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異世界転移で女神様から祝福を! ~いえ、手持ちの異能があるので結構です~ 作者:コーダ

第1章 エルディア王国編

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第2話 最初の戦闘と異能

 門番が見えなくなるまで、道沿いに進み、王都から離れる。完全に門番が見えなくなってから、俺は木ノ下さんに今後の方針を伝えた。


・道沿いに歩いて他の町や村を目指す。

・外国の情報を集め、問題がなければ向かう。

・道中魔物が出てきたら俺が闘う。木ノ下さんには後ろに隠れていてもらう。

・敵の数が3匹以上、もしくは手に負えないと判断したら2人で逃げる。


 2匹までなら戦うという俺の発言に木ノ下さんはびっくりしていた。いや、王都周辺の魔物が強いわけないと思う。RPG的に…。


 3匹という条件は木ノ下さんを守るための手が足りなくなったら困るからだ。戦闘中に追加で敵が来た場合は即時撤退をするのは当然だ。

 相手の強さにも条件を付けた。木ノ下さんから見て、手に負えないと判断した場合も撤退することにした。自分的には大丈夫でも、周りから見たら無理をしているようにしか見えない場合があるからだ。客観的な判断を期待している。


「でもほんとに戦うんですか?無理なら逃げて進むべきだと思うのですけど…」

「本来ならそうかもね。でも、もうすぐ日が暮れる。何の準備もなく夜を迎えるのは危険だから、今日中に最初の村に着きたいんだ」

「それなら、なおさら逃げて安全を確保した方がいいと思いますけど…」


 木ノ下さんは戦いを避けたいようだ。でも俺にも確かめたいことがあるので、ここは譲れない。


「とりあえず、最初に1戦させてよ。俺これでも格闘技の経験あるんだ。この世界の魔物の強さも気になるんだよ。で、その1戦で今後どうするかもう一度話し合おう?」


 俺が引かないので、木ノ下さんの方が折れてくれた。


「わかりました。少しでも無理だと思ったら、すぐに撤退をしましょう。安全第一です」

「わかった。最初に出てきた魔物で力試しさせてもらう」


 それから10分くらい歩くとついに魔物が現れた。


>野生のゴブリンが2匹あらわれた


 最初の獲物にちょうど良い、棍棒を持ったゴブリン2匹が立ちふさがった。

ゲームとかでもゴブリンはメジャーどころだが、この世界のゴブリンは結構醜悪なタイプだ。物語によっては、愛嬌があるタイプもあるのだが、ガチでキモいやつだ。殺すのに躊躇わなくて済む。


「ギシャアア」

「ひっ…」


 叫ぶゴブリンを見て木ノ下さんが後ずさる。確かに見ていて気持ちのいい姿じゃないよな。


「あれはゴブリンだね。ちょっと戦ってくるから、木ノ下さんは下がっていてね」

「が、頑張ってください…」

「おうよっ」


 木ノ下さんがゴブリンから距離を取り、俺が前に出る。向かって右側のゴブリンが棍棒を振りかぶる。バックステップで回避しつつもう一方のゴブリンが木ノ下さんのほうに行かないような位置を取る。そのまま攻撃せずに2分ほど回避に専念した。

 身体はちゃんと動くな。ちゃんと広い視野で位置取りができるし、攻撃モーションに入ってからの回避も問題ないな。元の世界で培ったものは、この世界に来たからと言って、失われてはいないようだ。

