挙で、支持者を激励する「れいわ新選組」の山本代表(東京都千代田区で)
先の参院選で2議席を獲得した山本太郎代表率いる「れいわ新選組」は、どんな農政の旗を掲げているのか。参院選で示した政策を見ると、食料安全保障を「最重要事項」とし、食料自給率目標は「100%」に据える。その実現に向け、農業だけでなく全ての第1次産業就業者への戸別所得補償を主張する。夢のような政策も並ぶが、政権批判の舌鋒はどの政党よりも鋭い。国会での農政論戦でも“台風の目”となるか注目だ。
れいわは、安倍政権下で成立した法律や国会承認された条約を「トンデモ法」と批判し、その「一括見直し・廃止」を主張する。その対象として環太平洋連携協定(TPP)の他、都道府県に稲や麦などの種子供給を義務付けていた種子法の廃止法や漁業法、国家戦略特区法など農業関連の法案も多く挙げる。
さらに、「コンクリートも人も」をキャッチフレーズに、公共事業への積極的な財政支出を訴える。かつて「コンクリートから人へ」を掲げて、土地改良事業を含む公共事業の大胆な削減を進めた民主党政権と一線を画している。公共事業は「雇用や防災を考えれば必要不可欠だ。公共性の高いものは国が主導し、積極的に支出する」としている。
世界レベルの動物福祉(アニマルウェルフェア)を政策の柱にしているのも特徴だ。畜産業でも「動物福祉が守られるよう国際的な基準を踏まえた飼育や処分方法に関する基準を定める」との方針を示す。
野党幹部の一人は「比例区の安倍政権批判票が相当、れいわに流れた。国会でも存在感を発揮していくかもしれない」とみる。新たな勢力として農政論戦に一石を投じるか。
れいわは、安倍政権下で成立した法律や国会承認された条約を「トンデモ法」と批判し、その「一括見直し・廃止」を主張する。その対象として環太平洋連携協定(TPP)の他、都道府県に稲や麦などの種子供給を義務付けていた種子法の廃止法や漁業法、国家戦略特区法など農業関連の法案も多く挙げる。
さらに、「コンクリートも人も」をキャッチフレーズに、公共事業への積極的な財政支出を訴える。かつて「コンクリートから人へ」を掲げて、土地改良事業を含む公共事業の大胆な削減を進めた民主党政権と一線を画している。公共事業は「雇用や防災を考えれば必要不可欠だ。公共性の高いものは国が主導し、積極的に支出する」としている。
世界レベルの動物福祉(アニマルウェルフェア)を政策の柱にしているのも特徴だ。畜産業でも「動物福祉が守られるよう国際的な基準を踏まえた飼育や処分方法に関する基準を定める」との方針を示す。
野党幹部の一人は「比例区の安倍政権批判票が相当、れいわに流れた。国会でも存在感を発揮していくかもしれない」とみる。新たな勢力として農政論戦に一石を投じるか。
おすすめ記事
越境性病害虫 初動の防除で定着防げ 世界で甚大な農業被害を与えたツマジロクサヨトウが、国内でも次々と発生が確認されている。アジア大陸から風に乗って飛来したとみられる。被害が広がりやすく、事前の対策が難しい害虫で、急激な拡大や定着が懸念される。正確な知識と早期対策で防除を徹底し、定着を防ぐことが必要だ。 ツマジロクサヨトウは、成虫の大きさが37ミリで、終齢幼虫が40ミリになるチョウ目の害虫だ。稲やトウモロコシ、サトウキビ、サツマイモ、カブなど幅広い作物を食害し、国連食糧農業機関(FAO)も発生状況を監視している。一日に100キロの距離を移動し、被害が広がりやすい。南北アメリカが原産だが、アフリカに飛来して大被害を与えた。今年1月には中国、6月には韓国や台湾で発生を確認。日本への侵入が懸念されていた。 国内では鹿児島県で3日、飼料用トウモロコシで初発生が確認された。その後、発生確認は宮崎県や熊本県など6県に広がり、全国で調査が進められている。登録農薬がないため本来ならば薬剤防除ができないが、今回は都道府県の判断で例外的に農薬が使用できる。現場での初動を徹底して被害を小さく押さえ込み、害虫を定着させないようにとの判断だ。