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異世界転移で女神様から祝福を! ~いえ、手持ちの異能があるので結構です~ 作者:コーダ

第1章 エルディア王国編

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第3話 最初の村とゴブリンの森

 最初の戦闘が終了してから、1時間半が経過した。マップにより村の位置がわかり、今日中に着けそうなことを伝えたので、木ノ下さんからは悲壮感がなくなっていた。

 現在は、ゴブリンから魔石を回収している最中だ。この1時間半でゴブリンとは3度遭遇したので、能力を奪ってから腹パンで沈めた。マップを見るとゴブリン以外にもスライムなどの魔物がいるが、今のところ遭遇したのはゴブリンのみだ。ゴブリンの時間当たりの移動量が大きく、遭遇しやすいのではないかと考えている。


 俺が魔石の回収を始めたのを見て、戦闘中は離れてもらっていた木ノ下さんが近づいてくる。


「すいません。進堂君、質問してもいいですか?」

「構わないよ。ヘルプ先生に聞く内容?」


 質問に答えるくらいはお安い御用だ。たとえ俺がわからないことでも、ヘルプ先生に聞けば、大抵のことは分かるからね。


「違います。先ほどの戦闘に関することです。どうして進堂君は戦いが始まってからしばらくは、回避行動しかしないのですか?他の敵が近づいてくる恐れがあると思うんですけど…」

「ああ、そのことか…」


 ゴブリンとは4回、計10匹との戦闘を行った。その全てで最初のうちは回避しかしていないのだ。腹パン一撃で沈められる相手に対し、回避を続けるのはおかしいだろう。

 数回の戦闘を見て、木ノ下さんも不自然に思ったらしい。


「俺の能力強奪は一気に奪うわけじゃなくて、徐々に奪っていくみたいなんだ。回避している間は、奪い切ってない時と思ってくれてかまわないよ。補足すると異能の有効範囲は2mくらいだからね。近づいて回避しないといけないんだ」


 効果範囲が2mだから、接近しなければいけない。奪いきるまでは倒してもいけない。中々に面倒くさい制限ではある。もちろん強力なチートであることに間違いはないけれど。


「そうだったのですか。では、相手が強ければ強いほど、戦闘中に奪うのは難しくなっていくんですね」

「そうなるね。死体からは能力が奪えないことに加えて、能力を奪ってから倒すとほとんど経験値が入らないんだ。だから俺はしばらくレベル1だろうね」


 敵を倒すと手に入る経験値。これを一定以上貯めることでレベルアップし、ステータスが上がる。逆に言えばステータスを奪うことで相手のレベルを疑似的に下げていることになる(レベルの表記自体は下がっていない)。よってステータスを奪うほど得られる経験値は下がり、奪いきった後に得られる経験値はほぼ0となる。


「そもそも、この世界でレベルってどのような恩恵があるのでしょうか?今のところそれを確認できるのは進堂君だけですよね」

「うん、絶対とは言わないけど、一般に普及している概念じゃないみたいだね」


 ちょっと気になるな。レベルは上げておくべきものなのだろうか?


Q:レベルが上がると何かいいことがあるの?

A:レベルアップ時にステータスが大幅上昇します。レベルアップ以外でも、関連する動作によりステータスが上がることはありますが、レベルアップより効率は悪いです。他には、魔法の一部に相対的なレベル差を参照するものがあります。


「あー、今確認したら基本的にはステータスと同義だね。ただ、一部の魔法がレベルを参照するみたい」

「例えば、自分以下のレベルの敵を即死とかですかね」


 ああ、ゲームではよくあるな。そんなのがあると、いくらステータスを上げても低レベルでいるのは危険ということになる。


Q:そんな魔法ある?

A:ありません。具体的にはレベル差でダメージ倍率が変わるような魔法などです。


「一応確認したけど、即死はないって。他にも細かく確認する?」

「いえ、そこまでしていただかなくても大丈夫です。でもたまには経験値も入手した方がよさそうですね」


 そうだな。流石にレベル1のままってのも恰好がつかないだろう。

 ついでに経験値についても調べておこう。


Q:経験値って何?

