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【社会】

諫早湾干拓、漁業者の訴え「開門で有明海再生を」 最高裁弁論、上告審が結審

マイクを握り「漁業者の権利を守り抜く」と訴える馬奈木昭雄弁護団長(中央)と漁業者ら=26日、衆院第1議員会館で

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 国営諫早湾干拓事業(長崎県)の潮受け堤防排水門の開門を命じた二〇一〇年の確定判決を巡り、国が漁業者に開門を強制しないよう求めた訴訟の上告審弁論が二十六日、最高裁第二小法廷(菅野博之裁判長)で開かれた。国は漁業者敗訴とした二審判決の維持を求め、漁業者は「豊穣(ほうじょう)の有明海を取り戻すには開門するしかない」と主張し結審した。判決日は後日指定される。

 開門の是非を巡っては、同じ最高裁第二小法廷が六月、別の二つの訴訟を巡り、「開門を認めない」とする初判断を示した。しかし国が「開門命令」と「開門禁止」の真逆の義務を負うねじれ状態は依然として継続している。今回の訴訟の判決次第では、長年の法廷闘争が「開門禁止」で決着する可能性がある。

 今回の訴訟は、国に五年間の常時開門を命じた一〇年の確定判決に対し、国が漁業者に開門を強制しないよう求めた請求異議審訴訟。国は一審佐賀地裁では敗訴したが、一八年の二審福岡高裁は「漁業権は既に消滅し、漁業者の開門を求める権利もなくなった」と判断。確定判決の効力を事実上無効とする国の逆転勝訴としたため、漁業者が上告していた。

 弁論では佐賀県の漁業者、平方宣清さん(66)が「先祖代々、漁業権は何十年も継続してきたもので、消滅するなんて考えたこともない」と語り、国に「農業と漁業が両立する環境を取り戻してほしい」と求めた。代理人の吉野隆二郎弁護士は「国が確定判決を守らないことを裁判所が認めていいのか」と二審判決の破棄を訴えた。

 一方、国は「開門請求の根拠となる漁業権は既に消滅した」と改めて主張し、上告棄却を求めた。

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