早野龍五先生らの論文修正。”1/3”の理由。

早野先生が情報発信されましたね。70年累計線量を1/3にしてしまった理由は、3ヶ月間測定した線量記録から算出した線量率を、中央月にプロットした後、積算するときに、その中央月の線量率だけ考えていて、残りの2ヶ月分を積算し忘れた、というものです。なるほど、この3という数字は放射線管理者ならばピンとくる数字です。今回はこの話題提供をしたいと思います。

尚、他にもデータの取扱の疑問点が残っているようですが、なにせ今週から月末までは、博士論文、修士論文、入試などなど学務が目白押しで(というのをいいわけに)、議論に追いつけておらず、、、(この文章も一気に書いたので大丈夫かな・・・)

放射線障害防止法では、放射線従事者の被ばく量(個人線量)を3ヶ月毎と1年間の両方を算定することとしています。よって、放射線業務中に身につける個人線量計(ガラスバッジ)は3ヶ月に一度、年間4回交換することになるわけですね。加えて、その3ヶ月とは、4月をスタートとすることが決まっていますので、4-6月、7-9月、10-12月、1-3月と決まっています。この3ヶ月毎と年間の被ばく記録は所属機関に永年保管されます。こうした業務で利用されるガラスバッジを今回は住民の方に配布し測定したとのことなので、記録としては3ヶ月と年間の線量結果があるのでしょう。

この話だけだと、「3ヶ月がルーチンならば、慣れている人ならば間違わないのでは?」と思われがちかもしれません。実は、多くの機関が実際は毎月測定しています。つまりガラスバッジを毎月し、記録は12ヶ月分とります。これは、妊娠可能女子は毎月測定することが求められていることからです。男女を分けて管理するのはなかなかに複雑になるので、結局全員を毎月測定することとする機関が多くなります。もちろん、安全管理上も毎月の方が3ヶ月毎よりもよいですね。この点は男女差別?がやや問題となっていて、妊娠する意思がない場合は男子と同じ3ヶ月でもよいとするかどうかなど議論があるときいていますが、運用上は男も含めて毎月測定でいいんじゃないの?という雰囲気です。ところで、なぜ女子だけ毎月の算定が必要なのか。これは、妊娠が判明してから出産までの胎児の線量を1mSv以内とすることが求められているからでして、ここでも、1mSvという値がでてきますね。話を戻すと、毎月ガラスバッジを交換することになれていると、「毎月測定値を記録することが必要なのね」と思っている放射線従事者は結構多いのではないでしょうか。今回のミスの背景には、ガラスバッジは毎月交換するからデータも毎月のもの、という意識があった可能性は十分考えられるなぁと思った次第です。(的外れならすいません・・・)

前回申し上げていた、どの値が3倍になるのかな?という疑問の答えは、「全部」ということになりそうです。その結果、NHKニュースによると平均的な一生涯の被ばく量を18ミリシーベルト以下としていましたが、別の研究者から疑義が寄せられたため調べたところ、計算プログラムのミスが見つかり、実際はその3倍程度の50から60ミリシーベルトだったということです。」とのこと。この生涯とは70年ということなので、70年で18mSvが70年で50-60mSvという修正です。放射線従事者は5年100mSvが線量限度なのですが、これはいわゆる職業被ばくでメリットがあるから放射線を使う上でのやむを得ない被ばくです。一般公衆とは分けて考えるべきでしょう。一方で、人間という生物を考えて見ると放射線業務従事者も一般公衆も同じ人間ですね。その生物という観点からみると、70年60mSvという値は安全と見ることができるかな、と私は思いました。とはいえ、この60mSvは毎年均等に来るわけではなく、最初ほど高く、後ほど低くなっていくわけですので単純に70年で割り算してはいけませんね。注意が必要です。


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