11月30日に空き店舗で開かれたイベント。意見交換会は終始熱気に包まれた=徳島市
シャッターが目立つ東新町1丁目商店街。人通りもまばらになっている=徳島市

 徳島市の東新町商店街の衰退が叫ばれて久しい。35年前のそごう徳島店開店などに伴い商業地図が大きく変わる中、東新町商店街の歩行者流入量は40年前の1割にも及ばなくなった。空き店舗が目立つこの街に今、1年後の阿波銀行本店営業部移転を好機と捉え、再興に向け知恵を絞ろうという動きが起きてきた。「寂れた商店街」から脱却できるのか。

 「ここに来れば何かある。そう期待させるものが必要だ」。11月30日、東新町1丁目商店街などが商店街内の空き店舗で開いたイベント「商店街の中心で活性化を叫ぶ!」。参加者の意見交換会で四国大の松重和美学長が口火を切った。

 有識者が次々とマイクを握り、「空き店舗が多いのは(新しい取り組みができる)チャンスともとれる。いい提案をした人に安く貸してはどうか」(坂田千代子徳島経済同友会代表幹事)、「東京にある県の情報発信・交流拠点と連携し、首都圏からの観光客に徳島の魅力を発信する拠点をつくってほしい」(元木秀章徳島経済研究所上席研究員)などと提言が続いた。

 会場を訪れた商店主らからも「明かりが消えた街をイルミネーションが鮮やかに見える場所として売り出すなど、弱みを強みに変えられないか」「他人に頼らず、自分たちでやっていかないといけない」といった前向きな声が多数聞かれ、終始熱気に包まれた。

 関係者によると、東新町1丁目商店街は約40%、2丁目商店街は90%以上が空き店舗になっている。

 徳島市と徳島商工会議所が毎年、特定の金曜と日曜に1日ずつ行っている市中心商店街通行量調査では、2017年の東新町、籠屋町、銀座の新町地区3商店街の歩行者数は金曜1525人、日曜2294人。1977年は1万6113人、2万7374人で、ともに10分の1以下に落ち込んでいる。

 この40年間で新町地区を取り巻く状況は大きく変化した。

 83年に徳島駅前にそごう徳島店がオープンすると、商店街にあった丸新百貨店が95年に、ダイエー徳島店が05年にそれぞれ閉店。明石海峡大橋開通による消費者の県外流出も響き、相次ぐ大型ショッピングセンターの郊外出店やネット通販の拡大が追い打ちをかける。

 商店街もにぎわいを取り戻そうと、屋台村を開いたり、お化け屋敷を企画したりしてきた。しかし、なかなか結果につながらず、有効な策を見いだすことができないまま衰退の一途をたどった

 街が生まれ変わるために何が必要か―。意見交換会に先立って開かれたトークセッションでは、監査法人トーマツ(東京)の波々伯部誠一郎シニアマネジャーが全国の成功例の共通項として▽出された企画案に対して何かと課題をあげつらい、可能性を秘めた案までつぶしてしまう「アイデアキラー」を生まない土壌作り▽テーマ設定▽リスクを負う―など12のキーワードを紹介。「金は後付けで考えないと持続的にやっていけない」と指摘した。

 最近、商店街周辺では少しずつ変化が生まれている。とくしまマルシェに合わせて空き店舗で雑貨店を開いたり、店の空きスペースをチャレンジショップとして格安で貸し出したりする人が出てきた。長年照明が消えて真っ暗だった2丁目商店街のアーケードには、一連の動きに期待する地元有志によって11月下旬から明かりがともされ始めた。

 阿波銀本店営業部は19年12月をめどに、丸新のあった商店街入り口にオープンする。移転により新たな人の流れが生まれるのは間違いない。東新町商店街に隣接したろくえもん通りでセレクトショップを営む髙木博代さんがイベントの最後、関係者を代表してあいさつした。「今までの街おこしを反省し、ゼロから頑張りたい」。決意と覚悟がにじみ出ていた。