「風ノ旅ビト」や「Flowery」といった傑作をPS3へ送りだした開発スタジオthatgamecompany。IGNは同スタジオの創業者であるJenova Chenに、動画によるロングインタビュー(英語)をしている。

インタビューで、Chenは2018年に発売を予定している6年ぶりの新作「Sky」についても触れている。

モバイルゲームは、ゲームというメディアを芸術性の高いエンターテイメントに成長させるという我々のこれまでの成果を台無しにしているのです。

PlayStationプラットフォーム独占タイトルを3本展開するというSIEとの契約を終え、「Sky」はまずiOS向けアプリとして登場する予定だが、後に他のプラットフォームの展開も予定しているそうだ。iOSを最初のプラットフォームに選んだ理由について、Chenは昨今のモバイルゲームを中心としたビジネスモデルに対する不満がその背景にあることを説明した。

「僕のクリエイターとしての目標はゲームに対する偏見を変えることです。(中略)現在、スマートフォン端末で20億人がゲームをプレイしています。でも彼らがプレイするゲームの大半はあまりよくできたゲームではありません。一部のタイトルからは悪意すら感じます。こんなにもたくさんの人がゲーマーになっていることは喜ばしいことです。でも、モバイルゲームの流れは、ゲームというメディアを芸術性の高いエンターテイメントに成長させるという我々のこれまでの成果を――少なくとも5年か10年分――台無しにしているのです」


Chenはモバイルゲームの影響によって、多くの人が再びゲームを暇つぶしの対象として捉えるようになったことを問題視している。

優秀なデザインのゲームで、プレイヤーのことを気にかけ、尊重する作品でもビジネス的に成功できるということを証明して見せたい。

「病院に行って、医者が患者の病気を治療する代わりに、引き続き薬を買ってもらえるように病気を悪化させたとしましょう。そんな人は刑務所行きですよね? ゲームデザイナーの本来の仕事はプレイヤーを楽しませることです。ところがプレイヤーをイライラさせ、そのイライラをお金で解消できると見せかけておいて、本当はプレイヤーをさらにイライラさせるゲームがあるとすれば、そのデザイナーも刑務所に送られるべきだと思いませんか?(中略)このようなゲームデザインが普通になってきたことに対して強い怒りを感じます。でも企業はお金になるビジネスモデルを採用するものです。そこで僕は優秀なデザインのゲームで、プレイヤーのことを気にかけ、尊重する作品でもビジネス的に成功できるということを証明して見せたいんです。これができれば、他のやりかたもあるということをパブリッシャーや投資家に示すことになるはずです」

プレイヤーによる課金を前提としたデザインのゲームは、広告から成り立つ芸術作品のようなものだとChenは言う。モバイルゲームにおいてそのようなビジネスモデルが多いからこそ、まずは同じ土台に立ち、違うやりかたを示すことがChenのミッションとなる。


「風ノ旅ビト」をプレイした人の多くは「妻が初めて楽しんでくれたゲームです」といったようなフィードバックを残しており、家族や友達と協力プレイで一緒に楽しみたい、という要望があったという。そこで「Sky」を大切な人と一緒にプレイするゲームにしたという。

自分のためではなく、他プレイヤーのために課金していくゲーム。

「普段はゲームをやらないゲーマーたちの奥さんや娘さんと一緒にプレイして感動できるゲーム。それは彼らが持っているデバイス、つまりはiPhoneでやらなければできないと思いました」

Chenによると、「Sky」の最も革新的な要素は、プレイヤーからどうお金をもらうか、つまりはそのビジネスモデルにある。

「プレイしたら驚くと思いますし、これをこのような形で実装したゲームはたぶん他にないと思います。……『Sky』は、自分のためではなく、他プレイヤーのために課金していくゲームなのです」