ツマジロクサヨトウを含むヨトウ類は、国内の重要害虫だ。定着すれば、これまで以上に防除に気を遣わなければならなくなる。農薬が使えない飼料用トウモロコシは増産の機運がしぼむ恐れがある。 確実な防除には、生産者らの正しい知識が欠かせない。農水省は「分かっていないことが多い。アフリカや東南アジアなどで大きな被害が出たとの報道があるが、正確な状況は不明だ。確実な情報を提供していきたい」と説明する。詳しい生態や生涯産卵数、効果がある薬剤、その他のヨトウ類との見分け方などのいち早い調査結果の公表が求められる。現場での初動対策がうまくいくよう、生産者に対する指導や情報提供の在り方も確認すべきだ。 ツマジロクサヨトウの他にも国内への侵入が強く警戒されている病害虫には、ウリミバエやコトリンガ、アリモドキゾウムシ、火傷病などがある。サバクトビバッタやコムギさび病、コムギいもち病、ウンカ類などは世界的な脅威とされている。 20カ国・地域(G20)農業大臣会合やG20首席農業研究者会議では、越境性病害虫をテーマの一つとして取り上げ、今秋にも国際的なセミナーやワークショップを開くことを決めた。研究機関のネットワークを構築し、研究者同士の自発的な交流も推奨していく。来年の「国際植物防疫年」に向けては、国際連携を強めていくことを確認した。 農産物貿易の増加と気候変動の影響で、越境性病害虫の脅威が高まっている。越境性病害虫から世界の農業を守るため、水際対策の徹底と国際連携の強化を進めることが求められる。 2019年07月25日
[活写] 切っても 切れぬ伝統 切り分けた形は水田、添えた金糸卵は水面に映る月──。佐賀県でも有数の米産地、白石町に伝わる水田がモチーフの伝統食「須古寿(ず)し」が道の駅などで人気だ。 「須古寿し」は押しずしの一種。「もろぶた」と呼ばれる幅約30センチ、長さ約60センチの浅い木箱に酢飯を敷き詰めて正方形に切り分け、それぞれを甘辛く煮たムツゴロウやゴボウ、シイタケなど地元産食材で彩る。 500年以上前に同町須古地区の農家が、米の品質向上に熱心な領主に献上したのが始まりといわれる。今も祭りや祝い事には欠かせず、特に8月盆に食べる家庭が多い。 町内のAコープ店舗や、6月に開業した「道の駅しろいし」でも須古寿し弁当は人気だ。弁当を作る同地区の農産加工グループ「みどり会」の代表、猪ノ口操さん(70)は「みんなで作るのが楽しい。若い世代にも作り方を伝えたい」と話す。(釜江紗英) 2019年07月29日
因島のはっさくゼリー 広島・JA尾道市 ハッサク発祥の地、広島県尾道市因島産のハッサクの果肉がたっぷり入ったゼリー。爽やかな酸味とほのかな甘味、果肉のさくさくした歯応えが味わえる。 1991年の発売から、右肩上がりで販売を伸ばし、2018年は371万個を売り上げた。カップのふたに描かれた個性的なイラスト「はっさくBOY」も人気だ。 1個(78グラム)145円。5個入り950円、12個入り1900円、24個入り3450円のセットもそろえる。JA尾道市の各店舗の他、県内の土産物店や百貨店などで販売する。問い合わせはJA因島営農センター、(電)0845(22)2252。 2019年07月26日
認知症高齢者 地域が支え 有償ボランティア活躍 北海道・中空知地域 病院・買い物同行 家族の負担軽減 認知症の高齢者が増え続ける中で家族、医療・介護施設、行政に加えて、地域住民も含めた支援が求められている。対策をまとめた政府の新大綱では、周囲が協力して認知症の人が自分らしく暮らせる社会をつくる「共生」を掲げる。北海道中央部の中空知地域では、住民のボランティアが有償で患者の通院に付き添う活動を続け、家族の負担軽減にもつなげている。(久慈陽太郎) ボランティア団体「ぽっけ」会長の岡和子さん(71)は、滝川市内の病院を受診する認知症の90代女性に付き添う。 女性は1人暮らし。家族は札幌市など遠方で暮らすため、平日に病院へ同行するのは困難だ。