第十四話:暗殺者は受け入れる
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お互い、軽く変装をしてからタイミングをずらしてオルナを出る。
そして、マーハが予約していた宿で待ち合わせた。
マーハが用意していたのは、かなりの高級宿。
家具や美品、調度品などの品が良い宿ではあるが、それ以上に秘匿性が高いことを重視しているように見えた。
ここは客の情報をきちんと守る店だ。
俺もマーハもそれなりに有名人なので色々と気を遣う。
下手な貴族なんかより、オルナの代表と副代表というのは注目度が高い。二人で一緒に歩くだけなら、別に仕事と言い切れるが、そういう関係であることが広まるのは良くないのだ。
この宿にはシャワーがあった。
シャワーと言っても、お湯を沸かしてもらってタンクに入れておき足踏み式のポンプで圧力を生み出して、シャワーヘッドからお湯を吹き出すという原始的なもの。
そんな単純なものでもありがたい。
俺は先にシャワーを浴びて、マーハが出てくるのを待つ。
マーハの希望で、マーハを抱くときはルーグとして抱く。本当の俺に抱かれたいとのことだ。
時間がかかっているのを見ると、彼女なりに準備をしているようだ。
……鼓動が高まっている。
そういう用途で使われることが多い高級宿だけあって、雰囲気作りがうまいし、なにより、相手が相手だ。
「やはり、平静ではいられないか」
タルトが可愛く成長したように、マーハは美しく成長した。
初めて出会ったときからは想像もつかないぐらいに。
タルトもそうだが、女の子というのはすごい。知らないうちに女の子から女性に変わってしまうのだから。
……とはいえ、俺が動揺していればマーハも不安になる。
落ち着かねば。
そうしていると、マーハがシャワー室から出てきた。
シャワーを浴びたことで火照った肌に目が吸い寄せられる。
そして、目が吸い寄せられたのには上気した肌だけじゃない。
「どう、かしら?」
「よく似合っているよ」
マーハは下着姿だった。
青みがかった黒、自らの髪の色に合わせたものだ。
扇情的なデザインで大人びたマーハには良く似合っていて、彼女の魅力を引き出せていた。
しかし、興奮するより先にどこか安心した自分がいる。
実にマーハらしくて、おかしくなったのだ。ああ、そうか。こんな状況だけど、マーハはやっぱりマーハなんだって、そう思えた。
「おいで」
「はっ、はい」
「いつものマーハと口調が違うな」
「ええ、ちょっとタルトぽかったわね。……緊張しているのよ」
マーハがベッドに腰掛ける俺の隣に座ろうとして途中でやめて、俺の足の間に体を収めるようにして座り、もたれかかってくる。
「いい匂いがする」
「特別な香油を仕入れて、シャワーを浴びたあとに塗り込んだの。ルーグ兄さんの好きな系統の香りだし、これを塗り込むと肌が綺麗に見えて、触りごこちも良くなるの」
「下着に香油、ずいぶんと念が入ってるな」
そう、こういう事前にしっかり準備するところが実にマーハらしく感じたのだ。
「私はディアさんやタルトほど魅力がないから、必死に着飾らないとあなたの前に立てないの」
「そんなことはないさ。二人も魅力的だけど、マーハも負けてない」
「あるのよ。それに、そうだとしても私はこうしないと安心できないし、少しでもルーグ兄さんにいい自分を見せたいの」
この下着は流行の最先端。たしか著名なデザイナーに貴族が特注で作らせたもので、マーハでも手に入れるのは苦労しただろうに。この香油もとても貴重なものだ。
少しでも俺に好かれたいと考えて、準備してくれたことがうれしいし、そんないじらしさが愛おしく感じて、後ろから抱きしめる。
心音が聞こえる。
マーハの心音だけじゃなく俺の心音も。どくんどくんどくん。二人の気持ちが高まっていく証拠で、そんな音すら愛おしく感じてしまう。
「本当にいいんだな」
「ええ、強いていうなら、そういうことを聞くのがNGよ」
「調子が戻ってきたじゃないか」
こういう切り返しは、マーハ特有のものだ。
