(一通目)
供 述 調 書
本 籍 岡山市北区××町○丁目△番地
住 居 岡山市北区××町○丁目△番地
職 業 無職 (電話 086-xxx-xxxx )
氏 名 最上 桃太郎
元和 ○ 年 ○ 月 ○ 日生(1○歳)
上記の者に対する 強盗殺人 被疑事件につき、寛永○○年○月○日 岡山県警察本部本庁舎 において、本職は、あらかじめ被疑者に対し、自己の意思に反して供述をする必要がない旨を告げて取り調べたところ、任意次のとおり供述した。
1 私が生まれたところは、現在の住所である
岡山市北区××町○丁目△番地
です。
私の本当の父母が誰かは分からないのですが、生まれてすぐ、育ての母に拾われました。
母の名前は
最上たつ
と言います。また、母だけでなく、育ての父もいます。
父の名前は
最上泉水
と言います。
父は現在66歳、母は現在63歳になります。
父母ともに現在は無職です。
父と母の間には、私のほかに子はいません。
2 位記、勲章、年金等については、今までその様なものは一度も貰ったことはありません。
また、当然、公務員として働いたこともありません。
3 私は、生まれてからすぐに大きくなり、小学校にも行っていないので、最終学歴は
なし
という事になります。
4 私は、今まで、警察に逮捕や補導をされたことはありません。
5 私は小学校に行っていないのですが、だからといって何か仕事をしていた訳ではありません。
強いて言えば、父母の家事の手伝いをしていたぐらいです。
ですので、私の現在の職業は
無職
という事になります。
6 私の資産としては、今回、鬼ヶ島で得た金銀財宝になります。
まだ数えていないので正確には分かりませんが、大八車に満載していますので、一生遊んで暮らせるぐらいはあるのではないかと思います。
借金はありません。
最上 桃太郎(指印)
以上のとおり録取して読み聞かせた上、閲覧させたところ、誤りのないことを申立て、各葉の欄外に指印した上、末尾に署名指印した。
前 同 日
巡査部長 池 田 豊 成(印)
(二通目)
供 述 調 書
本 籍 岡山市北区××町○丁目△番地
住 居 岡山市北区××町○丁目△番地
職 業 無職 (電話 086-xxx-xxxx )
氏 名 最上 桃太郎
元和 ○ 年 ○ 月 ○ 日生(1○歳)
上記の者に対する 強盗殺人 被疑事件につき、寛永○○年○月○日 岡山県警察本部本庁舎 において、本職は、あらかじめ被疑者に対し、自己の意思に反して供述をする必要がない旨を告げて取り調べたところ、任意次のとおり供述した。
1 正確な日は分かりませんが、ある日、私は、鬼ヶ島へ行って鬼を退治しようと思い立ちました。
そこで、私は、父母に対し、
僕、鬼ヶ島へ行って、悪い鬼を退治してきます
と伝えました。
父母は私の言葉に感激し、父は、私の旗印を用意してくれ、母は、きび団子を30個ほど作ってくれました。
問 あなたは、鬼を殺すという意味で退治すると言ったのではないか
答 いいえ。悪いことをしている鬼を改心させるという意味です。
問 しかし、少なくとも、退治するというのは、暴力を振るって言うことを聞かせるということではないのか
答 違います。
問 では、単に説得するだけということなのか
答 ……。
問 鬼を退治すると、何らかの財宝が得られることは分かっていたのか。
答 鬼が人の財産を奪っているとは聴いたことがありましたが、財宝を隠し持っているかどうかは知りませんでした。
問 あなたの母があなたにきび団子を渡したのは、あなたが鬼から財宝を奪ったとき、その分け前をくれるとあなたが母に約束したからではないのか。
答 そんなことはありません。母は、純粋に子である私を応援するつもりで、きび団子を用意してくれたのです。
私は、鬼退治に必要な装束と刀を手に入れ、準備万端で鬼ヶ島へ向かいました。
このとき本職は、被疑者に対し、押収にかかる装束と日本刀各1点を示して説明を求めたあと、これらの写真に資料1を付して本調書末尾に添付する事とした。
これらの装束と刀は、私が用意したものに間違いありません。
私は、自分の蓄えを使い果たして、装束と刀を購入したのです。
