お気に入り記事の保存はアプリが便利!

logo_1101

2019-07-29

糸井重里が毎日書くエッセイのようなもの今日のダーリン

・長風呂に浸かりながら、
 なんとなくさくらももこさんのことを考えていた。
 ああいう才能について、しみじみと思い出していた。
 親しみやすさとか、笑いの要素がたっぷりだったから、
 小さな子どもたちやらお年寄りにまで、
 まんべんなく好かれてはいたのだけれど、
 いやぁ、ももちゃんの凄みは
 もっととんでもないものだったんだよなぁ。

 少女マンガ雑誌で人気だった『ちびまる子ちゃん』が
 テレビで連続アニメとしてスタートした。
 そのテーマソングの作詞を、マンガの作者である
 さくらももこが任されることになる。
 そこで書いた歌詞が、あの『おどるポンポコリン』だ。
 他にない歌詞というのは、こういうものだ。
 唐突に、なんの臆面もなくという感じで、
 「おなべの中からボワっとインチキおじさん登場」
 させちゃうんだよ。なんじゃこりゃあだよ。
 作詞家としてのデビュー作に、
 脈絡なく「インチキおじさん」ってものが出てきちゃう。
 このセンスというか、世の中なめてる感というのは、
 当時のぼくにも「やるなぁ!」だった。
 インチキおじさんと、お笑い芸人と、エジソンが
 歌のなかに、前ぶれもなく登場してきて、
 ピーヒャラピーヒャラ踊りまわって、
 「お腹がへったよ」というエンディングに至る歌。
 こんな歌は、玄人にも素人にもつくれやしない。
 もちろん、結果的にこの主題歌は大ヒットもしたし、
 アニメ『ちびまる子ちゃん』の世界を飾ったり
 広げたりしてくれたのだから、大成功だったわけだ。
 番組主題歌ということでは、2作目の『走れ正直者』は、
 西城秀樹が歌ったことだとか、テーマの選択などに
 多少の「設計した感じ」はあったけれど、
 やっぱりとんでもない作品になっていた。
 歌い出しが「交差点で100円拾ったよ」だからねー。
 さくらももこさんとは、それなりのお付き合いもあって、
 よく知ってるようなつもりでいたのだけれど、
 実際、ずいぶんと凄みのある作家だったよなぁ、と、
 いまもまだ生きているじぶんとして、
 湯船の中でしみじみ思うのだった。

今日も、「ほぼ日」に来てくれてありがとうございます。
表現や手法がやわらかいと、そこに気を取られちゃうよね。


ここ1週間のほぼ日を見る コンテンツ一覧を見る