| |  | |  | | はじめに
“木の子”とは古人の優しい命名である。『茸は動物でも植物でもなく、第三の菌類である』と書かれると、何となくよそよそしくてイメージが違う。やっぱり“木の子供”と見た方が、情緒的でより楽しい。茸は知識より感性の方がよく似合う生物である。 木の子と親しみ、その採集を遊びとして古来より文学にも多用されてゐるのも、茸の一面であらう。 日本書紀の「わが古里の名物は栗茸なり」から始まり、時代々々に詩歌、俳諧、文学に登場し日本の文化の一端を担ってゐる。 加えて、最近のグルメの中で茸の食味と薬効が見直され、一種のブームを呼んでゐる。特に都会人にとって地方の雑茸には深い関心が寄せられてゐる。そこで恵那食品 衛生協会創立35周年を期して、当地方で用いられてゐる茸について、料理と伝承と習慣などを基盤に、茸の本を作成するはこびとなった。 予め当協会の全会員からアンケートをいただき、家庭ではどんな茸を食べてゐるか、又営業上に使用してゐるか、その茸の料理は何が多いか、更にエピソードなどを聴取して、その中から多いものを取り上げてみた。 料理については、家庭料理と営業料理を併記し、バランスを考慮した。 又毎年発生する毒茸中毒に心痛し、間違い易い毒茸を列挙し、参考に共した。 この拙文の中から茸を再確認し、食材としての付加価値が少しでも向上し、若し飲食営業上、又家庭の食膳の楽しみに於て、一片のお役に立てば、望外の喜びである。 平成八年三月 恵那食品衛生協会 | |  | |  | |