---------------------------
----N----100-------------
----a-----------------------------
----t-----------------------
----u-Z-o-r-a--------------
-----------------------------------
-----------------------------------
---------------------------------------------------------------
昭和38年の秋雪次郎君が 大役を務める舞台が本番を迎えました。
(茜)雪次郎君の晴れ舞台も見逃せないわよね。
(なつ)はい。
(光子)こんにちは。(咲太郎)おっ あんたも来たのか。
(亜矢美)こんにちは。
なつよ 幕が開くぞ。
♪~
♪「重い扉を押し開けたら暗い道が続いてて」
♪「めげずに歩いたその先に知らなかった世界」
♪「氷を散らす風すら味方にもできるんだなあ」
♪「切り取られることのない丸い大空の色を」
♪「優しいあの子にも教えたい」
♪「ルルル…」
(雪次郎)うわっ あ~…ありがとうございました!
雪次郎 やったな! よかったぞ お前。本当ですか?お~ ありがとう。
本当にすごかった。 すごくよかった。
本当に? なっちゃん。うん 何て言うか…うん すごかった!
すごかったしか言ってないよ。なつが こう言う時は本当なんだよ。
これなら 北海道から ご家族を呼んでも安心してもらえたかもしれないわね。
いやいや まだまだですよ。
マダムに見てもらえただけでもうれしいです。
あの 亜矢美さんは どうでした?
う~ん まだまだかな…。
ていうか まだまだできるっていうまだまだよ。
それ見れただけでも感動したよ。
ありがとうございます!母ちゃんは めったに褒めないからな。
すごいことだぞ。はい うれしいです。
あの 茜さんも イッキュウさんも忙しいのにわざわざ ありがとうございました。
(坂場)僕は 蘭子さんを見たかったから。
あっ… そうですか。正直に言わなくたっていいでしょう。
あなたは 正直に言ってないんですか?そういうことじゃなくて!
やめてよ こんな所で…。(蘭子)まあ 皆さん今日は どうも ありがとうございました。あり
がとうございました。
蘭子さん すごかったです!また言ってるよ。
ありがとう。雪次郎君を これからもよろしくお願いします。
雪次郎君の面倒を見るのは咲ちゃんの役目でしょう。
私と雪次郎君はもう ただの共演者だから。
蘭子さん… ありがとうございます。
それじゃ 雪次郎に乾杯!
(一同)かんぱ~い!(レミ子)頑張る かんぱ~い!
頑張る 乾杯! ありがとうございます!
ありがとうございますありがとうございます…。
はい 皆さん 今日は おでんの仕込みさぼっちゃいました ハハ…。
だから とことん飲んでちょうだい!はい。
そのかわり 俺が 今日は天ぷらを揚げるからな。
あ~ 咲太郎さんの天ぷら 久しぶりだ!
本当においしいの?いや おいしいんですよ これが。
料理人だったお父上直伝だもんね。
そう。 思い出の中のな。
これ食って 明日からも頑張れよ 雪次郎。はい!
頑張れよ。俺の天ぷらを 本当に教えたかったな。
蘭子さんに 共演者だって認めてもらえたもんね。
羨ましいわ。
蘭子さんの芝居は確かに すごいと思いました。
(雪次郎)えっ?
しかし 劇団としてはどうなんでしょうか?どうって?
演出にしても 何か新しいものを生み出してやろうとする意欲を全く感じることができません
でした。
何を言いだすんですか…。
あれは チェーホフですから。
チェーホフなら新しくなくてもいいんですか?
昔の人から教えられたようなありきたりの新劇でいいんですか?
ちょっと!ありきたりだと?
蘭子さんの芝居がありきたりだと言うのか?
いや ただ蘭子さんの芝居を見せるためにやってるように見えたと言ってるんです。
そのための劇団でもいいんですか?
何言ってんだよ…あんたに 何が分かるんだよ!
あ~ おい おい おい…油使ってんだから そんなに興奮するな!
あなたは そうは思いませんか?
やめて下さい!それを言ってどうするんですか?
僕は 雪次郎君が それを変えてゆくきっかけになればいいと思ったんです。
え…。きっかけ?
せっかく蘭子さんに認めてもらえたのなら何か新しいものを生み出すきっかけになればいい
と僕は そう思いました。雪次郎君が蘭子さんや劇団を変えてゆくようなそういう存在の役
者になってほしいと思いました。
なるほどな。ただの共演者で満足するなということか。
うん それは言えるかも。
そうすれば蘭子さんだけの劇団じゃなくなるし辞めた劇団員たちを見返せるよ。はい…。
(レミ子)そのことで 最近劇団は分裂したばかりだから。
そうでしたか。
だったら 初めから そう言えばいいのに。
そうですよ!