 あまり長時間戦うと他の魔物を呼び寄せてしまうだろうから、そろそろ攻撃に移ろう。

 ゴブリンに向かって駆け出し、1匹につき1発ずつ腹パンを喰らわせる。


「喰らえ!」


 ドゴッ。ゴスッ。いい音がしてゴブリンが倒れる。うん、倒した。

ゲームではない証拠のように、ゴブリンは消えずにその場で事切れている。


「あれっ?」


木ノ下さんが呆けた顔をしている。何か変なことがあっただろうか。


「今、パンチ一発で倒しませんでしたか。なんでそんな簡単に…?そんなに弱い敵だったんですか?」


 そのことか。万が一、俺の妄想とかだったらシャレにならないので何も言わなかったけど、そろそろ大丈夫かな。

 ゴブリンとの戦いによって、“コレ”が間違いないことが証明できたといってもいいだろう。


「そんなことないと思うよ。ゲームとかではゴブリンは低級な魔物として有名だけど、今の木ノ下さんが戦ったら、殴っても効かないし、殴られたら2~3発で死んじゃうと思うよ」


 棍棒とはいえ、殴られたら痛いよね。華奢な女の子なら死んじゃう恐れもあるよね。

 死んじゃうと言われて。少し顔を青くした木ノ下さんが質問を続ける。


「じゃあ、なぜです?元の世界の格闘技が上手く決まったんですか?」


 まあ、それもなくはないんだけど…。今回に限って言えばそれはあまり関係ない。同行者である木ノ下さんに隠すのも不義理というものだろう。俺の秘密を木ノ下さんに話そう。


「それにはちょっとした理由があるんだ。悪いけどこれから話すことは、他言無用でお願いしてもいいかな?」


 他言無用の理由があると言われれば、木ノ下さんも気になるようだった。


「わかりました。絶対に言いません。だから教えてください」


 それを聞いた俺は、一度タメを作ってから宣言する。


「実はね…俺にはこの世界がゲームみたいに見えるんだよ」

「……はい?」


 うん。我ながら何の説明にもなっていないね。木ノ下さんも首をかしげている。


「ゲームってさ、自分のHPやMP、攻撃力とかのステータスが見えるよね。俺にもそれが見えるんだ。しかも自分のだけじゃなくて、他の人の詳細も確認できるよ」


 今さっきの戦闘で、俺は最初にゴブリンのステータスを確認した。そして自分のステータスと比較した結果、2対1でも勝てると確信できるほどの差があったので、ゴブリンと戦うことを選んだ。


「ゲームみたいに辺り一面を上から俯瞰するようなマップも見えるんだ。これがあれば敵の位置もわかるんだ」


 マップで敵の位置がわかっているから、木ノ下さんへの攻撃を牽制できるし、敵の増援の心配もしていなかったのだ。


「ゲームみたいに、自分と相手の強さが比較出来て、相手がどこにいるかわかるから。勝てると思ってゴブリンに挑んだんですか?」


 かなり端折った説明でも、木ノ下さんはついてきてくれた。意外と理解が早い。女子とはいえ多少はゲームをやったこともあるだろう。


 ちなみにこのステータスやマップは、俺の視界上に置かれている。任意で可視・不可視を変えられえるし、なぜか普通にものを見ることを阻害しない。

 マップ上で位置がわかるから、不意打ちが効かない。ステータスでHPがわかるから、死んだふりも効かない。ちょっとずるい。


「まあ、そういうことだね」

「でもそれって魔物を一撃で倒したことと関係あるんですか?便利だとは思いますけど、進堂君の強さと直接は関係ないと思いますけど」


 少し失礼だけど意外だな。ちゃんと考えてそこに気付けるとは。

 もちろんその通りだ。情報的優位性アドバンテージは得られるが、それだけでは、ゴブリンを一撃で倒したことに説明が付かない。

 もちろん、それについても説明する。


「そっちはまた別の力だね。ゴブリンのスキルとステータスを奪って俺の力にしたんだ。奪った分だけこちらが強くなって、代わりに向こうが弱くなるんだからね。簡単に倒せたよ」


 ステータスをチェックしながら、スキルとステータスを奪う。マップを使って位置取りを確認する。ほら、負ける要素がない。3匹以上いる場合に木ノ下さんが狙われることだけが俺の敗北条件だったんだから。


