異なるルーツを持つ香港人が共生する現状についてジョーダンさんは、「日本に住む在日朝鮮人やアイヌ人と似た環境だ」と述べる。確かに香港にいる中国からの移住者やその子孫は、日本に住む在日朝鮮人と近いのかも知れない。
ケイランさんが反中感情を持つきっかけになったのは、中国人の爆買いだった。約10年前に子どもが生まれた頃、ミルクパウダーを買おうとしても中国人に買い占められてスーパーで購入できなかったことがあり、反中感情が芽生えたのだという。「逃亡犯条例は確かに直接的な影響はないが、中国人による影響は実生活に直接関わっている」と批判した。
香港人が恐れているのは、香港の中国化。一国二制度が崩壊して、中国政府の管轄下になり、中国人になることを何よりも恐れている。
英国領だった時代に戻りたいか、取材した3人の若者に尋ねると、いずれも「中国よりは英国領になるほうがずっといい」と断言。さらに「私たちは、中国人と違って生活や人としての質が高い。中国人と一緒にしてもらいたくない」とも訴えていた。
もちろん先に述べたように、様々なルーツを持つ香港人がいるため、この3人の声が全てではない。だが、テレビや新聞で見る大規模な香港のデモには、一人一人の複雑な思いと強い反中意識が詰まっている。
私が香港を訪れてから数週間経ったが、今も週に何度かデモが行われている。現地のデモ参加者によると、最近は本土に住む中国人も参加し始めているというから驚きだ。
先日、香港の林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は条例の撤回を匂わす発言をしたが、たとえ撤回されたとしても、香港人たちの反中意識が消えるわけではない。独立、そして民主化が叶うまでは、こうしたデモが定期的に行われ、香港だけでなく世界中に広がりを見せていくのではないだろうか。