A:戦闘経験のことです。経験値が一定以上になるとレベルが上がり、ステータスが向上します。経験値はパーティで等分。とどめを刺した場合は、割合でプラスが付きます。模擬戦などでも経験値を得ることはできますが、とどめを刺さないと取得量は落ちます。


Q:パーティって何?

A:戦闘集団の単位です。パーティ状態では経験値等分など、いくつかの恩恵があります。パーティ編成は互いの了承があればよく、感覚的にパーティメンバーになったことを理解できます。


「でも、レベルを見られるのは俺だけだから、レベルと強さの間に乖離があったところで、困ることはほとんどないんだよね」

「そうですね。ゲームとかだとその場合、チートっぽいですけどね」

「まあ、異能って基本チートだからね」


 この世界では祝福ギフト以外のスキルやステータスは他の人にはわからない。これらの能力は人それぞれの得意とか苦手という言葉で片付けられてしまっている。ちょっとスキルについても調べてみよう。


Q:スキルレベルって何?

A:スキルの習熟度です。スキルに関連する作業を行えば、スキル経験値がたまります。スキル経験値が一定を超えるとスキルレベルが上がります。最大レベルは10で、個人で上限の違いはありません。ただし、スキル経験値の取得速度には個人差があります。


Q:スキルってどうやって手に入れるの?

A:先天的、後天的な要因によって入手できます。先天的な入手方法は、遺伝、種族固有スキル、生まれつきの才能などです。後天的にはスキルに関する作業中にまれに入手出来たり、儀式、契約などで入手できます。


 つまりスキルは、最初の1ポイントさえ手に入れられれば、時間と手間をかければ誰でも最大レベルまで上げることが出来るというわけだ。

 そして、俺は異能によって最初の1ポイントを他者から奪える。最初の1ポイント分の努力を無視できる俺の異能は、この世界において尋常ではないくらいのアドバンテージとなるだろう。


 それからさらに10分ほど歩いたところで村が見えてきた。結局2時間近くかかってしまったので、日も沈みかけて夕暮れ時だ。

 歩いて1時間の距離だとしても、戦闘時間と魔石の回収に意外と時間を食ってしまったようなので仕方ない。戦う以上、能力は奪いたいし魔石も確保したい。能力がなければ旅は大変になるし、お金がなければ村に入ったところで何もできないのだから。


 マップによると、ここはカバテ村というようだ。村の入り口には特に門番とかはいなかったので、勝手に入ることにした。

 あまり大きい村ではないが、王都が近いためか設備は整っていた。宿もあるし、道具屋もある。武器・防具は道具屋に少しおいてあるだけで、専門の店はないようだ。


「やっと着きました。この村には泊まれるところはあるんですか?」

「さっき、マップ見たけどあるみたいだね。マップ上にはINNって書いてある」


 木ノ下さんが一息つきながら質問してきたので、確認しておいた内容を伝える。


「それは良かったです。それにしてもそのマップ、ずいぶんゲームっぽいですね」

「そうだね。でも最初に言ったろ?ゲームみたいに見えているって」

「そういえばそうでしたね」


 2人で苦笑しながら宿へと向かう。ちなみにマップは世界中の情報が載っているわけではなく、現在エリアと隣接エリアだけだ。このエリアって奴は異能の方で勝手に決めているのではなく、土地としての単位があるのだそうだ。だいたい街とか村は1エリアになる。


 少し歩いたら、宿屋が見えてきた。それほど大きくなく、部屋数もそれほど多くなさそうだが、検索したら1部屋空きがあるようだった。マップってそんなこともわかるのか。

 宿の扉を開けると、受付のようなところに座っていたおじさんが声をかけてくる。


「いらっしゃい。宿に泊まるのかい?」

「はい。宿泊したいんですけど、部屋は空いていますか?」


 マップで見たから知っているが、こういうことはちゃんと聞いておかないとね。普通の人はマップの存在なんて知らないんだから、正規の手順は可能な限り踏んでいこうと思っている。


