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【社説】

小党が比例議席 少数意見にも耳傾けて

 参院選の比例代表では、国政初挑戦の二つの政治団体がそれぞれ議席を得た。「政治の安定」が声高に叫ばれ、少数意見は軽視されがちだが、もっと耳を傾けるべきだ、という国民の声ではないか。

 参院選投開票から一夜明けたきのう、自民党の安倍晋三総裁(首相)は記者会見で、参院選結果について「安定した政治基盤の上に新しい令和時代の国造りをしっかり進めよとの力強い信任をもらった」と強調した。

 自民、公明の与党と日本維新の会などの改憲勢力は参院で改憲発議に必要な三分の二を割ったが、与党は改選過半数を確保し、参院での過半数を維持した。

 首相は「政治の安定」こそが自らの使命であり、参院選の争点だと言いたかったのだろうが、それを名目に少数意見が軽視されることがあってはならない。

 今回、比例代表で「れいわ新選組(れい新)」が二議席、「NHKから国民を守る党(N国)」が一議席を獲得した。政党要件を持たない諸派が比例議席を得たのは現行制度下で初めてだという。両党は得票率2%を上回り、法律上の政党要件も満たした。

 れい新は消費税の廃止を公約の第一に掲げた。「紙おむつからダイヤモンドまで同じ税率なんておかしすぎる」という主張だ。N国は、NHK受信料を支払った人だけが視聴できるよう「スクランブル放送」の実現を訴えた。

 大政党では実現不可能と見向きもされない主張だろうが、それぞれ一理ある。両党が議席を得たのは、多数決原理の下で少数意見を切り捨てるなという民意だろう。

 今回の参院選でれい新、N国両党が議席を得たのは、死に票を極力減らして、多様な民意を吸い上げる比例代表の利点でもある。

 平成の政治改革は、衆院への小選挙区制導入など、民意を集約して黒白をはっきり付けることに力点が置かれ、多様な意見は切り捨てられる方向にあった。

 参院選の都道府県選挙区でも、改選数一の「一人区」が三十二にまで増えた。衆参の「小選挙区」化が、多様な意見の切り捨てを加速させてはいまいか。

 参院選挙制度は、一票の不平等解消を含めて改革が急務だ。今回から導入された「特定枠」も問題点が多い。抜本的に制度を見直し、多様な民意をより反映できる制度を目指したらどうか。

 少数意見の中にこそ、社会変革の芽が潜む。それを尊重することこそが民主主義の要諦である。

 

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