 ここまで話したところで、木ノ下さんが不思議そうな顔をする。


「進堂君はどうしてそんなことができるんですか?私にはそんなことできません。学校の人たちもそんなこと一言も言っていませんでしたよ」


 他の人には出来ないということは分かっている。王城や王都でいろんな人間のステータスを確認したが、同じことができそうな奴はいなかった。

 だからこそ、今まで誰にも伝えてないのだから。

 だからこそ、大人しく王都を追い出されたのだから。


「もしかして、それが進堂君の祝福ギフトなんですか?」

「違うよ」


 祝福ギフト扱いはさすがに心外だ。これはそんなに矮小なものじゃない。そんなに真っ当なものでもない。これは世界のルールと異なるルールを持つ能力。


「これはね…。異能って言うんだ」

「異能…」


 木ノ下さんが呟く。

 異能、それがこの異世界で俺が手に入れた力だ。


「口で説明するよりも、まずは見てもらった方が早いかな」


 胸ポケットからメモ帳とボールペンを取り出す。荷物は元の世界の学校に残ったままだが、身に着けていたものは一緒に転移している。


「何をするんですか?」

「俺のステータスを書くからちょっと待っていてね」


名前:進堂仁

性別:男

年齢:17

種族:人間(異世界人)

スキル:<身体強化LV3><剣術LV2><槍術LV3><棒術LV1>

異能:<生殺与奪LV1><千里眼LV->

称号:転移者、異能者


「簡易版だけどね。はい」


 木ノ下さんに手渡す。読み進めるうちに徐々に表情が固まっていく。


「なんか色々すごいですね。聞きたいことがまた増えました」

「何でも聞いて」

「じゃあまず、名前から種族までは置いておきましょう。見ればわかりますから…」

「そだね」


 個人的には種族に異世界人って書いてあるのは驚きだったけどね。


「スキルっていうのは?これが祝福ギフトですか?」

「違うよ。祝福ギフトはスキルの種類の1つだよ。スキル自体は生まれつきの才能とか努力によって得た技能とかも含まれるから。その中で女神に与えられたものが祝福ギフトなんだ」


 ユニークスキルとかレアスキルとかもあるけど、今話す必要もないだろうし端折ろう。


「異能とはどう違うんですか?」

「異能ってのはこの世のルールから外れた力だよ。スキルと似たことをしても影響力が全然違うんだ。この異能があるから祝福ギフトが得られなかったみたいだね。リソースを食い合うのかな…」


 ルールから外れる、つまりイカサマとかチートと言い換えてもよい。そんな力を持っていたら、祝福ギフトなんて持っている余裕がないんじゃないかな。


「この<生殺与奪>と<千里眼>っていうのが進堂君の異能なんですね。もしよかったら、どんな力なのか教えてくれませんか…」


 さっき少しだけ話したけど、今度はもう少し詳しく説明しよう。


「<生殺与奪>はね、ギブアンドテイクって読むらしいよ。スキルやステータスを相手から奪ったり、誰かに与えたりできるんだ。ステータスってなんとなくわかる?」

「はい、一応ゲームとかやったことありますから…。でもゲームによってステータスの仕様って変わりますよね?この世界ではどうなっているんですか?」


 やっぱり木ノ下さんにも多少はゲームの心得があるようだ。

 ゲームによってもステータスの種類はまちまちだ。俺はステータス画面の補足欄を見ながら再びペンを走らせる。


「この世界ではこんなステータスで管理されてるよ」


LV:強さの等級

HP:生命力、0になると仮死、瀕死、もしくは死亡

MP:魔法使用量、魔法を使うと減る

腕力:攻撃力、物理的な攻撃の威力を決める

体力:持久力、どの程度戦闘力を維持できるか

魔力:魔法攻撃力、魔法の威力を決める

敏捷:素早さ、回避力にも影響する

防御:物理的な衝撃に対する防御力

抵抗:魔法や状態異常に対する抵抗力

運:多くの事象に影響


「いろいろあるんですね。基本的にはゲームで見たことあるようなものばかりですね。それで、これを他者から奪えると…」

「もちろん人からでも魔物からでも奪えるよ。奪えば数値そのまま俺のものになるんだ。あ、さすがにステータス全部写すの面倒だからまた今度ね」


 ちなみに俺も木ノ下さんもレベルは1だ。元の世界の経験は、こちらの世界の経験値に反映されない仕様のようだ。ただし、元の世界に比べて、動きが悪くなっているわけでもなさそうなので、レベル1にもピンキリがあるのだろう。


