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【スポーツ】

小出義雄「遺す言葉」第6回 「ほめて育てる」時には「怒る」

2019年7月25日 紙面から

 僕の指導の理念の一つは「ほめて育てる」である。特に、初心の選手や生徒、弟子は「ほめることから始めなさい」と言いたい。子どもたちが萎縮してしまうのが一番良くない。子どもたちは、先生との出会いで、すでに畏(おそ)れの念を抱いている。「恐れる」や「怖れる」とは違う。畏れとは、目上の人に対する一種、尊敬に値する「畏怖の念」と言う意味だ。

 既にそういう思いを抱いている子どもたちに、さらなる「恐れや怖れ」を与えてはいけない。恐怖感で、将来や未来を見つめる夢の芽を摘んでしまったら、指導者の資格はないと僕は言いたい。

 最近は、教育、スポーツ、家庭、職場などで「体罰」が社会問題化している。指導者が、この言葉に過敏になり「パワハラ」を恐れ、おそるおそるの指導が行われていると聞く。じゃあ、どうしたらいいのだという声も聞こえてきたりする。親や社会の目が気になって、確かに困っている人は多いだろうね。

 「ほめて育てる」を理念にしている僕だが、時には「怒る」。「体罰」と「怒る」は、似ていて非なるものなんだ。僕のいう「怒る」は「言葉で指導する」という意味だ。手や足はあげない。教え子の間違いに気付いた時、放っておいたらいけない。小さな間違いを見つけたら「大きく怒る」。つまり、徹底的に指導する。見逃した小さな過ちは、そのままどんどん増幅して大きな過失へとつながってしまう。

 逆に大きな失敗は、子どもたちにもよく分かっている。そこで落ち込む彼らに「大きく怒る」必要はない。そんなことをしたら、萎縮するに決まっている。そんな時は「小さく注意」する。これが僕のやり方です。(聞き手・満薗文博)

 

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