東京電力が、福島第二原発の全4基を廃炉にすると正式に表明した。日本の原発は本格的な「廃炉時代」を迎える。
大事故を起こした福島第一の6基とあわせ、世界的にも異例となる10基の廃炉作業を並行して進める計画だ。東電は福島の復興に向け、重い責務をまっとうしていかねばならない。
昨年の方針表明から今回の判断まで1年かかった。そのことが、越えるべき障壁の高さを表している。
ひとつは人材の確保だ。事故炉が並ぶ福島第一では今、3600人が廃炉に向けて作業中だ。核燃料が溶け落ちた炉内の全容把握は手探り状態で、難航を極めている。
その支援拠点でもある福島第二が廃炉の対象に加わる。東電は「おおむねメドがたった」というが、高い技術を持つ人材をどうそろえるのか。事故が起きぬよう、慎重に、かつ着実に作業する必要がある。
通常の原発では廃炉に30年ほどかかるとされるのに対し、福島第二では40年超かかる見通しだという。4基の作業を一気には進められないからだ。
新入社員が退職まで勤め上げるほどの時間である。世代を超えた取り組みになる。社員の士気を保ち、責任を持って困難を乗り越えねばならない。
今後、具体的な計画の認可を原子力規制委員会から得て着手するが、対応方法が固まっていない課題も多い。東電は4基で1万体の使用済み核燃料を原発敷地内に一時保管した後、県外に搬出する方針だ。しかし運ぶ先は「今後の検討になる」(東京電力ホールディングスの小早川智明社長)。5万トン超と見込む放射性廃棄物には処分ルールが未確定な部分が残る。
廃炉は電力大手がこぞって向き合う課題だ。福島の事故後に21基の廃炉が決まり、これからも時間とともに増えていく。使用済み燃料や放射性廃棄物をどうするのか。先送りせず、政府が解決に取り組むべきだ。
安全対策の強化によるコスト増が廃炉への判断を後押しし、再稼働した原発は9基どまり。新増設もままならず、原発が基幹電源としての地位を失いつつあるのが現実だ。
にもかかわらず、電力各社は「あるものは使う」と原発頼みの姿勢を変えていない。東電も、7基を擁する柏崎刈羽原発(新潟県)のうち、まずは6、7号機の再稼働を目ざす。
厳しい現実と廃炉時代の先まで見据え、次世代を担う再生可能エネルギーにこそ、人材や資金をしっかりと振り向ける。電力大手、とりわけ東電には、そんな社会的な責任もあるのではないか。
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