岡さんは家族に代わり、病院で受け付けや会計、予約などの手続きを行う。 診察を待つ間、岡さんは女性に「今朝は何時に家を出たの」「山菜はどのようにして食べているの」などと優しく話し掛ける。女性は笑顔で、リラックスした様子で答える。 岡さんは診察室にも同行する。検査結果や医師の説明を記録し、家族に正確に伝える。次回の診察予約票が渡される際、岡さんは「しっかりしまってね」と女性のポーチに入れる。それとは別に、岡さんがもう一枚を気付かれないように受け取る。女性が予約票を紛失した場合に備えるためだ。 女性は「(岡さんといると)楽しいし、安心だ」と信頼を寄せる。 ぽっけは2010年、住民も認知症の高齢者を支える担い手になろうと発足した。現在の会員は46人。退職して日中に時間がある60、70代の人らが中心だ。会員は認知症高齢者との関わり方や症状などを学ぶセミナーを受講する。 認知症高齢者は、主にケアマネジャーからボランティアの紹介を受ける。利用者は80代以上が多く、農家を含めて1カ月に延べ80~90人。1時間当たり600円の利用料を支払う。 利用では、特に病院への付き添いが多い。介護保険では病院内での介助は原則適用外のためだ。岡さんは「ぽっけの活動は、家族や介護保険が対応できない部分を補う“隙間の支援”」と強調する。 他にも、買い物や孫の運動会の応援に同行したり、家族が家を空ける間、認知症高齢者と一緒に留守番をして見守ったりと、日常生活のさまざまな場面でニーズがある。 家族からは「遠方からはなかなか行けないから助かる」「診察の内容をボランティアから正確に聞くことができて安心だ」と感謝の声が届く。 認知症高齢者からの需要が高まる中、課題はボランティア会員の確保。岡さんは「認知症高齢者の日々の暮らしを守るためにも、活動の周知を進めて会員を増やしたい」と展望する。 “隙間”のケア住民が担う ■砂川市立病院認知症疾患医療センター・内海久美子センター長の話 この地域では、介護、福祉、保健の各分野の関係機関が連携する「中空知・地域で認知症を支える会」が活動している。 その中で、ぽっけは特に重要な役割を果たしている。病院や行政では手が行き届かない“隙間”の部分を、ボランティアがきめ細かくケアしているからだ。 全国では認知症サポーターの養成が進んでいる。「サポーターとして活動したい」と希望する人も多い。その人たちがボランティアとして活躍できる場の環境の整備を進めるべきだ。 2019年07月27日
品目 溝埋まらず 閣僚級後再協議へ 日米事務級協議 日米両政府は米ワシントンで26日(日本時間27日)、貿易協定交渉の事務レベル協議を終えた。農産品について事務次官級の少人数会合を開き、牛肉などの重要品目も議論。8月に開く閣僚級協議に向けた課題の絞り込みを進めたが、市場開放を巡る認識の隔たりは依然大きいとみられる。交渉の進展に向け、閣僚級協議後に再び事務レベル協議を開く方向で一致した。 8月の閣僚級協議では、茂木敏充経済再生担当相とライトハイザーUSTR代表が農産品の重要品目や自動車・同部品の扱いなどを話し合う。閣僚級協議の論点を整理するため同日は、米国が市場開放にこだわる重要品目を巡り次官級で議論するなど、約4時間協議した。 内閣官房の渋谷和久政策調整統括官は協議後、記者団に「論点が明確に整理された」と、協議が一定に進展したとの認識を示した。次官級協議では「率直な議論をさせてもらった」と述べた。 ただ、両国の立場にはなお開きがある。今回の事務レベル協議は24日に始まり、農産品や工業製品の議論を進めた。日本は、米国が工業製品の市場開放に応じなければ、農産品の市場開放を受け入れない姿勢。だが、米国は農産品で環太平洋連携協定(TPP)水準を念頭に市場開放を急ぐ一方、工業製品は強く保護する構えを崩していない。 交渉の進展に向けて、両国は8月の閣僚級協議後に再び事務レベル協議を開く予定だが、米国が歩み寄るかは不透明だ。日本が協議で得られるメリットも、はっきりしない。 両政府は参院選後、早期に成果を出すことで一致しており、9月下旬に見込まれる日米首脳会談が合意を巡る一つのヤマ場とみられている。 2019年07月28日
