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2019-07-24

糸井重里が毎日書くエッセイのようなもの今日のダーリン

・おそらく昔の育児書だとか、
 過去の子育てについての教えのなかには、
 いまではすっかり否定されているようなことも、
 たくさんあるのだろうと思います。
 育児にもトレンドのようなものがあって、
 古くから伝わる方法や技術も含めて「流行」になります。
 これまでにも、育児にまつわる「説」や「方法」は、
 けっこうまちがったりしてきたようなので、
 ぼくも、「説」の前では慎重にならざるを得ません。
 それでも、この考え方はいいなぁと思うことがあると、
 しばらくそれを頭のなかに置きながら、
 「考えの検算」するように過ごしています。
 じぶんに赤ん坊がいるわけでもないのに、
 育児書やら熱心に読んでるのも、ちょっと変ですけど。

 ぼくが個人的に、これはいいなと思っているのは、
 大きくは、「自己肯定感」を大事にする考え方です。
 最近知って、しみじみいいなぁと思ったのは、
 コンピテンス(competence)という概念です。
 硬い日本語訳だと「環境と効果的に相互交渉する能力」
 ということになるらしいのですが、ぼくなりに意訳すると 
 「いろんなモノゴトと親しむ能力」という感じかなぁ。
 もっと別の、歌みたいな言い方をすれば、
 「わたしが世界に笑いかけ、世界はわたしに笑いかける」
 ということになるかもしれません。
 「じぶんがそこにいていい」と安心していられる感覚。
 そして「じぶんがいることを、よろこんでもらえてる」
 といううれしさの感覚をまとめたようなものですかね。

 この「コンピテンス」を養ってやることが、
 親や周囲の大人たちの、とても大事な仕事である、と。
 そういう育児の考えが、老人であるぼくのこころに、
 ずいぶんと深いところで響いてくるのです。
 親たちが赤ん坊の態度や行動から気持ちを察して、
 「ちゃんと対応をする」ことで培われていくそうです。
 記憶の底のさらに奥底にいる「赤ん坊時代のじぶん」が、
 この考えに「そうだそうだよ」と激しくうなずきました。
 ぼくの近くにいる赤ん坊と母親の間で交わされている
 「根気のいい対応」を見ていたりすると、ぼくなんかは、
 もう一度赤ん坊からやり直したいかも、とか思ってます。

今日も、「ほぼ日」に来てくれてありがとうございます。
なんか昔のこどもって「自己否定感」を育まれた気がする。


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