@chablis777
シャブリ

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はい 1963年 昭和38年の夏になりました。
(堀内)来たぞ! 来た! 来た…!
(なつ)1本の長編漫画映画を作るのに大体 10か月はかかるんです。
1年近くここにいるアニメーターの人たちは同じキャラクターを描き続けることになるんです。
なつは 26歳。
東洋動画初の原画を担当する女性アニメーターになっていました。
映画は 1秒間に24コマです。
私たちが作っているフルアニメーションと呼ばれるものは 12コマ以上少なくとも 12枚の画が必要になります。
絵が生きているように見えるあの繊細な動きはそこまで細かく絵を動かさなければ作れないんです。
漫画映画は気の遠くなるような作業なんです。
(記者)その基礎を作る原画は責任重大ですね。
原画というものは 何と言ってもキャラクターに 最初に命を吹き込む大事な仕事ですから。
じゃ ちょっと描いてみてもらえますか?
あっ… はい。
奥原さんの これからの夢って何ですか?
夢?
それは もちろんすてきな漫画映画を作ることです。
子どもが夢中で… それこそ夢を見ているように それを見てそれが 大人になっても さめない夢になっていればいいななんて思います。
今の私が 北海道を出て7年そんなふうに 子どもの頃の夢を見続けているようにです。
(記者)なるほど。それは まさに すてきな夢だ。
こちら向いた写真も頂けますか?はい。
じゃ ちょっとカメラ見て…右手に…。あ~ いいですね。じゃ それでいきましょう。
(シャッター音)(記者)ああ かっこいい!
♪~
♪「重い扉を押し開けたら暗い道が続いてて」
♪「めげずに歩いたその先に知らなかった世界」
♪「氷を散らす風すら味方にもできるんだなあ」
♪「切り取られることのない丸い大空の色を」
♪「優しいあの子にも教えたい」
♪「ルルル…」
♪「口にする度に泣けるほど憧れて砕かれて」
♪「消えかけた火を胸に抱きたどり着いたコタン」
(亜矢美)あ~! うわ~!かっこよく写ってる!
いや~ この服でよかったかな…。
いいよ いいよ。 できる女って感じよ。
何か目立ちたがり屋みたいじゃないですか。
今更 ハハハ…!
だけどこんなに買って どうするんですか?
あっ 売るんだよ ここで。えっ?
だって 欲しいってお客さんいっぱいいるもの。
誰がいるんですか?あ~ 茂木社長とか。
本屋じゃないですか。あっ 社長のとこから買ったんだ。
アハハハ…。ここで売ったら 営業妨害になりますよ。
(亜矢美)あっ そうだ 北海道のご家族にも送ってさしあげないとね。
まあ そうですけど…。
あと 信さん。あれ 今どこにいんだっけ?
札幌の放送局です。あっ そうか まだ北海道か。
あと ほかに 送りたいとこある?
千遥に送れたらいんですけどね。
千遥ちゃんか…。
うん… いや きっとどこかで見てるって。知ってるんでしょ?
漫画映画を作ってることは…。
だったら 絶対この記事だって見てるって。
えっ そうでしょうか…。
(レミ子)こんにちは。
(咲太郎)おう 母ちゃん。あら 珍しいね。 どうした? こんな早く。
今日は レミ子の新しい仕事が決まってここに来たいって言うからさ。
ハハ…レミちゃん 今日も全部?あっ 全部。
お兄ちゃん これ。
おお これか! 出たか!
咲太郎の声優プロダクションもなんとか形になって今は 四谷という場所に事務所を構えています。
レミさん また新しい仕事 決まったんだ。
おめでとう。男の子の声ばっかりだけどね。
レミ子は もう うちの貴重な戦力だよ。
なっちゃん。うん?雪次郎とは 最近 話してるの?
雪次郎君と?雪次郎君も 仕事は順調なんでしょ?
雪次郎君も 努力のかいがあって吹き替えの当たり役を得ました。
全体的に ゆっくりなんですよね これね。(蘭子)はい。
何か セリフ足しましょうか。はい…。
(雪次郎)じゃあ… 「あなたも私も」って足したらどうですか?
「おいしく作れた方が今日は 夕食を作るの。あなたも私もおいしいものが食べたいでしょ」。
いいかも… あっ どうですか? 藤井さん。お~ いいね ハハハ。
小畑 さえてるじゃないか お前 ハハハ…。
(蘭子)「分かったわ。どっちが夕食を作るか料理で決めましょう」。
(雪次郎)「ナンシー一体 何の話をしてるんだい?」。
(蘭子)「おいしく作れた方が今日は 夕食を作るの。あなたも私もおいしいものが食べたいでしょ」。
「はあ… どっちが勝ったとしても2人とも もう十分おなか いっぱいになってるよね」。
アメリカのシチュエーションコメディー「ビューティフル・ナンシー」で気の弱い夫の声を演じています。
気の強い妻役の亀山蘭子さんと共演を果たした この番組は大人気となりました。
どうも 劇団で妙なうわさが立ってるらしいんだ。
うわさ?うん。雪次郎君の?
うん。 あの亀山蘭子と雪次郎が恋仲になっているとか。
えっ! うそでしょ?劇団の中じゃすっかり事実として扱われてるわね。
えっ でも 本当じゃないでしょ?ああ それは分からない。
雪次郎の本音をなっちゃんに聞きたかったのよ。
いや 私だって分かりませんよそんなこと。
劇団の恋のうわさっていうのはまず当たってるんだよ。 な 母ちゃん。
まあね。そういうとこは 昔っから変わんないわな。
なつの職場は そんなことないか?