「ああ。丁度1部屋空いているよ。…と、お前さんたち男女2人で旅かい?同じ部屋で大丈夫か?」

「木ノ下さん、同じ部屋でいい?もし嫌なら木ノ下さんだけでも部屋に泊まってね。俺はどこかで野宿でもするから…」


 俺もベッドは恋しいが、木ノ下さんの意志を確認する。同じ部屋が嫌なら、女の子を優先すべきだ(ただし、美少女に限る)。野宿はまあ、なんとかなるだろう。


「同じ部屋で大丈夫です。進堂君の稼いだお金です。一緒にでも泊めていただけるだけありがたく思っています」


 2部屋あれば別々の部屋が取れたのだが、残念だ(棒)。1部屋しかない以上、同じ部屋で寝ることもやむを得ない(棒)。

 おじさんの方に向かい、結論を述べる。


「わかりました。それでお願いします。後、現金ないから魔石で支払ってもいいですか?」


 一応ヘルプ先生に魔石の相場や、金銭感覚について確認はしている。お金の単位はゴールド、レートはだいたい日本と同じくらい。


大金貨:100万

金貨:10万

大銀貨:1万

銀貨:1000

大銅貨:100

銅貨:10

鉄貨:1


 一方魔石はゴブリン程度のものでも、1個1000ゴールドにはなる。倒すだけでなく、解体技術も必要になるからだ。村までにゴブリンを10匹倒し、魔石を全て集めたので、10000円分くらいにはなっている。一泊もできないということはないだろう。

 魔石を見せるとおじさんは1つ1つチェックし、全てのチェックが終わると頷いた。


「どれどれ。ふむ、色と大きさから1個1000ゴールド買い取りで問題ないぞ。一泊1000ゴールド、飯は1食500ゴールドだ。おかわりは別料金。風呂はないが水桶と手ぬぐいは100ゴールドで貸出だ」


 とりあえず、一通り満喫しても多少は残る額があったようだ。一応ヘルプ先生に確認をとったが、ほぼ相場通りらしい。


「じゃあ、一泊と夕食朝食2人分で4000ゴールドです。水桶は必要になったらいいに来ます」

「まいどあり。201号室を使ってくれ。これ鍵な。飯はどうする?」


 おじさんに魔石を4つ渡したら、代わりに鍵を渡された。鍵には201って書いてある。


「部屋にいるから準備ができたら教えて下さい」

「わかった。夕食はシチューとパンだ。シチューはうちの宿の自慢だからな。楽しみにしてろよ」

「はい。楽しみにしています」


 異世界の料理は楽しみだが、中世風の環境のため衛生面に若干の不安が残る。

2階に上がり201と書かれたプレートの掛かった部屋の扉を開ける。そんなに大きくはないが、ベッドが2つある。


「「ふーっ」」


 部屋に入り扉を閉めた時点で2人して息を吐く。色々とあったからかなり疲れている。

 やはり屋根がある場所というのは落ち着く。正直、あの王女がいる国というだけで、まだまだ油断できる気がしないけど…。


「これで一段落かな。今日はいろいろ大変だったね」

「そうですね。かなり疲れました。お風呂に入りたいですけど、この宿にはなさそうですね」


 木ノ下さんはお風呂に入りたいようだが、水桶を勧めてきた以上風呂はないと諦めているようだった。


「あー。中世風の文化圏だと、風呂なんてあまりないよなー」

「現代日本人には辛い環境ですね…」


 俺としても出来れば風呂に入りたかった。特に俺はゴブリンとの戦闘をして結構動いている。とはいえ、返り血を浴びたわけではない。剣などで戦っていれば、返り血を浴びる可能性もあるが、俺は腹パンしかしていないから、その心配はない。魔石を取るときも血を浴びないように注意をしていた。

 そうだ。一息ついたら今後の話をしなければ。村を探すことを最優先にして、後回しにしていたことがいくつかある。


「話は変わるんだけど、俺たちの今後について、しっかりと話をしようと思う」

「今後の話ですか?」


 いまいちピンと来てないようなので補足を入れることにする。


「ああ、俺たちはとりあえず、生きて他の村に着くことを最初の目標としていた。そしてそれはこの村に来た時点で達成された」

「はい、進堂君のおかげで、生きて残ることが出来ました。本当にありがとうございます」


 お礼を言う木ノ下さんの目からは、尊敬の念が感じられる。自分で言うのもアレだが、木ノ下さんの前ではそこそこ格好いいところを見せてきた自信がある。


「でも、本格的にこの国を出るには準備が色々と足りないと思うんだ。旅の準備もそうだし、この世界を生きる上での心構えとかもそうだ」


 この話は早めにしたかった。異世界であっても、人の悪意というのは変わらないだろう。法律などの整備や、国家権力に関しても、王族を見るだけで期待できないことは明らかだ。