「はい、大丈夫です。それでゴブリンから奪った分だけ強くなったというわけですね」

「いや、俺らを連行した兵士からも奪ったよ。棍棒持ったゴブリンが剣術や槍術を覚えているわけないじゃん」


 <身体強化>はゴブリンも兵士も両方持っていた。多分、肉弾戦をする奴はほとんど持っているのだろう。

 ちなみに今までスキルを奪った連中のスキルはこんな感じだった(過去形)。


兵士A

LV7

<身体強化LV2><剣術LV1><槍術LV2>


兵士B

LV6

<身体強化LV2><剣術LV1><槍術LV2>


ゴブリン×2

LV3

<身体強化LV1><棒術LV1>

備考:緑色の子鬼。魔物の中ではトップクラスに弱い。


「連れ去られていかれているときにそんなことしていたのですか…。そういえばあの時、進堂君ずいぶん余裕ありましたよね」

「まあ、あの段階で異能に気付いていたからね。呼び出した連中は怪しいと思っていたけど、あの段階で我慢の限界になったからね。城から追い出すだけならともかく、街から追い出して殺そうとした。だから行きがけの駄賃として遠慮なくもらったよ」


 慰謝料代わりだな。いや、許すつもりはないけど。


「じゃああの兵士たちは今、弱くなっているのですか?」

「うん、限界まで奪い去ったからね。石ぶつけたら死ぬんじゃないかな」


 まあ鎧があるから当たり所が悪くなければ平気だろうけどね。あそこまで明確に敵対した相手から奪わないという選択肢はない。その気になれば連行中に兵士を殺すこともできただろう。


「そこまで…」

「いい機会だから伝えておくけど、俺は敵対するものには容赦しないよ。街から追い出される段階で色々と覚悟は完了しているんだ。もちろん敵対した人を殺す覚悟もね」


 しっかりと宣言しておく。この世界で生きる覚悟とは、そういうことだ。


「私はまだそこまではできなそうです。なんでもするって言っておきながらこの有様です…。本当に申し訳ありません」


 木ノ下さんが少し怯みながら言う。そこらの女子高生にいきなり人を殺す覚悟を持たれても困る。魔物を殺すくらいは慣れてもらいたいが、人を平気で殺せるようになってしまったら、元の世界に戻った後に難儀しそうだ。