問 あなたはどうやって蓄えるほどの現金を得たのか
答 父母の手伝いをすることで、父母から貰いました。
問 装束と刀はそれぞれどのくらいの値段だったのか
答 言いたくありません。
問 あなたが購入したのではないから言えないのではないか
答 違います。
問 あなたの父母が購入していたものをあなたに与えたのではないのか
答 違います。
2 私が鬼ヶ島に旅立つと、その途中で、
犬
と名乗る男性から声をかけられました。
犬
は、私に対し、
桃太郎さん、お腰に付けたきび団子をくれるなら、私も鬼退治のお供をします
と申し向けました。
このとき本職は、寛永○○年○月○日付け、岡山県警察本部刑事部捜査第1課司法警察員東山辰巳作成にかかる面割写真台紙を被疑者に示し、被疑者に対して
この中に犬がいるとは限らない
旨を申し向けて、説明を求めたあと、同写真台紙の写しに資料2を付して本調書末尾に添付する事とした。
只今刑事さんから1から12の番号を付けられた男性の顔写真を見せて貰っています。
この中に犬がいるとは限らないという事を刑事さんから説明を受けました。
この写真の中に犬の顔写真があります。
それは
4番の男
です。
犬は私の鬼退治に初めて参加してくれた仲間ですので、よく覚えている顔ですので直ぐに分かりました。
問 犬に本名を教えて貰っていないか
答 犬は、自分から本名を名乗らず、犬と呼んで欲しいと希望していたので、あえて本名を聞くことはしませんでした。
問 犬は犬飼健と名乗っていなかったか
答 聞いていませんし、その名前に覚えもありません
3 しばらく歩くと、今度は、
雉
と名乗る男性から声をかけられました。
雉
は、私に対し、
桃太郎さん、お腰に付けたきび団子をくれるなら、私も鬼退治のお供をします
と申し向けました。
このとき本職は、寛永○○年○月○日付け、岡山県警察本部刑事部捜査第1課司法警察員東山辰巳作成にかかる面割写真台紙を被疑者に示し、被疑者に対して
この中に雉がいるとは限らない
旨を申し向けて、説明を求めたあと、同写真台紙の写しに資料3を付して本調書末尾に添付する事とした。
只今刑事さんから1から12の番号を付けられた男性の顔写真を見せて貰っています。
この中に雉がいるとは限らないという事を刑事さんから説明を受けました。
この写真の中に雉の顔写真があります。
それは
11番の男
です。
雉は鬼退治で活躍してくれた私の大切な仲間ですので、よく覚えている顔ですので直ぐに分かりました。
問 雉に本名を教えて貰っていないか
答 雉は、自分から本名を名乗らず、雉と呼んで欲しいと希望していたので、あえて本名を聞くことはしませんでした。
問 雉は楽々森彦と名乗っていなかったか
答 聞いていませんし、その名前に覚えもありません。
4 さらに歩いていると、今度は、
猿
と名乗る男性から声をかけられました。
猿
は、私に対し、
桃太郎さん、お腰に付けたきび団子をくれるなら、私も鬼退治のお供をします
と申し向けました。
このとき本職は、寛永○○年○月○日付け、岡山県警察本部刑事部捜査第1課司法警察員東山辰巳作成にかかる面割写真台紙を被疑者に示し、被疑者に対して
この中に雉がいるとは限らない
旨を申し向けて、説明を求めたあと、同写真台紙の写しに資料4を付して本調書末尾に添付する事とした。
只今刑事さんから1から12の番号を付けられた男性の顔写真を見せて貰っています。
この中に猿がいるとは限らないという事を刑事さんから説明を受けました。
この写真の中に猿の顔写真があります。
それは
2番の男
です。
猿は鬼退治で活躍してくれた私の大切な仲間ですので、よく覚えている顔ですので直ぐに分かりました。
問 猿に本名を教えて貰っていないか
答 猿は、自分から本名を名乗らず、雉と呼んで欲しいと希望していたので、あえて本名を聞くことはしませんでした。
問 猿は留玉臣と名乗っていなかったか
答 聞いていませんし、その名前に覚えもありません。
5 私は、鬼ヶ島の近くの漁村で船を借り受け、鬼ヶ島へと渡りました。
私が鬼ヶ島の鬼を退治すると村人に話すと、村人は、快く協力してくれたのです。