「そうね、だいぶ緊張が解けてきたわ。こうして、肌を合わせると安心するの。いつだって、ルーグ兄さんの隣が一番ほっとする……ねえ、昔は寂しいって言ったら一緒に寝てくれたわよね」
「そうだったな」
タルトもマーハも幼いときに家族を失い、そのことがトラウマだった。
だからこそ、肉親のぬくもりを求め、俺なりにそれを埋めようとしてた。
だから、どうしようもないほど、二人が寂しいと感じた夜は一緒に寝てやっていたのだ。
「今だから言うけど、ただルーグ兄さんとくっつきたいから、寂しいふりをすることもあったの。たぶん、私だけじゃなくタルトもそうよ。……私たちはルーグ兄さんが思っているより、ずっと、ずっと前からルーグ兄さんのことを男性としていて見ていたの。気付いてた?」
「気付いてなかった。というより、気付こうとしなかったな」
いくらでもサインはあった。
だけど、俺は家族として接していたからこそ、そう決めつけて二人のサインを見落としていた。
「私よりずっとタルトのほうがわかりやすかったわよ。その、あの子、一緒に寝ながら一人で慰めてることもけっこうあったし」
「それはマーハもだろう」
「……っ、それはタルトにあてられて、って気付いていたの!?」
マーハが大声を出して振り向く。
タルトのアレは、隠す気があるのか疑問なレベルだったが、マーハのほうは必死に声を押し殺して隠すつもりはあるように見えていた。
タルトがそういうことをし始めて、何回か後の夜からマーハもし始めたから、もしかしたらタルトが気づかれないなら大丈夫とでも思っていたのかもしれない。
「俺は暗殺者だ。寝ていても周囲の気配は探っている。気付かないはずがないだろう。なんなら、回数と日付でも言おうか? 記憶力にも自身があるんだ」
よりいっそう赤くなって、それからもう限界とばかりにマーハは再び前を向いた。
「言わなくていいわ。死にたくなるから。そういうの気付いていて無視するって、いじわるね」
「たんに年頃だから性欲を持て余しているんだろうなと思って好きにさせていたんだ。そういうことをするのは別に変なことじゃないしな。ただ、そういうことに俺の腕を無断で使うのはどうかとは思うが……行為自体はストレスの発散にもいい。俺に気を使わせて、邪魔するのも悪いだろう?」
「……それ、ぜんぜん優しさじゃないわ。どうしよう、死にたい」
再び前を向いたことで顔が見えなくなっているが、耳まで真っ赤になっているのが後ろからでもわかる。
「今なら言ってもいいと思ったが、言わないほうが良かったかな?」
「ええ、本当に。私だけこんなに恥ずかしいのはずるいから、あとでタルトにもバレてたって話しておくわ」
普段は冷静なマーハでさえそれだ。
タルトはものすごく動揺しておかしなことになるだろうなと想像できる。
「ベッドの上で、他の女の話をするのは嫌がると何かで聞いたんだが、ずいぶん楽しそうにタルトについて話すじゃないか」
「だって、タルトだもの。ずっと家族で今更切り離せるわけないじゃない。それに……」
マーハが反転して、俺を押し倒してくる。
抵抗することは容易いが、マーハの好きにさせた。
「夢中にさせるのはこれからよ。私、予習は得意なの。いっぱい本で勉強して、道具で練習してきたわ。ルーグ兄さんに喜んでもらうために」
「そっか、マーハは優等生だな」
「ええ、あなたがそんな私を求めたからそうなったの。だから、今日は全部私に任せて。……ぜったいにルーグ兄さんを夢中にさせるから」
そう言って微笑み、キスをしてくる。
マーハが覆いかぶさり、それから耳元で大好きと囁いた。
じゃあ、俺はこのままマーハの勉強した成果を試させてもらおう。
……ただ、彼女はまだまだ青い、やはり勉強や練習には限界があり、実戦で初めて得られるものもあるということを理解していない。
今日から恋人になるが、マーハは兄としても師匠としてもあり続けてほしいと言ってくれた。
だから、そういうことも教えてあげよう。
今日は長い夜になりそうだ。
珍しく、ラブコメに一話すべて使いました! 実は一番乙女なマーハの可愛さが伝わるといいなと祈ってます。
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