あなたは 人の反感を買ってからでないとまともなことが言えないんですか?
問題を考えもせずにいきなり答えを出すことは傲慢です。
それで 結果的に傲慢に思われてるんですからね。
少しは気を付けて下さい。
分かりました…。
どうも失礼しました。
あっ いえ…。はあ… 全く もう。
(光子)仲がいいのね 2人は。
あっ そういうお二人さん?
いえ ただの仕事仲間です。
そうですよ。
(光子)ちょっと ねえ… 焦げ臭い!
ああ! 天ぷら焦げた!
(一同)ああ~…。
♪~
今日は ありがとうございました。
ちゃんと送ってあげて下さいよ。
無論です。じゃ また明日。
はい。
ごめんね。イッキュウさんが変なこと言って。
ううん…。
なっちゃんとイッキュウさんって恋人でないの?
えっ… 違うわ。本当に?
ただの仕事仲間だって向こうも言ってたでしょ。
そうなの?もうとっくに そうなってると思ってたわ。
イッキュウさんは なっちゃんのこと好きだと思うけどね。
あの人の気持ちは さっぱり分かんない。
そうかなって思った時もあったけど。
一生をかけても あなたと作りたいんです。
結局 仕事で 必要とされてるだけみたい。
なっちゃんは好きなのかい?
一緒に生きれたらいいなとは思うけどね。
それは好きってことだべさ!
したって 好きでも一緒に生きられないことだってあるしたとえ相手に好きになってもらえな
くても好きなことが おんなじなら一緒に生きれてることだってあるんでないかい?
そんなこと考えてんのか?なっちゃんは。おかしい?
おかしくはないけど… 何か寂しいな。
雪次郎君だって言ってたべさ。
今は 好きだ何だとそったらこと言ってる場合じゃないって。
私も 今は とにかくテレビを成功させることだけ考えなくちゃ。
切ねえな なっちゃんは…。なして?
もっと 人に甘えたらいいべさ。わがまま言ったらいいべさ。
好きなら 好きって自分から言ったらいいべさ。
私が一番好きなのは 仕事だから。
まあ 結局 前に夕見が言ってたみたいに同志でいることが一番いいんだわ。
そしたら 俺も 今は舞台の成功だけ考えなくちゃな。
えっ?したらね ありがとう!
うん。
♪~
そして 雪次郎君の舞台は最後まで 無事に終わりました。
お疲れさまでした お疲れさまでした…。蘭子さん!
お疲れさま。
今日まで 本当にありがとうございました。
今夜 打ち上げが終わったらうちにいらっしゃい。場所は分かってるわよね?
2人だけでお祝いしましょう。
はい…。
お疲れさまでした…。
♪~
ただいま。お帰り。なっちゃん。
レミさん。雪次郎君は一緒じゃないんですか?
雪次郎君は 今頃どうなってるんだろう…。
えっ?
え… どうかしたんですか?
雪次郎君が…。
雪次郎君が?
♪~
蘭子さんの家で会うからといってそういう関係だとは…。
そうなったら なったでしかたがないんだけどね私は 雪次郎のことが心配なのよなっちゃ
ん。
どうして?蘭子さんは 根っからの女優だもん。
恋愛も仲間も自分の演技の肥やしにしかできない人よ。
そういう人に今の雪次郎君が溺れてしまったら役者としては潰されちゃうかもしれないって
こと。
えっ…。
何? それ。あっ ケーキです。
ありがとう。 後で頂きましょう。はい。
はい。
乾杯。お疲れさまでした。
お疲れさま。
はあ… どうぞ 座って。
蘭子さん…。
俺は 蘭子さんが好きです。
あっ… からかってるの?
違います。じゃ 気の迷い?
違います!
俺は 迷ってなんかいません。
蘭子さんを ずっと好きでした。
私には 芝居しかないのよ。芝居しかない女よ。
だから好きなんです。
俺も このまま ずっと蘭子さんと芝居をしていきたいんです。
こんな所に呼んじゃったから何か勘違いさせちゃったのかしら?
これは… 俺の勘違いですか?
そういう覚悟をして ここに来たわけ?
はい… 来ました。
♪~
そう。
♪~