トップ > 中日スポーツ > 大相撲 > 紙面から一覧 > 記事

ここから本文

【大相撲】

遠藤、炎鵬、照強、友風に感謝

2019年7月22日 紙面から

◇北の富士評論「はやわざ御免」

 名古屋場所が終わった。今年は15日間が長く感じられ、いつもの場所より疲れたみたい。原因は天候が悪かったこともあると思う。

 私はどちらかといえば、夏は暑いほうが好きである。じめじめ梅雨が続くと体調が悪くなる。それは現役時代も同じで、おそらく成績も良くなかった。優勝は確か1回だけで、引退も名古屋であった。

 かといって、名古屋が嫌いな訳ではない。古い友人もいるし、錦へ飲みに行くと、30年前に出会った女性に会ったり。ゴルフ場は近いし、食い物もうまい。この時節は、日本中梅雨である。今年は特に長梅雨でセミが鳴いているのを聞いていない。毎年うるさいほど鳴いているセミの声が聞けないのは、物足りないし名古屋場所らしくなかった。

 そこでお約束の句も発表します。昨日は炎鵬の勝ち越しを祝った一句。それでは千秋楽を終えた今の心境です。

 「鳴くセミの 声も聞かずや 名古屋場所」。どうかな?

 多少はうまくなってはいませんか。何? 下手くそ。思えば平成元年の名古屋場所では「千代北勝 どちらが勝っても 俺の弟子」。2人で優勝決定戦を演じた折の句であります。この句に比べると、長足の進歩ではありませんか。それでは今場所を振り返りましょうか。

 両横綱が千秋楽まで優勝を争ったのだから、一見では、めでたしめでたしだが、大関が全員休場。御嶽海を筆頭に次期大関、横綱候補たちの伸び悩み。立ち合いの乱れ等々、問題は山積していた場所であった。

 遠藤、炎鵬、照強、そして友風たちの健闘がなかったら、今場所は、最悪の場所で終わっていただろう。特に炎鵬は小兵ながら、あくまでも正攻法の相撲に徹し、満身創痍(そうい)の体で奇跡的な粘り強さを何度も見せてくれた。これが日本人の琴線に触れ、女性ファンの紅涙を絞る。文句なしの人気力士ナンバーワンとなった。くしくも同郷の遠藤の人気にも似ている。来場所は、この2人が対戦することになる。大変な騒ぎになること必至である。

 その炎鵬と遠藤が技能賞とは願ってもないことではないか。照強も敢闘賞を受賞。12勝はすごい。普通なら、もうひとつもらっても良いくらいである。

 友風も鶴竜を破り、殊勲賞。見事な働きであった。学生時代は無名だったと聞く。それが負け越しもなく幕内に上がり、この成績は立派の一言だ。

 北勝富士もよくやった。千秋楽の遠藤との一戦は、後の語り草になるほどの名勝負であった。阿炎も勝ち越しは立派だが、千秋楽の立ち合いの変化はいただけない。若い者がやることではない。

 しかし、体が大きくなり、突っ張りも強くなってきているので、将来性は十分にある。

 以上、頑張ったのはこれくらいだろう。私の62年目の名古屋も何とか終わった。しかし疲れた。とうとうきしめんも食べられなかった。女の子のお尻にも・・・もうそんな元気はどこにもない。

 ひどい最後の原稿だが、お許しを願います。今年も「親方のコラム読んでるよ」。この声に励まされました。

 ありがとう。そしてさようなら。また秋場所で。今8時半。まだ飯は食ってません。腹減った。 (元横綱)

 

この記事を印刷する

閉じる
中日スポーツ 東京中日スポーツ 中日スポーツ 東京中日スポーツ 中日スポーツ購読案内 東京中日スポーツ購読案内 中日スポーツ購読案内 東京中日スポーツ購読案内 中日新聞フォトサービス 東京中日スポーツ