英国領時代に戻りたい…香港デモに参加する若者が抱く「反中意識」

最前線を取材して見えた本音
鈴木 美優 プロフィール

監視の厳しさを肌で感じた

日本でも香港のデモについては大きく取り上げられており、写真や映像でデモ隊が立法会占拠を試みたあとの様子は目にしていたが、実際にその現場に訪れると、当時の情景が目に浮かぶようだった。

同時に、警察がデモ隊を力ずくで押さえ込もうとしたのも無理はないと感じた。立法会や警察本部の壁には、卵を投げつけられた跡が残っており、いたるところに抗議のポスターが貼られ、スプレーで書かれた抗議文と文字はまだそのままの状態で残されている。立法会や警備室のガラス扉も割れたままで、室内の冷房の空気が外に漏れていた。

デモ隊によって割られた立法会のガラス扉

このデモに参加していた28歳の女性、メリーさんは、催涙スプレーや警棒での攻撃を恐れて前線には行かなかったものの、明け方まで占拠の様子を見守っていた。風刺画や政治ネタの記事を見たり読んだりするのが好きなメリーさんは、一国二制度の崩壊によって報道の自由が奪われるのではないかと考え、デモ参加を決めたという。

警察との衝突について尋ねると、「これまで香港では、平和的なデモで民主化や自由を訴えてきた。でも政府は対応してくれず状況は悪化するばかり。だからこうした行動に出るほかなかった」と語った。

 

デモ参加者たちの声を聞くのは、簡単そうで実は難しい。特に当局からの監視や盗聴が懸念されている今、公共の場でこうした話を聞くのは非常に困難だ。実際、デモ参加者たちが集うSNS上のグループでは、町中にある監視カメラで追跡されないよう、路上で記者からインタビューを求められても受けないよう呼びかけられているほど。

そのため、インタビューのほとんどは、取材に応じた内の1人が経営する家具屋の中で、閉店した後にひっそりと行なった。