農政の新着記事
農業経営体 120万割れ 大規模でも農地減少 全国の農業経営体数が120万を割り込み、過去10年で最少規模となったことが、農水省の調べで分かった。全体の9割以上を占める家族経営体が前年比2・7%減の115万2800に落ち込んだ。労働力不足、高齢化が深刻で生産基盤が揺らぐ実態が浮かび上がった。小規模の家族経営体の農地の受け皿だった大規模経営体の耕地面積も減少に転じ、多様な担い手をどう育成するかが問われている。 農業経営体数の合計数は前年比2・6%減の118万8800。10年前の167万9100と比べると、減り幅は49万を超え、約3割の減少となっている。 組織経営体のうち、農産物を生産する法人数は2万3400。前年から3%程度増えた。 半面、小規模の家族経営体は減少に歯止めがかかっていない。国内の経営耕地面積353万1600ヘクタールのうち、1ヘクタール未満の経営体が占める割合は9・3%。5年前の14年は12・8%と1割を超えていたが、減少が続く。 国内の経営耕地面積の半分以上となる53・3%は、10ヘクタール以上の経営体がカバーする。 ただ、大規模経営が手掛けている耕地面積は今回、減少に転じた。10ヘクタール以上の経営体の耕地面積は、前年から8700ヘクタール減り、188万ヘクタールとなった。同省は「担い手への集積はある程度進んだが、新たな集積は停滞している」(経営・構造統計課)とみる。 小規模農家の離農が加速し、大規模経営が農地を受け切れず、国内の経営耕地面積そのものも、約6万ヘクタール減の353万ヘクタールに縮小した。 労働力の不足と高齢化も、歯止めがかかっていない。販売農家の基幹的農業従事者は140万4100人で、前年から3・2%減った。 基幹的農業従事者の年齢構成を見ると、70歳以上が59万100人と全体の42%を占める。49歳以下は14万7800人にとどまり、前年と比べると2・9%減っている。 雇用労働も、常雇い数は前年比1・7%減の23万6100人。20代から70歳以上まで、年齢構成に大きな偏りはなく、それぞれ10、20%台だが人数全体では増えていない。 2019年07月29日
どう見る れいわ農政 食料自給率100% 1次産業所得補償 夢の政策ずらり “台風の目”なるか 先の参院選で2議席を獲得した山本太郎代表率いる「れいわ新選組」は、どんな農政の旗を掲げているのか。参院選で示した政策を見ると、食料安全保障を「最重要事項」とし、食料自給率目標は「100%」に据える。その実現に向け、農業だけでなく全ての第1次産業就業者への戸別所得補償を主張する。夢のような政策も並ぶが、政権批判の舌鋒はどの政党よりも鋭い。国会での農政論戦でも“台風の目”となるか注目だ。 れいわは、安倍政権下で成立した法律や国会承認された条約を「トンデモ法」と批判し、その「一括見直し・廃止」を主張する。その対象として環太平洋連携協定(TPP)の他、都道府県に稲や麦などの種子供給を義務付けていた種子法の廃止法や漁業法、国家戦略特区法など農業関連の法案も多く挙げる。 さらに、「コンクリートも人も」をキャッチフレーズに、公共事業への積極的な財政支出を訴える。かつて「コンクリートから人へ」を掲げて、土地改良事業を含む公共事業の大胆な削減を進めた民主党政権と一線を画している。公共事業は「雇用や防災を考えれば必要不可欠だ。公共性の高いものは国が主導し、積極的に支出する」としている。 世界レベルの動物福祉(アニマルウェルフェア)を政策の柱にしているのも特徴だ。畜産業でも「動物福祉が守られるよう国際的な基準を踏まえた飼育や処分方法に関する基準を定める」との方針を示す。 野党幹部の一人は「比例区の安倍政権批判票が相当、れいわに流れた。国会でも存在感を発揮していくかもしれない」とみる。新たな勢力として農政論戦に一石を投じるか。 2019年07月29日
