谷田氏:26人の中には、30代から60代までいます。会社から受け取る報酬は全員が増えました。社員時代に会社が払っていた社会保険料や通勤交通費は報酬に含めて払っています。あくまで現時点での試算ですが、タニタの厚生年金と同じ水準の民間の保険に入った場合の支出を加味しても、独立した人の手取りは増えました。
なぜなら、制度の狙い通り、社外からの仕事を請け負ったり、従来、自腹で受けていたスキルアップの講座などを経費扱いにできたりすることが手取りの増加に寄与したからです。
当社から新たな仕事を頼むときは、明らかにこれまでの業務と違えば「いくらくらいで追加業務としてお願い」というやり取りが行われています。これまでは残業で対応するなど、無理をしてやっていたものに対して、きちんと報酬が出るやり方が浸透し始めています。
仕事を頼む方からすると、残業が必要になるなどの事情で社員に頼めない業務を、きちんと報酬を提示したうえで個人事業主に頼むことができるようになりました。また、そういう新たな業務は、本当に必要か、第三者に頼んだ方が安いんじゃないかといった仕事の見直しにもつながるのです。仕事の価格の相場観を持つことにもつながります。
人員削減のための制度ではない
谷田氏:会社には仕事がたくさんあります。従来の仕事が減ったとしても、上司に当たる人が新しい仕事を委託することになるし、本人から「この仕事をやりましょうか」と提案することもできる。主体的に働くことになるのも、この制度の目的の1つです。
谷田氏:そう感じる人もいるでしょうが、違います。だって、それが目的ならこんな回りくどいやり方はしません。
谷田氏:6月にこのテーマで本を出版し、知人や取引先の経営者に配っているのですが、驚きました。私としては、「こんな組織の活性化の方法がある」というふうに受け止めてもらえるかなと思っていたのですが、まず勤怠管理をきちんとしていないから、残業削減すらまだしていない企業が多かった。私は、世の中はもうそんなことは当たり前に取り組まれていて、次の段階として組織活性化が課題だと思っていたのですが、現状はそうではなかったようです。残業削減を訴えるお役所は正しかったんだと思いました(笑)。
でも、間違いなくこれからは残業削減だけでいいのか問われると思います。その1つの方策として、私たちはチャレンジを始めました。今のところ、うまくいっていると私は思っています。2021年春に入社する新入社員は、全員が個人事業主になることを前提として採用するつもりです。その頃には、この制度の白黒がつくでしょう。
コメント11件
渡世人
定年で退職した人だけなら分からないでもないけど
こんなのどう考えても単に奴隷を増やしたいってだけだろ
私企業であっても社会の公器の一部である事を認識しろ
読者の端くれ
ギグ・エコノミーと言われている形態でしょうか、これは?働き方がこちら側へ進んでいるという話もありますが、すでに問題点も指摘されてますね。
クレンザー
>個人に業務委託することで、上下のある会社の雇用関係という人間関係から、フラットで働ける組織になります。
下請けいじめのような情報が散々流れてる時代に言えることでしょうか?所詮、発注が上で受注が下ってのはありますよ。
釣本直紀
無職
恐ろしい手法を思い付くものだと感心する。
確かにこれは単なる人員削減ではない。好景気の時にはタニタにとって利点は少ないかも知れない。
しかし不景気の時には人件費を簡単に節約できる。正社員の解雇に比べて事業委託契約の継続拒否は簡単だから。
3
年ルール、5年ルールが作られて扱い難く成った派遣社員に代わる雇用の調整弁として編み出した手法だろう。
...続きを読む社員からすれば転職先の補償された退職でしかない。
自分の元後輩から「おたくは業務成績が悪いので当社との契約は今回限りです」とか言われるぞ。
自営業主は労働基準法の対象外だし、過労で体を壊したり通勤途中で事故に遭っても労働災害補償保険をタニタは払ってくれないし。銀行や賃貸住宅からの信用も下がるし。
派遣社員制度と同じでその働き方が望ましい人はいるだろうけど、基本的には会社が一方的に得するだけだな。
ほたて
デザイナー
綺麗事が並んでいるが、欲しがってるのは首の切れる奴隷
欧米的な雇用設計自体は悪くないと思うけど、国内で運用されるのは主従関係を強いたハラスメントの温床でしかない
いかにも世襲社長がやり手をアピールしたくて思いつきそうなやつだ
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