お笑い芸人が反社会的勢力の会合で現金を受け取っていた「闇営業」で吉本興業の社長と芸人が謝罪した。芸能界が不明朗さと手を切り、会社とタレントとの関係が近代化する契機になってほしい。
騒動のきっかけは芸人の行動である。特殊詐欺グループの主催する会合に出席し、最高で百万円の現金を受け取った。振り込め詐欺の被害金が、反社会的勢力を通じて芸人の懐に流れたことになる。
当初、芸人たちが現金の受け取りを否定したのが、騒ぎを拡大させた原因だ。後に「保身のため」と謝罪している。
芸人と社長の会見での食い違いがクローズアップされ、吉本興業の“内紛”へと話がすり替わった感があるが、ことの本質は反社会的勢力との接触にある。関係した芸人には猛省を促したい。
もっとも、芸人が「闇営業」の誘惑に乗る土壌が、会社側の体制にあるとすれば、何らかの対策が必要なのは当然だ。実際、「ギャラが安すぎる」などの声も所属芸人から上がる。
吉本興業と芸人との間には専属契約書も存在せず、「口約束」だけだったという。公正取引委員会(公取委)は、「独占禁止法上の問題を誘発する恐れがある」との見解を示している。
「売れなければ食えない」という厳しい世界とはいえ、会社と芸人の前近代的な関係は、見直すべきだろう。
吉本興業は、所属芸人らを対象に、弁護士や警察官OBが、反社会的勢力や薬物などの危険性を説く研修を開いてきたというが、コンプライアンス(法令順守)を進める上でも、所属芸人の待遇改善など、根本的な対処が強く求められる。
芸人の側も、理由はどうあれ、反社会的勢力を当てにするのは、犯罪の片棒担ぎになると自覚すべきだ。
最近の反社会的勢力は、一見それと分からないような会社を設立するなどして、一般の企業との見分けを付けにくくしている。芸能事務所側がしっかりと見極める体制づくりが必要だろう。
問題は全く別だが、民放テレビ局に「SMAP」の元メンバーが出演しないよう圧力を掛けた疑いがあるとして、ジャニーズ事務所が公取委から「注意」を受けたことも明らかになった。芸能界は「不透明さ」を取り払う時代であろう。お役所の説教など受けることなく、夢のあるエンターテインメントを提供し続けてほしい。
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