品目 溝埋まらず 閣僚級後再協議へ 日米事務級協議 日米両政府は米ワシントンで26日(日本時間27日)、貿易協定交渉の事務レベル協議を終えた。農産品について事務次官級の少人数会合を開き、牛肉などの重要品目も議論。8月に開く閣僚級協議に向けた課題の絞り込みを進めたが、市場開放を巡る認識の隔たりは依然大きいとみられる。交渉の進展に向け、閣僚級協議後に再び事務レベル協議を開く方向で一致した。 8月の閣僚級協議では、茂木敏充経済再生担当相とライトハイザーUSTR代表が農産品の重要品目や自動車・同部品の扱いなどを話し合う。閣僚級協議の論点を整理するため同日は、米国が市場開放にこだわる重要品目を巡り次官級で議論するなど、約4時間協議した。 内閣官房の渋谷和久政策調整統括官は協議後、記者団に「論点が明確に整理された」と、協議が一定に進展したとの認識を示した。次官級協議では「率直な議論をさせてもらった」と述べた。 ただ、両国の立場にはなお開きがある。今回の事務レベル協議は24日に始まり、農産品や工業製品の議論を進めた。日本は、米国が工業製品の市場開放に応じなければ、農産品の市場開放を受け入れない姿勢。だが、米国は農産品で環太平洋連携協定(TPP)水準を念頭に市場開放を急ぐ一方、工業製品は強く保護する構えを崩していない。 交渉の進展に向けて、両国は8月の閣僚級協議後に再び事務レベル協議を開く予定だが、米国が歩み寄るかは不透明だ。日本が協議で得られるメリットも、はっきりしない。 両政府は参院選後、早期に成果を出すことで一致しており、9月下旬に見込まれる日米首脳会談が合意を巡る一つのヤマ場とみられている。 2019年07月28日
中山間支払制度 人材確保課題に 農水省が最終評価素案 農水省は25日、条件不利地への支援策となる「中山間地域等直接支払制度」の第4期対策(2015~19年度)の最終評価の素案を示した。20年度から始まる第5期対策に向け、同制度が生み出す効果を継続するため、後継者や外部人材の確保などを課題に挙げた他、担い手への農地集積やスマート農業導入による生産性向上を掲げた。農家らが安心して営農活動を続けられるよう、交付金返還措置の一層の見直しなどの検討も提起した。 2019年07月26日
[安倍農政の行方 参院選 与党勝利](下) 農協改革 「准組」危機感に差 議論の不透明さ増す 「ショックだ。もっと取れると思っていた」 参院選比例代表でJAグループの組織内候補、自民党の山田俊男氏が3選を決めた翌日の22日。得票数を見て、あるJA全国連関係者は目を疑った。21万7619票。2013年の前回から12万票減らし、党内順位は2位から7位に落ちた。 参院選比例代表は、業界団体が候補を擁立して政治力を競う組織戦の性格を持つ。JAグループは、山田氏の選挙結果がJA准組合員の事業利用規制の在り方を含めた今後の農協改革の行方にも影響するとみて、「存亡を懸けた選挙」(JA全中の中家徹会長)として臨んだ。しかし──。 得票数減にはJA職員や農家数の減少、投票率の低下などの要素が背景にあるとみられる。長野県の水稲農家は、これまでの農協改革の経緯を踏まえると「准組合員規制にブレーキをかけたいという思いの人が、必ずしも自民党の候補に入れなかったのではないか」として、農政不信の影響を指摘する。だが、「危機感が浸透しなかったのが最大の原因だ」。 そう指摘するのは、全国最多の2万4525票を出した愛知県のJA関係者だ。同県では、准組合員の利用規制がJA経営や地域農業の振興に与える悪影響や、今回の選挙の意義についてJA役職員や組合員に周知を徹底。全国で唯一、得票数が過去2回を上回った。 「准組規制は絶対認められないと訴えたが、伝えきれなかった」。山田氏本人も、こう認める。