 俺?俺はまあ、切り替えが早いのが自慢だから大丈夫だろうけど。


「いいよ。そこまでしろなんて言わないから。戦うのは俺の役目だよ。さ、話を戻そうか」

「はい、もう1つの異能、<千里眼>ですね」

「こっちはシステムウィンドウって読むらしい。こいつのおかげでゲーム的に見えるみたいだ。機能としてはステータス確認及び鑑定、マップ確認、ヘルプ機能の3つだね」


 前からゲームのシステムウィンドウって結構卑怯だと思っていたんだよね。


「そんなにいろいろなことが出来るんですか?」

「うん。便利能力詰め合わせって感じだね」


 異世界で生きていくのに必要な情報はこれ1つで大体どうにかなると思う。


「後、最初の2つはさっきまでの話で分かりますけど、最後のヘルプ機能って何ですか?」

「俺が気になったことやわからないことに対しての説明が出るんだ。用語集とQ&Aが合わさった感じかな」

「道理で質問に対するレスポンスが早いと思いました。それだけのことが出来れば、千里眼の名にふさわしいレベルですね」


 木ノ下さんが納得したようにいる。見えないところにカンペを用意していたのと同じだからね。


「すごいですね…。このことを伝えれば勇者扱いしてもらえたんじゃないですか?」

「うーん。無理じゃないかな。連中が欲しかったのはあくまで『祝福ギフトを持った勇者』だったろうからね。それに、かなり早い段階であの国、というか勇者召喚に疑問を持っていたからね。遅かれ早かれ国は出ていたと思うよ。どうせ、学校の連中も洗脳されているだろうし…」

「ちょ、ちょっと待ってください!洗脳って何のことですか!」


 声を荒げた木ノ下さんが、俺に食って掛かる。ああ、木ノ下さんは気付いてなかったのか…。


「いや、洗脳でもされてなければ、俺たちが追い出される前に誰か庇ってくれるはずだろう。友人だって、教師だっているんだぞ?」

「いえ…、私は庇ってもらえる相手に心当たりがなかったもので、そんなこと考えつきもしませんでした。…皆、私がトイレで水かけられていても、見て見ぬふりでしたし…。…教師だって、時々笑っていましたし…」


 木ノ下さんの闇が垣間見えた気がする。今明らかになったいじめだけでも、到底許せるようなものではなかった。それに関しては洗脳とか関係ないわけだし。

 よく見ると木ノ下さんの目からハイライトが消えている気がする。俺の視線を察するとあわてて取り繕う。


「あ、今はもう気にしていません!進堂君がいるから大丈夫です」


 そこで俺を引き合いに出すのはどうなのだろうか。この話をあまり深く突っ込むと碌なことにならなそうなので、元の話に戻す。


「追い出すのはともかく、異世界に転移したのに文句を言ったのは男子生徒1人しかいなかったろ?あれも不自然だ」


 気を取り直した木ノ下さんが納得する。


「そういえばそうですね。あの状況でみんな冷静すぎたと思います」

「あの場では本来、叫んだ男子生徒の反応の方が正常だ。少なくとも誰も追従していないのは不自然だ。王女のセリフがすべて肯定的にとらえられていることも含めれば、洗脳の可能性は非常に高い」

「王女のセリフ…。あっ!」


 何かを思い出したような反応をして、真剣な表情でこちらを見る。


「1つ謝らせてください」


 木ノ下さんはそう言うと、汚れるのも気にせずに正座をした。


「謝ること?急にどうしたの?」

「私が王女に余計なことを言ったせいで、進堂君も追い出されることになってしまいました。巻き込んでしまい、申し訳ありませんでした」


 そういうと地面に手をつき、頭を深く下げた。平たく言うと、土下座だった。いや、ちょっと待って、なんで女子高生が同級生の男子に土下座しているの?


「待って、待って、なんで土下座なんてしているの!?」

「進堂君だけなら、あの場をどうにでもできたと思うのです。街から追い出されるなんて、最悪の状況にならなくても済んだのです。それも全て、私が考えなしに発言したからです。勝手に状況を悪くして、そのうえ泣き叫んでいる私に、進堂君は手を差し伸べてくれました。ですから、これは私からの謝罪と感謝を合わせた、誠意のつもりです」


 頭を下げたまま木ノ下さんが続ける。

 そういうことか。確かに、木ノ下さんの発言で多少状況は悪くなったといえる。


「わかったよ。木ノ下さんの謝罪と感謝は受け取った。でもね、それは大きな問題じゃないんだ。王女たちはどの道俺たちを追い出すつもりだったろうからね。木ノ下さんの発言を利用しただけだと思う」


