香港の駅を覆面集団が攻撃、通勤客を殴る 45人が負傷
香港の元朗区で21日午後10時半ごろ(日本時間午後11時半ごろ)、棒を持った複数の男たちが駅を襲い、利用客45人が負傷した。うち1人が重体となっている。
白いTシャツ姿の男たらはマスクを付け、プラットホームや電車内にいる利用者を次々と攻撃した。この様子はソーシャルメディアで拡散された。
この日は犯罪容疑者の中国本土への引き渡しを認める「逃亡犯条例」の改正案に対する大規模な抗議デモが行われ、警察が催涙ガスやゴム弾で参加者を排除する場面も見られた。
駅を襲った集団の身元や動機などは明らかになっていない。
政府は声明で、元朗区で「香港MTRの駅や電車内に人が集まり、通勤客を攻撃した」と説明。
「法治主義を掲げる香港社会で認められる行為ではない。特別行政区政府はあらゆる暴力を強く非難し、法的措置を取る」と述べた。
香港警察も「複数人がMTRの元朗駅と電車内で通勤途中の市民を攻撃し、負傷者が何人も出た」と発表した。
一方でソーシャルメディアでは、警察への不信感を示す声もある。
香港の英字紙サウスチャイナ・モーニング・ポストの盧建霊記者はツイッターで、「香港のデモ参加者が疑問に思っているのはただひとつ、警察はどこだ?」、「Tシャツ姿の男たちはデモ参加者を襲うように命令された暴漢だと伝えられている」と投稿した。
元朗区は香港の中心部からは離れており、この日に警察とでも参加者が衝突した上環地区からも遠い。
香港はかつて、150年以上にわたってイギリスの植民地だったが、1997年に、「一国二制度」の下に中国に返還された。そのため、返還から50年は「外交と国防問題以外では高い自治性を維持する」ことになった。
香港市民には、言論の自由や表現の自由など、中国本土ではみられないような権利が保障されている。
しかし、「逃亡犯条例」の改正案が通った場合、中国政府による香港統治が迫り、その高度な自治性が維持されなくなるのではないかという懸念が高まっている。
香港政府は6月半ばに改正案の審議停止を決めたが、その後も完全撤回や林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官の辞任などを求める抗議デモは続いており、そのうちの何回かは警察との衝突が起きている。
21日のデモでは暴力沙汰も
21日のデモには主催者発表で43万人以上、警察発表で13万8000人が参加した。
参加者は当初、政府機関が集まる中環地区へ行く予定だったが、湾仔(ワンチャイ)付近で止まるよう指示されたという。
その後、一部の抗議者がルートを変えたことで、約4000人の武装警察が出動。催涙ガスやゴム弾で排除に乗り出した。警察に物を投げた参加者は逮捕されている。
また、中国政府の出先機関の建物に卵が投げられたほか、「中国が平和的な行進が無意味だと教えてくれた」などの落書きがされた。
警察支持のデモも
20日には一連の民主派デモに反対し、警察を支持するデモが行われた。警察発表で10万3000人、主催者発表では30万人以上が参加したという。
このデモは「守護香港(香港を守れ)」と名付けられ、サウス・チャイナ・モーニング・ポストによると香港市民のほか、中国本土からの移民や少数民族、中国からの訪問者などが参加した。
中国メディアも、警察を支持し、民主派デモで起きた暴動を非難する内容でこのデモを取り上げた。