政府の農協改革集中推進期間が5月末で終わり、自民党は、准組合員の事業利用規制の在り方について「組合員の判断に基づくものとする」と公約。「組織の気が緩んだ」(関東のJA役員)。 秋には規制改革推進会議の後継組織が立ち上がる見通し。JAグループは、参院選で結果を出し与党と議論の主導権を握るという戦略の見直しを迫られる可能性もある。 JAが自己改革を継続し、組合員の評価を得る必要性は変わらない。農協法は、政府が農協改革の実施状況を21年3月末まで調査し、准組合員規制の在り方を検討すると規定。自民党公約は「組合員の判断」が何を根拠にするのかは示していないが、JAの「自己改革を後押しする」と明記した。 農水省関係者は、自己改革の延長線で、信用事業や経済事業の収支改善に取り組むことを求める。規制会議も6月の答申で、信用事業の健全な持続性に「課題が残されている」と指摘。後継組織も関心を示す可能性が高い。 「他の組織内候補も票を減らしている」。自民党農林幹部はこう語り、選挙結果を静観する。だが、農協改革に強い影響力を及ぼしてきた首相官邸の見解と重なるとは限らない。改革の行方は不透明さを増した。 2019年07月25日
[安倍農政の行方 参院選 与党勝利](中) 日米交渉加速 ヤマ場へ攻防激化 大統領の圧力強まる 「7月の選挙後、大きな数字が出てくる」。トランプ米大統領がツイッターでそう表明してから2カ月。参院選後の農政課題で注目されるのが、日米貿易協定交渉だ。トランプ氏は「8月に素晴らしいことが発表できる」とも明言。圧力を強めてくるのは必至だ。 安倍晋三首相は参院選投開票日の21日、テレビのインタビューで「これまでの経済連携協定が最大限だと決めている。これ以上にはならない」と断言。トランプ氏の発言をきっかけに、選挙期間中も「密約があるに決まっている」(国民民主党の玉木雄一郎代表)と追及してきた野党に対し、改めて反論した格好だ。 野党側は「『選挙後』という言葉に反応している有権者は多かった」(党幹部)と指摘する。ただ、消費税増税や憲法改正などが選挙の大きな争点となり、日米交渉の論戦は深まらず、問題点の洗い出しは進まなかった。 交渉は今後ヤマ場に入る見通しだ。米国ニューヨークで国連総会が開かれる9月には、日米首脳会談がセットされる可能性が高い。日本政府内では「常に合意を求めるトランプ大統領に対し、成果なしで済むとは思えない」(交渉関係者)との認識が広がり、何らかの合意も視野に入れる。 米国では来年の大統領選に向けて、今秋から選挙戦が本格化する。再選を目指すトランプ氏にとって、農業地帯は重要な支持基盤。それだけに日米交渉を通じ、環太平洋連携協定(TPP)の発効などで不利益を受ける米国の農家に、目に見える形でPRできる成果を切望している。 「日本に交渉を急ぐ理由はない」(与党農林幹部)が、トランプ氏が不満を募らせれば、米国側は強硬措置を繰り出してくる恐れもある。 日米両政府は24~26日、事務レベル協議を開く。対立が少ない分野が中心だが、事務次官級が臨む高級事務レベルで、牛肉などの重要品目を議論する段取りも描く。「TPP水準」を巡り焦点となる輸入枠などの扱いも課題になる。 一方、生産現場では「交渉がどうなるか懸念している」(北海道の50代肉牛農家)など、多くの農家が気をもむ。 吉川貴盛農相は23日の閣議後会見で、参院選の受け止めについて「農林水産を含め、たくさんの課題がある。国民の皆さんの声に、さらに真摯(しんし)に耳を傾けながら取り組まなければならない」と述べた。改選議席数1で農村部も多い「1人区」で当選を決めた与党議員も、農家の不安を意識し「TPP以上の妥協はしないことを、しっかり政府に守らせる」と話す。 生産現場の不安が高まる中、交渉は短期決戦の色合いが濃くなってきた。圧力を強める米国にどう向き合うか。日本政府の交渉戦略が改めて問われている。 2019年07月24日