ある。 いや だけど…。
(ノック)
・(雪次郎)はい 開いてるよ。
何だ なっちゃんか。
元気?どうしたの?
借りる。うん。
う~ん 実はね… これ。週刊誌?
私が取材を受けて これに載ったんだわ。
えっ 本当かい!どれ どれ どれ どれ どれ どれ どれ…。
どこ どこ どこ?
ここ。うわ~!
こんなに でっかく載ってますもね!
かっこいいな!これ 柴田牧場の人たち 知らせたのかい?
それは まだ これから。恥ずかしくてさ…。
すぐ知らせなきゃ!うちにも知らせるわ これ買うようにって。
いや これ 帯広でも買えるべな? これ。うん 多分…。
ねえ 演劇は? 楽しくやってんの?
えっ? 何で そんなこと聞くんだ?
うん…。
何か聞いたのか?咲太郎さんや レミちゃんから…。うん。
俺と蘭子さんのことだべ?
まあ そういううわさになってるのは知ってる。うん。
でも 何でもねえんだ。
あっ そうなの? 何だ…。
なっちゃん。
俺はな あの人に 早く追いつきたい。
俺の中に強くある思いは 魂はやっぱり そこなんだわ。
なっちゃん… 好きだ何だとそったらこと言ってる場合でねえんだ。
そう…。うん。
芝居が好きなように俺は 蘭子さんが好きだ。
うん。 何か安心した。何に安心したんだ?
雪次郎君は 昔の雪次郎君のままだから。
昔のように セリフは なまんねえよ。
んだな。んだ。
(笑い声)
あっ 写真の方が美人だな。はい?
♪~
おはようございま~す。
(一同)おはようございます!
(堀内)「夢を見続けていたい。 奥原なつ」。
もう… ちょっと やめて下さいよ!
そんなことするために わざわざ1冊ずつ買ってくれたんですか!?
(仲)なっちゃん おはよう。おはようございます。
よかった 仲さんまでしてなくて。
今日10時に 会議室に来てくれる?大切な話があるんだ。
はい。 分かりました。
仲さんは 今や 会社の中間管理職作画課長になっています。
あっ はんこじゃなくて大丈夫です。本当に?
(茜)私も呼ばれてるのよ そこに。
あっ 茜さんも?
大切な話って 何だろうな。(神地)あれじゃないの?
今度 茜ちゃんと競争させようってことじゃ?
何の競争よ。
ほら 美人アニメーター!マコさんの時みたいに。
マコさんと そんな競争した覚えはない!
(神地)冗談だよ…。もう… あんまり調子に乗ってるとそのうち冗談じゃ済まされなくなるからね。
(下山)でも あれじゃないの?
もしかして…。あれ?
♪「空をこえて ラララ 星のかなた」
♪「ゆくぞ」
(仲)今年の1月から手塚治虫さんのプロダクションが製作してる「鉄腕アトム」がテレビで放送されてることは知ってるね。
(茜 なつ)はい。(仲)その「鉄腕アトム」がテレビ漫画として大ヒットしてる。
そこで うちでもテレビ用のアニメーションテレビ漫画を製作するテレビ班を作ることになったんだ。
なっちゃんは 原画として茜ちゃんは 動画としてそのテレビ班に行ってもらいたい。
君たちには 長編映画を外れてテレビ漫画に専念してもらいたい。
もう映画には関われないんですか?
今は 東洋動画らしくこのテレビ漫画を成功させることが何よりも先決なんだ。
坂場君は このテレビでようやく 演出家として世に出られることになった。君たちの若い力に期待してるよ。
(山川)放送は 今年の12月からだ。企画は ここにいる猿渡君から出たもので彼にも 原画を描いてもらう。
題名は「百獣の王子サム」と決まった。
「百獣の王子サム」?
(猿渡)舞台は 架空のジャングルです。そこに ライオンに育てられた人間の少年が一人いるんだ。
姿形は人間だから動物たちからは 差別を受けるわけね。
その少年 サムがさまざまなトラブルを解決していってやがては 百獣の王の子として動物たちから認められるようになる。そういう話ね。
面白そうですね。(猿渡)でしょ!
猿渡さん いつの間にこんな企画を考えてたんですか?
僕は テレビをやりたかったからねこっそり企画を出してたんだよ。
あの 仲さん一つだけ聞いてもいいでしょうか?
(仲)うん。 何?
東洋動画らしくというのは「鉄腕アトム」とは 違うやり方で作れっていうことでしょうか?
いや… 「鉄腕アトム」と同じやり方で作らなければテレビでは成立しないだろうね。
低予算で しかも 時間もない中で作ってあれだけヒットさせていることに「鉄腕アトム」の価値はある。
そうですか…。
(坂場)仲さんはあれをアニメーションだと認めていますか?
(仲)えっ?僕は 少なくとも東洋動画らしいアニメーションの作り方だとは思えません。
仲さんは どう思っていますか?
もちろん あれはフルアニメーションではないと思っているよ。
それでも 作る価値があると思いますか?
イッキュウさん…。
なつよ 新しい時代の波が押し寄せてきた。
君は その波に翻弄されるのか?
それとも乗るのか?


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