鬼ヶ島に着くと、鬼たちは酒盛りをしていました。
紙とペンを貸していただければ、私が上陸した地点をお示しすることができます。
このとき本職が、被疑者に対し、メモ用紙とボールペンを渡したところ、被疑者は、メモ用紙に鬼ヶ島の見取図を記入したので、説明を求めたあと、同紙に資料5を付して本調書末尾に添付する事とした。
このA地点が、私が上陸した地点です。
このとき、鬼たちは、B地点にいました。
鬼は、
10匹程度
はいたのではないかと思います。
A地点とB地点の間の距離は、
30メートル程度
はありました。
私は、岩陰に隠れ、鬼たちの様子を窺っていましたが、鬼たちが酒を際限なく飲み続けるので、襲いかかるタイミングが上手く取れませんでした。
鬼たちが何の酒を飲んでいたのかは、遠かったせいもあり正確には分かりませんが、その量はかなり多く、酒甕にして
10甕
はあったのではないかと思います。
それでも、私が鬼たちを発見して2時間くらい経過した頃には、鬼たちは酔いつぶれ、大部分が寝入ってしまいました。
私は、この機会を逃す手はないと思い、犬、雉、猿に、それぞれ自分の得意な手段で鬼を懲らしめるよう指示した上、鬼たちに気づかれないようそっと近寄った上、用意していた刀で鬼たちに斬りかかりました。
私はこのとき非常に緊張していたので、正確にはご説明できませんが、合計で5匹の鬼に斬りかかったと記憶しています。
1匹目の鬼には、寝ている鬼の右横まで近寄り、刀の柄を
逆手
にして両手で持った上で、刀の切っ先を鬼の
胸の中央付近
めがけて突き刺しました。
鬼は、口から血を吐いて、少しの間
痙攣
しましたが、直ぐに動かなくなりました。
私は、初めて鬼の血を見たことで頭に血が上ってしまい、2匹目以降には手当たり次第に斬りかかったことしか覚えていません。
途中で私たちに気づいて逃げ出す鬼もおり、私は逃げる鬼に
後ろから
斬りかかったかも知れません。
このとき本職は、寛永○○年○月○日付け、岡山県警察本部刑事部捜査第1課司法警察員東山辰巳作成にかかる捜査報告書添付の写真を被疑者に示した。
只今、刑事さんから、私が斬りかかった鬼はこの鬼かと尋ねられましたが、私は鬼の顔もろくに見ていなかったので、正直なところ、よく分かりません。
ただ、私の記憶と傷が矛盾していないことは分かりますので、私が斬りかかった鬼かも知れません。
問 鬼に角は生えていたか
答 当時は興奮しており、そこまで注目していなかったので、分かりませんが、生えていたと思います。
問 今見せた写真の鬼に角は生えていないが、あなたの記憶と一致していないのか
答 ……。
問 鬼が人間ではないかとは思わなかったのか
答 ……思いませんでした。
問 犬、雉、猿が鬼に対してどのような暴行を行ったか、覚えていないのか
答 よく覚えていませんが、とにかく鬼退治の力になったことは間違いありません。
6 鬼退治が終わったので、私は、犬、雉、猿と手分けして、鬼が奪ったという財宝を探すことにしました。
すると、雉が、穴蔵の中に収められている
金銀財宝
を見つけたと報告してきました。
この穴蔵が、見取図のC地点になります。
あまりに量が多く、一度に持って移動できなかったので、私は、船を近くまで持ってきて、犬たちと手分けして財宝を船に積み込むことにしました。
鬼ヶ島から海を渡り、船を返した際、正確な分量は覚えていませんが、お礼として、財宝の一部を船の持ち主にあげました。
この人からは余っていた大八車をもらい、財宝を積み替えて、父母の元に戻ろうとしていたところ、警察官から職務質問を受けたのです。
私が警察官に呼ばれて立ち止まったところ、犬、雉、猿は、手で持てるだけの財宝を大八車から取ってどこかへ行ってしまいました。
問 犬、猿、雉には、財宝の分け前を与える予定だったのではないか
答 そのような予定はありません。皆、きび団子で鬼退治に協力してくれた仲間です。
最上 桃太郎(指印)
以上のとおり録取して読み聞かせた上、閲覧させたところ、誤りのないことを申立て、各葉の欄外に指印した上、末尾に署名指印した。
前 同 日
巡査部長 池 田 豊 成(印)