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「英国の負けに賭ける者は、一文無しになるだろう。我々は何が何でも10月…
「英国の負けに賭ける者は、一文無しになるだろう。我々は何が何でも10月末に離脱する」――そんな勇ましい第一声が、逆に危うさを感じさせる。
ボリス・ジョンソン氏が英国の新首相に就任した。欧州連合(EU)からの早期離脱をめざし、EUとの交渉が決裂すれば「合意なき離脱」に踏み切ると宣言した。
世界経済に影響を及ぼしかねない混乱も、国民が団結すれば最小限に抑えられる、という。はったりや誇張で知られるジョンソン氏だが、EU離脱はギャンブルではない。無責任にすぎると言わざるをえない。
そもそも離脱問題が混迷してきた原因は、英国の分断が深まり団結できなかったからだ。3年前の国民投票は離脱52%、残留48%の僅差(きんさ)だった。「EUに奪われた主権を取り戻せ」と、ナショナリズムをあおってきたのがジョンソン氏である。
25日の基本方針演説では、EUと合意ができなければ「清算金」を払わず、浮いた5兆円超を混乱回避策に充てられると主張した。3年前も、「EUへ払う巨費は国営医療制度へ回す」と、誇大な宣伝を連呼していた姿を思い起こさせる。
EUと円滑な貿易は維持するが、そのためのお金は払わず、移民の流入も制限する。そんな「いいとこ取り」をEUが受け入れないのは明らかだ。
メイ前首相がEUとまとめた離脱協定案を、英議会は3度も否決した。ただ、「合意なき離脱」を避けたい姿勢ではまとまり、政府の強行を阻む法律を今月、可決した。
新政権は議会を無視した手続きも辞さない構えとされる。暴走を防ぐために、議会はあらゆる努力を続けるべきだ。
ジョンソン氏が勝利した保守党首選に参加できたのは約16万人の党員で、人口の0・2%にすぎない。昨年発表の調査では党員の97%は白人で、71%が男性、平均年齢は57歳だという。EU残留派が多い若者層や、非白人移民など多様な英社会を反映していない。
党首選直後の世論調査では、ジョンソン首相誕生に失望感を抱く答えが47%を占め、好感を示す28%を大きく上回った。
新政権はまず、解散総選挙で国民に信を問うべきだ。総選挙が実施される場合、10月31日の離脱期限が間近に迫る。無秩序離脱と市場の混乱を避けるために、EU側は離脱期限の延長を改めて認めてほしい。
ジョンソン氏は演説で「(英国を)地球で最も偉大な国にする」と約束した。ならば、その主役である英国民に向き合い、尋ねるべきだ。「無秩序離脱という賭けを望みますか」と。
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