[安倍農政の行方 参院選 与党勝利](上) 接戦の「1人区」 幹部日参も票伸びず 農村部の不満根強く 22勝10敗──。 改選議席数1の全国32の「1人区」で与党は苦戦を強いられた。一方、選挙結果全体を見渡せば、与党が改選過半数を上回る71議席を獲得。安倍晋三首相(自民党総裁)の政権基盤は安定した。 22日の記者会見で、安倍首相は「国民から力強い信任を得た。参院選で3回連続、これだけの議席を得ることができたのは大平、中曽根総裁以来だ」と強調した。 とはいえ、地方には安倍政権への不満がくすぶる。1人区で自民党が負けたのは岩手、宮城、秋田、山形、新潟、長野、滋賀、愛媛、大分、沖縄の10県。いずれも農村地帯を抱える地方だ。 自民党は、2016年参院選で21勝11敗と完勝できなかった。その反省から、1人区に照準を合わせて選挙戦に臨んだ。二階俊博幹事長を中心に農業団体との関係修復に注力。16年は環太平洋連携協定(TPP)交渉や農協改革への反発から、1人区で自主投票が目立った農政連も今回は与党候補をこぞって推薦した。 選挙期間中は、安倍首相を筆頭に、党幹部らが連日のように1人区の応援に入り、若手農家らと懇談も重ねた。それでも支持は伸び悩んだ。 ある自民党関係者は「あれだけてこ入れしたからこそ、農業票の離反は防げた。もっとひどい結果も十分あり得た」と分析。「農政以外の要因もある。地方の不満は根強い。そう簡単にはいかない」とみる。 二階幹事長は、1人区の結果に「積極的に国民に寄り添って党員の声を聴く。その姿勢を一段と強めていくことが大事だ」と地方にくすぶる不満を重く受け止める。 今後の焦点は、安倍首相が9月前半にも踏み切る内閣改造・党役員人事だ。任期が残り2年余りとなる中、政権の求心力を維持する上で重要になるのが、政権の屋台骨を支えてきた菅義偉官房長官と二階幹事長の処遇だ。 農政にも大きな影響力を持つ両氏。20日の選挙戦最終日、菅氏は秋田県男鹿市で「今までは『守る農業』だった。農業を成長戦略に位置付け、農林水産業を徹底して改革してきた」と農協改革などの成果を挙げ、政権の安定継続を訴えた。 二階氏はJA准組合員の事業利用規制を巡り、「最終的に組合員の声・判断で決めればよいことは当然」と明言。「組合員の判断に基づくものとする」とする同党公約の道筋を作った。 両氏を安倍首相がどう配置するかによって、政府・与党の農政運営にも影響を及ぼす可能性がある。 「官邸主導」の農政と言われる中、今回の参院選で浮かび上がった地方の不満にどう向き合うか。今秋には食料・農業・農村基本計画の見直しが本格化する。多様な生産現場の声を反映しつつ、生産基盤の弱体化を食い止め、食料自給率を引き上げていく将来像を描けるかが問われる。 2019年07月23日
[2019参院選]自民22議席 野党10議席 東北また負け越し 参院選の改選議席数1の「1人区」は、全国32選挙区のうち、自民党が22議席を確保する一方、立憲民主、国民民主、共産、社民4党による野党統一候補は、10議席を獲得した。安倍政権に対する不満や不安が影響を与えたとの見方も少なくない。 全国32の1人区は、野党が統一候補を擁立し、事実上の与野党一騎打ちの構図となった。 自民は山口選挙区の林芳正元農相、「徳島・高知」の合区を戦った高野光二郎農水大臣政務官らが勝利を収めた。結果、1人区の議席数は前回参院選の21を上回る22に積み上げた。自民が議席を獲得した1人区では「現政権になってから農産物の輸出が進んだ」(果樹農家)と安倍農政を評価する声が出ている。 ただ、前回参院選で1勝5敗だった東北6県は、今回も勝ち越すことはできず2勝4敗に終わった。東北以外でも大分選挙区で礒崎陽輔元農水副大臣が落選するなど、地方での敗戦が目立つ。 農政だけでなく、消費増税や年金問題、安全保障など、さまざまな争点が浮上する中、自民党候補が落選した1人区では「安倍政権におきゅうを据える意識が強かったのではないか」(農業団体関係者)との見方が強い。自民党は「反省する所は大いに反省する」(二階俊博幹事長)と受け止める。 一方、前回に続く東北6県での勝ち越しについて、野党側は「農政を含め安倍晋三首相の言うことに疑問を感じる人が多かった」(国民民主党の玉木雄一郎代表)と実感する。 野党統一候補が勝利した1人区の地域で、水稲25ヘクタールなどを手掛ける法人経営者は「景気回復が続いているという実感はない」と、安倍政権の経済政策を疑問視する。 東北で議席を獲得した野党候補の支援者は「民主党政権時代の戸別所得補償制度がなくなり、大幅な減収となった大規模農家から支持を得た」と安倍農政に対する不満を勝因に挙げる。 2019年07月23日