 俺たちには、身を守る術が必要だ。


「準備ですか。確かにこの世界で通用するものは、今のところ進堂君の異能しかないですからね。私に至っては完全なお荷物ですし」

「だから、そんなこと思ってないって。可愛い女の子を守るのは男の甲斐性なんだから」

「か、可愛いですか。そんなこと言われたの初めてです」


 すごい勢いで顔を赤くする木ノ下さん。言われ慣れてないのは本当のようだ。マジか、あの学校の連中見る目ないな。


「話を戻すよ。俺としてはこの村を拠点に足を伸ばしてみたいと思っている。魔物を倒せばお金になるから、しばらくお金稼ぎをして、旅支度を整えつつ、戦闘力を高めたい」

「コホン。そうですね、準備にはお金がかかりますから、当面の目標としてはそれがいいと思います」


 気を取り直した木ノ下さんが賛成票を入れる。目下の方針がとりあえず決まった。


「そう言うからには、この村でそれなりの旅支度はできるんですよね」

「うん、マップで確認したから、道具屋に一通りの旅道具が揃っていることがわかっているよ」


 今のところ、俺が言ったことは大体実現できている。木ノ下さんもそれに慣れてきたようで、マップとかの存在がある程度前提条件になっているようだった。


「じゃあ次の話をするね。この世界では苗字ってのは貴族しか持っていないんだ」

「そうなんですか?でもそれがどうかしたんですか?」


 これだけだと何が言いたいのかわからないだろう。でも、これは俺たちの今後の関係にも関わってくる大切な話だ。


「つまり、貴族でもないのに名字で、しかも異世界の名字で呼び合うのはこの世界では不自然すぎるんだ。だから、名前呼びをするべきだと思うんだ」

「そうなんですか。わかりました。仁君と呼べばいいんですね」


 さくらが素直に従ってくれる。違う。そうじゃない。しかし俺は内なる荒ぶる心を抑えつけて返す。


「ああ、そういうことだよ。さくら」

「!!!!」


 驚きすぎである。顔が真っ赤だ。ちょっと名前呼びを超えて、呼び捨てにしただけだぞ。確かに少し急だったかもしれないけど。


「ちょっと調子乗りすぎたかな。ごめんね、さくらさん」

「大丈夫…。ちょっとびっくりしただけです。はい、呼び捨てでもいいですよ」


 木ノ下さん改めさくらからお許しが出た。


「じゃあ、さくらも俺のこと呼び捨てでいいよ」

「え…」

「リピートアフターミー。仁」


 さくらが恐る恐る口にする。


「仁………君」

「惜しい!」


 本当に惜しかった。もう少しで同級生と名前を呼び捨てで呼び合うという素敵シチュだったのに。

 仕方ない、だが君付け自体も悪くはない。


「ごめんなさい。私にはちょっと難しいです…」

「仕方ないね。無理強いはしないよ。じゃあさくら、次の話だ」

「何でしょうか。仁君…」


 まだちょっとテレはあるが慣れていけばいい。


「次はさくらのステータスを強化しようと思うんだ。今のままだと、ゴブリンに殴られただけでさくらは大怪我をすることになる。そんな姿は俺も見たくない。だから、俺の持っているステータスの一部をさくらにあげるよ。それで身を守ってほしいんだ」

「身を守る力、ですか…」


 さくらが考え込んでいる。ここは俺の意見を伝えよう。


「ああ、敵を倒すなんてのは俺がやればいいことだ。でも、1対1の戦闘なら何とかなるけど、複数の敵がいた場合、さくらを守ることまで手が回らないこともあるかもしれない。そんなときに最低限身を守れるようになってほしいんだ」

