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【政僚シリーズ6】国家戦略特区は安倍政権による新たな「利権」を生むだけ-「政僚」原英史の跋扈を許す制度は廃止すべし- 19.07.17

<内閣機能強化により発生した官邸の〇〇会議>
 橋本行革の頃からだったと記憶している。内閣機能の強化が叫ばれ、行政改革が進みはじめて、徐々にその形が出来上がっていった。その一環として、官邸に総理の私的諮問機関として〇〇会議などが設置され、我が物顔に振る舞うようになった。
悪弊が目立ち始めたのは、小泉内閣の経済財政諮問会議あたりからだった。かくゆう私も菅政権下では、官邸に「食と農林漁業の再生推進本部」なるものを立ち上げ、TPP交渉に参加しかかった農林水産業界の動揺を抑えるべく、官邸の力で強力な農林水産行政を推進しようと画策していたが、東日本大震災により立ち消えた。

<八田・原コンビの悪弊が目立ち始める>
 安倍政権になってからは、総理という虎の威を借りて官邸に巣食う政僚と利権に走る学者、業界が、欲しいがままに新しい「利権特区」を生み出し始めた。「規制改革」や「国家戦略」という耳当たりのいい美名のもと、一部の企業を特別待遇しているにすぎない。その陰で泣いているのは真面目にコツコツとやってきた中小企業や零細な農民・漁民である。
 私はかねてより官邸に設置された〇〇会議の下、八田達夫政策研究大学教授と原英史ワーキング・グループ(WG)委員の利権コンビによるいかがわしい政策作りが行われていることを問題としてきた。
 加計学園絡みでもWGとは名ばかりでほとんど2人で切り盛りし、それこそ独善的に物事が決められていたのを、HPに載せられるWGの開催状況や出席者や議事録で察知していた。そのやり口は、公正にはほど遠かった。京都産業大学も獣医学部の新設を申し込んでいたが、それを排除するように加計学園に決めることを急いでいる様子が見事に浮かび上がっていた。

<自分の仕事を官邸で作り上げる>
 今回その氷山の一角を毎日新聞(6月11日)が報じた。原と協力関係にあるコンサルティング会社が福岡市の規制緩和の提案を検討していた美容系学校法人から200万円のコンサル料を受け取ったという。また、同学校法人副理事長と原は、法人が負担し料理屋で会食も行っている。翌日の同紙の記事では、真珠養殖業の規制緩和の働きかけも明らかにされている。一方的に加計学園に肩いれしていたのと同じ手口である。
 WGで真珠養殖業の規制緩和の場合をみると、要望した真珠販売会社に原の方から自身の関係する上記のコンサルティング会社を紹介した。次に水産庁を呼びつけ、脅かし上げて規制改革とやらを迫る形で、特定の企業への利便を広げているのである。許し難いのは正義の味方のふりをし、悪辣なことばかりし、自分の懐を肥やしていることである。とても民主主義国を標榜する国の政策決定とは思えない乱脈ぶりである。私は安倍政権の問題点は多々ある中で、これが最も危険で重大な問題だと思う。国の政策決定の土台が腐りつつあるからだ。これでは国民はたまらない。
 私は予算委員の場で安倍首相に、「首相の友人を少しばかり優遇しても構わない。しかし、ものには程度ってものがある」と直接伝えた。それを次から次へと、公平だとか、岩盤規制を取っ払ったとかいう綺麗事を並べて同じことを繰り返している。それを見習いか調子に乗った官邸の〇〇会議の委員までもが同じことをしだし、制度自体が恣意的に運用されるままになっている。これは許し難い。明らかな利益相反(利害関係者が決定に関わっている)であり、欧米先進国では許されないことである。

<沿岸の海が漁民から企業のものに渡る>
 加計学園の件は、獣医学部の1つや2つ、愛媛でも京都でもどこにでも余計にできても大勢に影響はないのかもしれない。TPP、日豪EPA、日米貿易交渉から畜産業守り、今以上に振興していくため獣医がもっと必要なのだという、官邸の前向きな姿勢と捉えることとする。もしそうでないなら、業界は更に収縮し、獣医は必要な人数に収束していく。獣医は余り、学校は必要なくなるだけの話である。
 しかしながら今回、原の「特区ビジネス」コンサルティング(特区ビズ)に振り回されて、あろうことか2018年秋の臨時国会で共同漁業権漁業までもが企業に明け渡されることが決定してしまい、漁民は沿岸漁業を続けられなくなる危機に直面することになる。
 そもそもは、安倍政権の推し進める一連の一次産業への民間活力の導入とやらの一環である。しかし、その主目的が政府の政策変更に伴う対応に口を聞き、コンサルタント料を稼ぐ昔の利権政治家まがいの利権学者、利権有識者の跋扈を許してしまっているのだ。
 漁業者にとって、いかに深刻な問題か一般の方々にはわかりにくいが、簡単に説明すると以下の通りである。
 農民は農地があり農業をずっと続けられる基盤がきちんとしている。これも特区とやらで兵庫県養父市で企業の農地所用は認められている(この件も委員が会長を務める会社が参入している)。ところが、漁業にはそうした確固たるものがない。ものにもよるが、5年や10年で更新しながら、そこに住んで生活している漁民や漁業協同組合が優先的に漁業権を与え続けてきたのが漁業法である。しかし今回の法改正で、適切に運用していない場合には更新されず、部外の企業にもっていかれることになってしまった。
 このキッカケとなったのが、2015年秋に原がからむ2回のヒアリングであった。こともあろうか、内閣府はこの2回のヒアリングを隠蔽していた。非公式会合だと言い訳しつつ、手当も支払っていたことが、毎日新聞の指摘や、野党ヒアリングで明らかにされている。

<官邸の〇〇審議会は直ちに廃止すべき>
 私は八田、原は即刻委員をクビにすることはもとより、官邸の諮問会議なるものは全廃すべきだと思う。獣医学部の設置、外国人美容師解禁、真珠の漁業権の緩和等々細かいことは官邸のすることではないからだ。金融庁の審議会の報告で2000万円老後資金の問題が発覚した。麻生大臣が受け取らないという奇怪なことになってはいても、各省の審議会はずっとまともに動いている証拠である。
 官邸の審議会は堕落しきっており、百害あって一利なしである。実はこのことが一番身に染みてよくわかっているのが、自分たちの政策立案の場は奪われ責任だけ負わされ、挙げ句の果てに抵抗したら内閣人事に睨まれて左遷される恐怖に脅える、善良な霞が関の官僚であろう。