 木ノ下さんが土下座の状態から顔を上げ、不安そうな表情をする。


「そうでしょうか…」

「うん、間違いないよ。それにもし、木ノ下さんだけ追い出されそうになっていたら、俺も付いていくつもりだったし」


 ここまで理解したうえで、見殺しにするつもりはないしね。針のムシロで生きてくよりは同じ立場の女の子の近くの方がいいし。


「えっ、その、ありがとうございます」


 少し赤くなる木ノ下さん。ああ、ちょっと気障な言い回しになっちゃったかも。


「学校の連中は祝福ギフトがあるから何とかなるだろうけど、木ノ下さんが追い出されたら、生きていくのはかなり難しそうだったからね」

「そうですね。本当に感謝しています」

「せめて、木ノ下さんの異能が開眼してればよかったんだけどね…」

「え?」


 目を真ん丸にする木ノ下さん。あれ?何か変なこと言ったかな。


「進堂君…。私にも異能ってあるんですか?」

「さっき言ったでしょ?異能があるから祝福ギフトがもらえなかったって。それは木ノ下さんも同じだよ」


Q:異能を持っていると祝福ギフトは得られないの?

A:はい。異能持ちには祝福ギフトは付与されませんので、持っていることはあり得ません。ただし、祝福ギフトのない転移者全てが、異能を持っているとも限りません。


 ちなみに、これが質問の回答。ヘルプは便利すぎるな。先生をつけて呼ぼう。

 木ノ下さんが立ち上がり、俺に詰め寄る。


「どんな能力があるんですか!?」

「さあ?」

「さあ!?」


 いや、そんな期待のまなざしで見られても、ステータスに書いてないから…。


「木ノ下さんのステータスも書くね」


 ウィンドウに映る木ノ下さんのステータスを紙に書く。


「はい」


名前:木ノ下さくら

性別:女

年齢:16

種族:人間(異世界人)

スキル:

異能:<???>

称号:転移者、異能者


「他のやつは異能の欄が空欄だけど、木ノ下さんにはハテナが書かれているんだよ。多分まだ異能の性質がはっきりしていないんだろうね」

「そんなぁ」

「大丈夫。いずれ開花するって。少なくともそれまでは絶対に守ってあげるから」

「あ、ありがとうございます」


またしても照れて赤くなる木ノ下さん。青い顔とか泣き顔ばかり見ていたけど、やっといい顔を見ることができるようになってきたな。うん、可愛い女の子の照れた顔はいいものだね。


Q:倒した魔物からは何が得られるの?

A:装備品。部位。魔石となります。多くの魔物には、体内のどこかに魔石を持っています。この魔石は様々な用途のある生活必需品で、買い取りされています。


Q:魔石って何?もう少し詳しく

A:魔物の核です。これを破壊された魔物は死亡します。倒した魔物から魔石をとらないで、放っておくとアンデッドになることがあります。売却時には色と大きさが判断基準になります。基本的に色の濃い物、大きいものが高い金額になります。


 ヘルプ機能によってそんなことが分かったので、そこら辺の石を棍棒で叩き割って、即席のナイフを作り、ゴブリンから魔石を取り出す。こいつを売って路銀を得よう。


「じゃあ行こうか。マップによれば、1時間ぐらいの場所に村があるから」

「マップ。便利です」


 わかってもらえて嬉しいよ。出来れば暗くなる前に次の村につきたいな。腕時計を見ると17時くらいだ。時間や季節が一致しているとしても、日の入りまで1、2時間だ。多分間に合うだろう。


 そういえば、俺のステータスちょっと端折りすぎたな。もう少し詳しく書くとこんな感じ。


名前:進堂仁

性別:男

年齢:17

種族:人間(異世界人)

スキル:<身体強化LV3><剣術LV2><槍術LV3><棒術LV1>

異能:<生殺与奪ギブアンドテイクLV1><千里眼システムウィンドウLV-><???><???><???><???><???>

称号:転移者、異能者


まあ、異能が7つあるくらい、誤差みたいなもんだよね。

20150726改稿:

Q&Aの冗長な部分を削除。


20150911改稿:

修正(6)の内容を適用。

+注意+
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