「わかりました。私も足手まといで居続けるのは嫌です。ですから、私にも戦わせてください。いきなりは無理かもしれませんけど、少しでも役に立ちたいんです」


 少し驚いた。さくらには戦うのが無理だと思っていたからの提案だったのだが、さくら自身が一歩踏み込んでくるとは思わなかった。


「わかった。戦う力も込みで<身体強化>と各ステータスをあげるよ」


 手をかざし、ポイント配分を念じる。数秒して譲渡が終了する。


「とりあえず、最初にゴブリンを倒した時くらいのステータスにしといたよ。これなら戦えるし、最悪逃げられると思う」


 ステータスを見ると、しっかりとポイントが譲渡されていた。


「ありがとうございます。なんだか体が軽くなった気がします。ステータスの影響ってかなり大きいんですね」

「ああ、逆に言えば俺に奪われた場合、かなり体が重く感じるはずだ」

「中々に怖いですね。それ…」


 本当だな。チートの名は伊達じゃないな。

 お、マップに変化があった。おじさんがこちらに向かってくるようだ。


「とりあえず急ぎはこのくらいかな。そろそろ宿のおじさんが来るよ」

「おーい、飯出来たぞー」


 予想通り、食事の用意ができたようだった。


「さあ、行こうか。さくら」

「はい、仁君」


 一階に降りると、テーブルに料理が乗っていた。シチューとパンという中世お約束の食事だったが、自信があるとの宣言通りかなり美味かった。結構動いたからお腹が空いており、2人ともシチューのお代わりをすることにした。衛生面?そんなの料理のステータス見ればすぐにわかるよ。

 食後、水桶を頼もうか悩んだが、2人とも疲れていたため、体を拭くことなくそのまま寝ることにした。


 こうして、俺たちの異世界生活1日目が終了した。


 翌朝、目が覚めた俺たちは朝食をとり、村の外に向かうことにした。今日もこの村に泊まる予定なので、とりあえず残りの魔石をおじさんに渡し、同じ部屋を借りておくことにした。


 次に道具屋で水筒と物を入れるための袋、魔石を剥ぎ取るためのナイフを購入した。これで所持金はほぼ0になってしまった。最初のうちは自転車操業になるとわかってはいたが、中々に辛い。


「さて、再び一文無しになったからね。魔物を倒しましょうか」

「…いきなり気分が暗くなるようなことを言わないで下さい…」


 さくらのテンションが下がってしまった。


「まあ、心配しなくても朝から行動すれば昨日よりはお金稼げるだろうし大丈夫だって。昨日だって実は時給2500円だよ」


 拠点が決まっている。一応さくらも戦う。剥ぎ取りもナイフがある。ステータスは戦うたびに上がる。ほら、稼げない理由がない。


「それで、今日はどこで魔物と戦うんですか?道沿いをうろうろするんですか?」

「いや、今日は森に入る予定だよ。ヘルプでこの辺のいい狩場を検索したら、街から30分くらいのところにある森がちょうどいいって教えてくれたから」

「森、ですか。危険じゃないですか?」


 少し不安そうに言う。


「まあ、マップもあるし大丈夫でしょう。そこまで深い森じゃあないみたいだし…」

「わかりました。仁君とマップを信じます」


 それだけ言うと、もう気にしていないようだった。結構信頼関係が築けてきたと思う。

 30分くらい歩き、近くの森に到着する。


「一応補足すると、この森の魔物はほとんど外には出ないらしい。あまり奥に行かなければ危険も少ないと思う」

「はい、まずは武器防具が買えるだけのお金を貯める。次に、宿泊費と食費のお金を貯める。最後に旅支度のためのお金を貯めるのが目標ですね」


 …並べてみると「お金がない」の一言に尽きるね。貧乏は敵だ。


「グギャウ!」


 森に入ってすぐに、4匹のゴブリンと遭遇した。まあ、マップで分かっていたんだけどね。ちなみに1匹は剣を持っている。


ゴブリン×3


ゴブリン・ソードマン

LV4

<身体強化LV1><剣術LV1><棒術LV1>

「ゴブリン剣士の剣」

備考:剣を持ったゴブリン。


 最初は端折っていたが、そろそろ武器についても確認していこう。


ゴブリン剣士の剣

分類:片手剣

レア度:一般級


 棍棒振り回す気にはなれなかったけど、片手剣なら使ってみようかな。ちなみにレア度の種類は結構あるから、この場で軽く説明しておこう。


創世級ジェネシス

神話級ゴッズ

幻想級ファンタズマ

伝説級レジェンダリー

秘宝級アーティファクト

希少級レア

一般級コモン


 上から順に珍しく、創世級や神話級は人間の生活圏では確認されてないらしい。いよいよもってゲームっぽい。


 さて、確認も終わったし、ゴブリンの相手をするか。

 冷静に考えると、マップのおかげで位置は把握できるし、剣持ったゴブリンの剣術スキルが手に入るし、剣自体も奪って問題ないし…。ピンチどころかおいしいイベントにしか見えない。


