@chablis777
シャブリ

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(亜矢美)あ~ もう見てらんない もう…。あ~!
昭和38年12月なつたちの作ったテレビ漫画が日曜日の夕方に始まりました。
(テレビ)♪「あいつは怪力」
(歓声)
(笑い声)
なつたちの この苦難と冒険はやがて 未来のジャパニーズアニメーションの担い手たちへとつながってゆくのです。
(テレビ)♪「あらしのサム ハレルヤサム」
(テレビ)♪「いつか王者だサム」
♪~
♪「重い扉を押し開けたら暗い道が続いてて」
♪「めげずに歩いたその先に知らなかった世界」
♪「氷を散らす風すら味方にもできるんだなあ」
♪「切り取られることのない丸い大空の色を」
♪「優しいあの子にも教えたい」
♪「ルルル…」
(富士子)なつ 見たさ。面白かったわ。
(なつ)本当に?本当さ。
ちー君も好きになったみたいでじ~っと見てたわ。
℡それは よかった。
ちー君に会いたいな。
なつの名前も ちゃんと出てたね。
じいちゃん 思わず「おっ!」て声出してたわ ハハ…。
ハハハハ… そっか。 じいちゃんは?
℡(富士子)なつのテレビ見終わってすぐ牛舎戻った。
(泰樹)テレビぐらい買え!
お前ら 遅れてるもな。
(菊介)おやじ。(悠吉)うん?労働組合作って賃金上げさせるべ。
それより わしは もう引退したいわ。
近頃 腰が こわあて…。それは困る。
ハハハハハハハ…。
時間出来たら すぐ帰ってきなさいね。
(剛男)どれ 代わるかい。したらね。
あっ… なして!
電話代もったいないべさ。別に用事ないしょ。
声を聞くのが用事だべさ!
なあ。うん?
どうだった?
(桃代)思ってたより絵は動いてたんじゃない?
お待たせしました。 サンドイッチとチキンライスでございます。
そう?
私なんか テレビ見てたらやっぱり動きが ぎこちないなって。
あっ… そんな中でもなっちゃんらしいなって思うところもたくさんあったよ。
モノクロじゃなければ私が 色を塗りたいくらいだけど。
私より 猿渡さんって人がすごいの。もう パパッと描いちゃう。
それじゃ 順調なんだ?
それが そうでもないんだよ…。
問題は やっぱり あの人よ。
(荒井)あんた ええ加減にせえや!あんたの要求 聞いとったらみんな 4,000枚ぐらい描かなあかんことになるやないか!
あの「鉄腕アトム」見てみいなあれ 1,000枚前後で出来てるっちゅう話やぞ。
(坂場)「鉄腕アトム」という作品の魅力があっての話です。
うちは うちらしい個性を出さなければ太刀打ちできないでしょう。
(荒井)放送でけへんかったら意味ないやろ!このままやったら ひとつきで放送でけへんようになるぞ!
荒井さん! 大丈夫です。私が なんとかしますから。
なんとかするってお前 そんな簡単なこと… どないすんの?
これから描く予定の原画を見直します。
例えば ここのトラ同士が仲間割れをして喧嘩をするシーンですけど…。
こういう乱闘シーンは手間がかかるのでこんなふうに土煙で覆ってしまうんですよ。
この煙だけを モコモコと動かして煙の中から 面白いポーズや表情をしたトラの止め絵が飛び出してくるんです。
(茜)ああ… それで喧嘩を表現しちゃうんだ?
これは…。(猿渡)それは いいアイデアだよ なっちゃん!
猿渡さんのやり方を見ていて思いついたんです。
あっ それからサムが トラをやっつけるシーンですがやっつけるサムの画に 画面いっぱいに星だけ出しちゃうんですよ。
その次の瞬間に伸びてるトラを見せればサムの強さも表現できます。
(一同)あ~…。
まあ テレビは小さな子どもも見てますからこれは 手を抜くというよりも暴力を振るう場面をなるべく見せたくないんです。
そうよね。それで枚数も少なくできれば 一石二鳥ね。
(猿渡)すごいよ なっちゃん!
