堂々の投球だ。福井大会準決勝で、プロ注目左腕の丹生・玉村昇悟投手(3年)が先発し、シード校の福井工大福井を相手に11三振を奪って完封した。延長10回160球を投じた準々決勝から中1日でも、隙のない投球でチームを夏初めての決勝に導いた。
直球に威力があり、8回表には9番打者がファウルを放った際の投球で、この日最速の149キロをマークした。それでも真骨頂は、5~8回に得点圏に走者を背負った場面。打たせてとる投球からギアを上げ、直球と変化球を組み合わせて決定打を許さなかった。
「基本はバックを信じ、要所では緩急を付けた。中1日でも適度な疲労感で、楽しいなと思いながら投げられた」
マウンドでの振る舞いに、春以降の成長が表れた。「試合の支配」をテーマに、ピンチでも動じず、打者の力加減などを見極め、要所を締めることを重要視して練習試合を重ねた。
学びのきっかけは、今春の富山・高岡第一との練習試合。相手監督から支配するほどの力がないと指摘され、玉村は「相手を見る余裕がないと打たれる」と大切さを再認識したという。
甲子園まで、あと1勝。連戦での大一番となるが、玉村は「楽しく笑顔で投げるのみ」。進化を続ける左腕が、動じることなくチームを導く。 (高畑章)