 さくらには指示を出して、回避に専念してもらい、その間に俺がスキルを奪い続ける。

 まず剣を持った1匹から根こそぎ奪い、動きが遅くなったところで、剣を奪う。真剣白刃取りとか、やった自分が1番びっくりしたよ。後は剣を防御に使いつつ、奪い切ったやつから切り倒していく。


「ふう。どうだった?初戦闘は?」

「上がった身体能力で、回避しているだけですからね。実感なんて湧きませんでしたよ…」


 回避だけなら十分に余裕をもってできていた。次からは少しずつ攻撃にも参加してもらおうかな。


「じゃあ次は奪い切ったやつを教えるから、腹パンしてね」

「やっぱりとどめは腹パンなんですか…」


 複雑そうな顔をするさくら。いや、腹パンは強力だぞ。身体の正中線にいい感じの一発を入れるんだから。


「ごめんなさい。まだ回避だけでいいでしょうか?直接命を奪う感触に耐える自信がありません」


 まあ、奪いきるまで殺さない以上、フィニッシャーが1人でも2人でも殲滅速度は大きく変わらないだろう。


「わかった。回避だけとはいえ、無理はしないようにね」

「はい、ありがとうございます」


 会話をしながら魔石を取り出している俺。剥ぎ取り用のナイフだけあって使いやすい。皮膚の堅い強力な魔物には通用しないらしいけど。


「あれ?ゴブリン・ソードマンの魔石ってゴブリンより大きいんですね」

「そうだね、ゴブリンとはいえ結構種類が分かれるみたい」


 ヘルプにゴブリンの種類を聞く。量が多いのでこの森にいる種類だけを聞いた。


(魔石の品質順)

・ゴブリン・ジェネラル

・ゴブリン・ヒーラー(レア)

・ゴブリン・シャーマン

・ゴブリン・ソーサラー

・ゴブリン・ナイト

・ゴブリン・ソードマン

・ゴブリン


意外といっぱいいる。え、じゃあほかの魔物は?


・該当なし


「ゴブリンの森だここ!」


思わず叫んでしまった。ゴブリンしかいない森のことを、ゴブリンの森と呼んで何が悪い。


「ど、どうしたんですか?急に叫んで…。魔物が寄ってきてしまいますよ?」

「いいよ、来たって!どうせゴブリンだから!この森ゴブリン系統しかいないよ!」

「それでゴブリンの森…。それで、どんなゴブリンがいるんですか?」


 ゴブリン・ジェネラルから素ゴブリンまでを伝える。


「シャーマンとかソーサラーとか…。魔法が使えるゴブリンもいるんですね…」

「やっと魔法のスキルが出てきた。これは何としても手に入れておきたいね」


 ファンタジー世界を生きる上で覚えておきたいスキルのオンパレードだ。マップで位置を確認すると、レアと書いてあるヒーラーとジェネラルが1匹ずつ。他のゴブリンが複数匹いるのがわかった。


「やっぱりヒーラーはジェネラルの近くにいるのか…」

「ゲームと同じでヒーラーの重要性は高いのでしょうね」


 ジェネラルは<統率>と<鼓舞>のスキルを持っている。団体戦が中心の個体だろう。マップを見れば。かなり離れた位置にもシャーマンやソーサラーはいる。そいつらを倒して実力をつけてから挑んだほうがよいだろう。


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進堂仁

LV1

スキル:<身体強化LV4 up><剣術LV2><槍術LV3><棒術LV3 up>

異能:<生殺与奪ギブアンドテイクLV1><千里眼システムウィンドウLV-><???><???><???><???><???>

装備:ゴブリン剣士の剣


木ノ下さくら

LV1

スキル:<身体強化LV3 new>

異能:<???>

装備:なし

20150911改稿:

修正(6)の内容を反映。

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