[2019参院選]参院選 与党過半大きく超す 安倍農政継続へ 東北「1人区」は激戦 第25回参院選は21日、投開票され、自民、公明両党で改選議席の過半数となる63議席を上回り、与党が勝利した。安倍晋三首相(自民党総裁)の政権基盤は安定し、農政改革や自由貿易の推進を含め、一連の経済政策を継続する構え。一方、改選議席数1で農村部も多い全国32の「1人区」は農業地帯の東北で厳しい戦いを強いられるなど、安倍農政が全面支持を得たとは言い難い。政府・与党には、生産現場の声に基づく丁寧な農政運営が求められる。 全国32の1人区は立憲民主、国民民主、共産、社民の野党4党が統一候補を擁立。事実上の与野党一騎打ちとなった。 中でも接戦となったのが東北。前回参院選で与党が1勝5敗と負け越す中、議席確保へ、自民党は安倍首相や菅義偉官房長官、二階俊博幹事長らが連日現地入りした。 だが前回唯一、与党が勝った秋田は寺田静氏、岩手は横沢高徳氏、山形は芳賀道也氏といずれも無所属の野党統一候補が議席を奪取した。東北以外でも滋賀で嘉田由紀子氏が当選した。 選挙全体では与党が勝利を収めた。安倍首相は「デフレから脱却し、アベノミクスの暖かい風を皆さまに感じていただきたい」と経済政策の一層の推進に改めて意欲を示した。自民党は、林芳正元農相らは当選を決めたが、礒崎陽輔元農水副大臣は落選した。公明党は改選11議席を上回る議席獲得を確実にした。 野党は立憲民主党が改選9議席を上回る議席を確保。国民民主党は改選8議席を下回ることが確実になった。 農政を巡り、安倍首相は輸出額が6年連続過去最高になったことなどをPR。環太平洋連携協定(TPP)や欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)の影響や日米貿易協定交渉など農家が不安を持つテーマへの言及は少なかった。 野党は日米交渉を巡り、トランプ米大統領が参院選後の「8月に成果を発表できる」と発言したことを問題視。「密約がある」と批判を強めたが、他の争点に埋もれ議論は深まらなかった。 参院選は4日に公示され、改選124議席(選挙区74、比例代表50)に370人が立候補した。 2019年07月22日
[2019参院選]山田俊男氏(自民)3選 准組規制反対強く訴え 参院選の比例代表で、JAグループの政治運動組織・全国農業者農政運動組織連盟(全国農政連)が推薦した自民党現職の山田俊男氏(72)が3選を果たした。山田氏は元JA全中専務で、昨年6月に予備投票を経て推薦候補に決定。選挙戦では、JA准組合員の事業利用規制の導入への反対を強く訴えた。 全国を一つの選挙区とする参院選の比例代表は、業界団体が候補を擁立し、得票数で政治力を競い合う組織戦の性格も持つ。全国農政連は、山田氏の選挙結果が農協改革を含めた今後の農政議論の行方にも影響するとみて、組織を挙げて参院選に臨んでいた。JA役職員や農業者から広く支持を得たとみられるが、最終的な得票数や党内順位も注目されそうだ。 山田氏の新たな任期中には、准組合員の利用規制の在り方を検討するため政府が農協改革の実施状況などを調査する期限の、2021年3月末を迎える。生産基盤の弱体化や日米貿易協定交渉など農政課題は山積み。党農林幹部の一人として、農業者やJAの意見を十分に政策に反映できるかが問われる3期目となる。 2019年07月22日