NTT、″マクスウェルの悪魔″により熱ノイズを選り分け電流を流すことに成功
日本電信電話株式会社(NTT)は、トランジスタ内でランダムな方向に動く電子(熱ノイズ)を観測し、一方向に動く電子のみを選り分けることで電流を流し、電力を発生することに成功したことを発表した。この研究成果は5月16日、英国科学誌「ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)」オンライン版に掲載された。
熱ノイズは無秩序な電子の動きであり、電子の動きを平均化するとどの方向にも動いていない一方、電流は一定方向への電子の流れである。通常、外部電源などを用いず、無秩序な熱ノイズから電流という秩序性を持った動きを生み出すことは不可能だが、個々の電子の動きを観測し一定の方向に動く電子のみ選び出すことができるのであれば、電流を生成することができる。この作業は「マクスウェルの悪魔」と呼ばれ、150年以上前から思考実験として提案されているものの、実現は困難であった。
このたび同社は、トランジスタ内の電子一個の動きを観測し、その結果に基づいてトランジスタを操作する技術を用いることで、電流を生成することに成功した。これは、熱力学分野で長年パラドックスとして議論されていた「マクスウェルの悪魔の原理」を利用することで実現したものだ。
実験では、ふたつのナノメートルスケールのシリコントランジスタを用いて形成した電子箱を利用した。入口側と出口側のトランジスタをオン・オフすることで、それぞれの扉を別々に開閉できる。電子数はその近くに作製された検出器の抵抗を測定することで、リアルタイムで検出可能だ。
マクスウェルの悪魔の動作は、(1)入口扉を開けて、入口と電子箱の間における電子のランダムな熱運動を観測する、(2)電子が電子箱に入って来たときに入口扉を閉めて、電子箱に電子を閉じ込める、(3)出口扉を開けて、電子箱と出口の間における電子のランダムな熱運動を観測する、(4)電子が電子箱から出て行ったときに、出口扉を閉めて、出口へ電子を追い出すという手順で実現したという。これを繰り返して電子を1個ずつ入口から出口に移動させることで、電流を生成した。エネルギーの高い電子を選り分けることにより、電位差を登る向きに電流を流すことが可能だという。
今回の成果は、電子デバイスの消費電力の下限や、分子モーターなどの生体中の微小な熱機関におけるエネルギー変換効率と深く関係している。分子モーターではマクスウェルの悪魔が活躍しており、熱ノイズのランダムな運動を利用しながら適切なタイミングで動作し、高いエネルギー変換効率を実現していると考えられている。同社では、電子デバイスにおいても、生体の仕組みを利用した高効率な動作実現を目指すとしている。
熱ノイズは無秩序な電子の動きであり、電子の動きを平均化するとどの方向にも動いていない一方、電流は一定方向への電子の流れである。通常、外部電源などを用いず、無秩序な熱ノイズから電流という秩序性を持った動きを生み出すことは不可能だが、個々の電子の動きを観測し一定の方向に動く電子のみ選び出すことができるのであれば、電流を生成することができる。この作業は「マクスウェルの悪魔」と呼ばれ、150年以上前から思考実験として提案されているものの、実現は困難であった。
このたび同社は、トランジスタ内の電子一個の動きを観測し、その結果に基づいてトランジスタを操作する技術を用いることで、電流を生成することに成功した。これは、熱力学分野で長年パラドックスとして議論されていた「マクスウェルの悪魔の原理」を利用することで実現したものだ。
実験では、ふたつのナノメートルスケールのシリコントランジスタを用いて形成した電子箱を利用した。入口側と出口側のトランジスタをオン・オフすることで、それぞれの扉を別々に開閉できる。電子数はその近くに作製された検出器の抵抗を測定することで、リアルタイムで検出可能だ。
マクスウェルの悪魔の動作は、(1)入口扉を開けて、入口と電子箱の間における電子のランダムな熱運動を観測する、(2)電子が電子箱に入って来たときに入口扉を閉めて、電子箱に電子を閉じ込める、(3)出口扉を開けて、電子箱と出口の間における電子のランダムな熱運動を観測する、(4)電子が電子箱から出て行ったときに、出口扉を閉めて、出口へ電子を追い出すという手順で実現したという。これを繰り返して電子を1個ずつ入口から出口に移動させることで、電流を生成した。エネルギーの高い電子を選り分けることにより、電位差を登る向きに電流を流すことが可能だという。
今回の成果は、電子デバイスの消費電力の下限や、分子モーターなどの生体中の微小な熱機関におけるエネルギー変換効率と深く関係している。分子モーターではマクスウェルの悪魔が活躍しており、熱ノイズのランダムな運動を利用しながら適切なタイミングで動作し、高いエネルギー変換効率を実現していると考えられている。同社では、電子デバイスにおいても、生体の仕組みを利用した高効率な動作実現を目指すとしている。