でも そのかわりちゃんと丁寧に見せたいところには枚数をかけられるようにしたいんです。
イッキュウさん 思い切ってこういうことを やってはいけませんか?
それを決めるのは あなたです。
私は それを 最大限 生かせるように話の内容を考えてゆきます。
はい!
それじゃ 皆さんよろしくお願いします!
(一同)はい!よっしゃ ほな それでいこう!
よっしゃ!
♪~
・(妙子)ありがとうございました。
そして そのころ 北国では。
(妙子)いらっしゃい…。
(雪次郎)ただいま。雪次郎…!
何さ あんた 帰るなら帰るって知らせてくれたらいいしょや。うん…。
父さんと ばあちゃんに知らせてくる。
(蘭子)あの人の分も生きて演じてほしいのよ。
頑張ってほしいの これからも。
(とよ)アッハハハハ…。ハハハ…。
雪次郎! あんた 帰ってこれたんか!ただいま ばあちゃん。
あっ 父さん ただいま。
(雪之助)正月帰るんだらちょっと早いんでねえか おい。あんた。
クリスマスに 間に合うようにと思ってな。
父さん クリスマスケーキ作るべ!
ん?うん?
何だ? お前。どしたの?
うん…。
(妙子)雪次郎…!
父さん 言ったべや。
諦める時は 潔く諦めれって。
諦めたのか?
そ… その芝居で失敗したのか?セリフ忘れたのかい?
そんなことで…。そったらことでねえ!
もう 悔いはねえんだ。
だから決めたのさ。
俺は 菓子屋に戻る。
バカでねえか!
そったら中途半端なことで菓子屋になれっか!
だったら 父さん… 俺を鍛えてくれ!
中途半端な菓子屋として 人間として俺を鍛え直してくれ。
頼む…。
父さんのもとでもう一度やってみたくなったんだわ…。
本気か?
本気だ。
逃げてきたわけでねえんだな?
逃げてねえ…。
捨ててきた。
(妙子)雪次郎…。
♪~
(戸の開閉音)
(天陽)うん どうした?もう搾乳の時間か?
相変わらず やってんな。雪次郎!
久しぶりだな 天陽。帰ってきたんかい。
おう… もう ずっとな。ずっと?
おう。 これからは ずっと こっちさ。喜べ。
別に うれしかねえわ。
相変わらず冷めてんな。
あっ しばれたべ?何か 持ってくっか…。
あ いい…。後で お前の嫁さんに挨拶するべ。
おう。 そうしてくれ。
倉田先生にも 挨拶に行かねばな…。
ああ そりゃ喜ぶべな。
あ… よっちゃんや番長も呼んで一緒に酒飲むべ。
うん。
みんな お前に会いたがってるぞ。
あっ お前 なっちゃんのテレビ見たか?
ああ 兄貴から聞いたけどテレビなんて買えんからな。
欲しくもないんだべさ。
あ… 俺も テレビに出てたんだ。
ああ 声だけな。それは知ってんのかい。
なっちゃんも相変わらずやってんだな。
うん。 なっちゃんは相変わらずだ。
どんどん 先行くぞ。
脇目も振らずって感じだな。
俺は 結局なっちゃんには追いつけもせんかった。
競争じゃないべ 生きるのは。
そだな…。
お帰り 雪次郎。
ただいま 天陽。
何だ お前。
(蘭子)そう…。北海道に帰ったのね…。
別に 心から辞めろって言ったわけじゃないのに…。
彼は それも分かってましたよ。
分かったから 辞められたんだと思います。
雪次郎君 あれから じっくり考えて気付いたそうです。
自分は 開拓者になるなら演劇じゃなくて菓子屋だって。
(咲太郎)俺は 少し残念ですけどね。
♪~
だったら もう あれも剥がしたら?
うちは 思い出を捨てない店ですから。
あれは残しておきましょう。
(亜矢美)メリークリスマス。
メリークリスマス。
ああ なつよ…降り積もる雪が やがては解けるように時間は過ぎてゆくだろう。
そこに残るのは 思い出か 愛か…。
来週に続けよ。
(蘭子 咲太郎)お~!ハハハ…。


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