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 政府は来週にも、来年度の国の予算編成の土台となる概算要求基準を決める。

 基準の骨格は、先に閣議決定した経済財政運営と改革の基本方針、いわゆる骨太の方針に書かれている。

 趣旨は、こうだ。

 財政は厳しい状況にあり、歳出を抑える改革は続ける。政策の実行に必要なお金を借金に頼らずにまかなうようにする財政健全化の目標は、2025年度の達成をめざす。一方、10月に消費税を増税した後の経済の動きもみて、特別対応の政策を「適切な規模」で盛り込む。

 「改革」や「目標の達成」を、額面通りに受け取ってよいだろうか。昨年の骨太の方針にも同じ文言が並んでいたことを思い出すと、心もとない。

 特別対応は、消費税率が10%になる今年度に続くもので、2年限りという。増税前の駆け込み需要とその後の消費の落ち込みをならす対策や、防災・減災の公共工事が対象だ。

 1年前、今年度の予算編成につかった概算要求基準では、特別対応分にも歳出全体にも、上限を設けなかった。

 ルールが甘ければ、規律は緩む。特別対応は、キャッシュレス決済でのポイント還元などが「十二分」と政府が誇る規模で入り、増税による国の増収分の約1兆3千億円を上回る約2兆円になった。社会保障関係費は約1兆円増え、全体の予算は当初段階で初めて100兆円を超えた。

 ふくらんだ歳出を絞り込む難しさは、第2次安倍政権の7年間の予算に表れている。

 総額の平均は、約99兆4千億円。リーマン・ショック東日本大震災といった緊急時の対応で急拡大した規模を、受け継いだままだ。

 来年度予算こそ、歳出の膨張に歯止めをかけるべきだ。概算要求基準にまず、そのためのしかけを盛り込む必要がある。

 財政健全化の目標を達成する道筋も、示さねばならない。目標達成の時期はもともと来年度だったが、安倍首相は昨年、自らの自民党総裁任期の後へ5年も先送りした。「10年間くらいは消費税を上げる必要がない」というなら、増税せずにどう達成するのか、具体策を語らなければ無責任だ。

 増税後や来夏の東京五輪後に景気が落ち込まぬよう、目配りはいる。しかし、人口減や高齢化が進む時代、不急の政策に予算を割く余裕はない。

 首相は参院選で「財源をしっかり確保する」と、与党の責任を強調した。その言葉通り、前例踏襲ではなく、身の丈にあった持続可能な財政の姿を描くことこそ、首相の役割だ。

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