「盲腸憩室穿孔痛」と書いて「もうちょうけいしつせんこうつう」と読む。よくわからないが、おなかが猛烈に痛そうだ。
「痛そうじゃなく、痛いんです! 最初は胃薬を飲んだんですよ。少し楽になって福岡に移動したら、今度は右の下腹が痛い。十二指腸かと思ったらすぐに手術しましょうって。今回、僕は教訓を得ました。それは痛かったらすぐに病院へ行け!」
14日に緊急開腹手術を受けた荒木2軍内野守備走塁コーチはすっかり元気になり、21日に退院した。ソフトバンク・中田や偶然、福岡遠征だった阪神・福留、森越が見舞ってくれたという。
今回は問答無用で手術室に運ばれた荒木コーチだが、5年前には手術を拒んだことがある。2014年5月29日のオリックス戦(ナゴヤドーム)で死球を受け、右手人さし指を骨折した。翌30日に出場選手登録を抹消。医師からの手術勧告を2度はねつけ、46日後に1軍に戻った。
「手術すれば治るのはお盆すぎって言われていました。1カ月は早まったことになります」。5年前のことを聞いたのは、高橋のことがあるからだ。こちらは右小指の「橈側側副靱帯」書いて「とうそくそくふくじんたい」と読む。医師は修復手術を勧めたが、高橋は早期復帰が可能な保存療法を望んだ。
「周平とは指が違うし、僕はじん帯は大丈夫だった。同じにはできないですが、気持ちはわかります。その選択が正しかったと思えるよう、コーチとしてしっかりサポートしたいですね」
根性と冷静。今季と将来。どちらも大切だ。高橋には好調な個人成績だけでなく、主将としての責任感もある。この日、復帰先発にこぎ着けた笠原もそうだが、見る側が想像するよりもプロ野球選手は肉体を削っている。ただ、一流は必ず最後の一線ではブレーキを踏める。荒木もそう。そして高橋もその一人だと思っている。