やられている側は、天敵の穴を血眼で探すものだ。山井はDeNAに3年越しの5連勝。今季の2度の対戦は、先発野手8人のうち左打者を4人使ってきたラミレス監督が、今回は右打者を6人並べた。昨季まではなかった山井の傾向に着目したからだ。
左打者には非常に強いが、右打者には弱い。敗因となった3回の集中打。4安打はすべて右打者に打たれた。これで左打者の被打率1割4分6厘に対し、右打者には3割2分1厘。10試合投げての結果には、原因があるはずだ。
「うーん…。同じことは繰り返してはいけないし、策はあります。修正しようとしているところはもちろんあります。ただ(その内容は)答えたくないですね」
山井ほどの経験があれば、左に強い理由も右に苦しむ原因も察しはついている。空いた穴は自力で埋める。それが1年間に何度も同じ相手と戦うプロスポーツ界で生き抜く術である。
野球でよく言われる「右対右」「左対左」の論理は、誰もが怪しさも感じつつ脱却できない。ラミレス監督が乗ったのは、データ好きなのもあるが策をためらっていては天敵を倒すことなどできないからだ。今季初先発だが、救援なら23試合の登板があった石田にも、チェンジアップを操る左腕特有の逆転現象がある。この球種の使用率がガクンと減る左打者には、被打率も悪くなる。3点を追う5回、2死一、三塁。山井に代打を送り、勝負に出た。選んだのは藤井。今季の右打席は非常に好調だが、最後はチェンジアップで空振り三振に倒れた。
「たとえ相手が左打者が嫌でも、その左打者が左投手を得意とは限らないじゃないか」。もちろん、この意見は正しい。ただ、中日のベンチには起用が少ないながら「左に強い左打者」がいる。12打数6安打の井領。石田を打てたかはわからないが、僕は5回のチャンスに「あえて井領」を妄想していた。