所属するお笑い芸人が無届けで、振り込め詐欺グループの関与するパーティーに参加したことがわかり、批判を浴びた吉本興業ホールディングスは先週、筆者の単独取材に2度にわたって応じると共に、同社ホームページ上でプレスリリースを行い、実態調査の結果と再発防止策を明らかにした。
それによると、(1)約6000人の所属タレント全員に対する聞き取り調査を完了。他に反社勢力との関係が疑われるようなケースはなかった、(2)再発防止策として、吉本を介さずに芸人が独自ルートで交渉して放送番組やイベントに出演する行為、いわゆる“闇営業”を全面的に禁止。事前にすべての案件を届け出させる仕組みに切り替えて、芸人に代わって吉本興業が反社会的勢力かどうかチェックする役割を担う――という。
吉本の事業の中心はエンターテイメントだが、国の内外を問わず、経済活動、ビジネスを幅広く展開する企業の顔も持つ。隙あらば企業や一般人を食い物にしようと忍び寄って来る反社会的勢力をどう撲滅するのか。その点で、今回の騒動は、吉本にとどまらず、日本企業と社会全体に共通する課題を内包している。
今週は、騒動の背景や発端、会社として吉本がとった対応などについて、企業経営の観点を交えて整理しておきたい。
「宮迫博之100万円、田村亮50万円……」ーー。
詐欺グループの忘年会に出ていくら貰ったのかという、残された疑問に答える形で、吉本は先週土曜日(7月13日)、お笑い芸人13人の受領額を記した「修正申告及び寄付の実行に関するご報告」という文書を公表した。
そのうえで、13人が問題の報酬の申告漏れを正す税務上の修正申告を行ったことと、13人が受け取った金額の合計を上回る300万円を振り込め詐欺の被害者を支援している2つの団体に寄付したことの2つを明らかにした。これで、やっと吉本芸人の“闇営業”騒動が峠を越えるかもしれない。
しかし、日本企業の歴史を振り返ると、反社会的勢力との闘いは、終わりの見えない根深い問題だ。総会屋はかつての勢いを失ったが、暴力団は相変わらずだし、昨今は振り込め詐欺グループも大きな脅威になっている。
今回のような芸人の“闇営業”騒動とは別に、スマホ決済やフィンテックの穴を狙う大掛かりな犯罪の発生が懸念されている。今や、詐欺集団は、高齢者だけでなく、一般の人や携帯電話会社、金融機関、フィンテック関連のIT企業などにとっても大きな脅威なのだ。