Hさん(お名前はイニシャルにさせていただきます)が、わたくし糸柳寿昭からのセクシャルハラスメントにより苦しんでいらっしゃるとうかがい、大変驚きました。
ただいまHさんのファンの方々から出版社、テレビ局、書店等に怪談社のイベントや中止や活動の停止を求めるメールが殺到しており、その対応を検討するため各社担当者や弁護士と相談のうえ、一時的にツイッターを非公開にしておりました。
Hさんのファンの方々はもちろん、怪談社がお世話になっている皆様にも多大なご迷惑とご心配をおかけしております。誠に申しわけございません。
わたし自身はセクシャルハラスメントにおよんだ自覚はありませんが、Hさんがそうお感じになったのであれば、ほんとうに申しわけなく思っております。
この場でHさんにお詫びを申しあげるとともに、事の経緯を説明させていただきます。
経緯を記すにあたっては、その場で起きたことのみ書かせていただきます。わたしの言動についての理由は記しますが、あくまで主観的なものとして受けとっていただければと思います。
今年の初頭にフリーランス編集者の品川亮さんから、誠文堂新光社から『マンガでわかる怪談入門』という書籍のコンテンツとして「怪談話芸」に親しむためのレクチャーをしてもらえないかと、問い合わせをいただきまました。
品川さんとは初対面でしたが、お世話になっている文芸評論家の東雅夫さんからのご紹介ということもあって、お引き受けしました。
本のコンセプトが、女性ふたり(作画を担当されたKさんとHさん)が東雅夫さんの手ほどきのもと怪談の知識を深めていくというもので、レクチャーを受けるのもそのおふたりでした。
レクチャーの回数は3回。KさんとHさんそれぞれに怪談をご用意いただき、それをブラッシュアップしていく予定でした。
品川さんと日程を調整し、初回は2月7日に新宿にある珈琲西部の個室にておこないました。 参加されたのはHさんと作画のKさん、東さん、品川さん、新文堂新光社の編集の方。講義の内容は録音し、資料として活用するとのことでした。
座学は東雅夫さんにおまかせして、わたしは実際の語りをおふたりに手ほどきさせていただきました。最初は朗読をしていただき、おふたりの声や語りの特徴、癖を見ていきます。
Kさんは緊張からかテンポが速く息継ぎをせずに語りますが、声色を変える努力や手を動かすことで走りすぎるリズムを抑えようとしているようでした。
Hさんは静かな語り口で、息継ぎのポイントを探しながら文面を正確に読もうとされていましたが、胸の下に手をやりじっと動かさない癖がありました。それを踏まえて、それぞれにご用意いただいた怪談を練習する際に、コツや直す部分を指摘しました。こうして初回のレクチャーは終了しました。
2回目は2月14日、誠文堂新光社。参加されたのはHさんとKさん、品川さん、そして新文堂新光社の編集の方。最初の30分ほどは前回練習した怪談をたがいに語りあい、次にふたり同時に話していただきました。そこから個別に語りのレッスンをしていきます。
Kさんは生き生きした表情で語彙が豊富になり、感情の表現も強くなっていました。Hさんはまわりを見る余裕が出て、語りに表情をつけられるようになってきました。
ただ胸の下に手をやりじっと動かさない癖のせいで声に力みがあり、手や腕を使ったより豊かな表現ができないでいました。わたしは癖を意識させることで、その癖を解消しようと考えました。問題のセクシャルハラスメント発言はその際のものです。
Hさんの力みや緊張は、胸の下に置かれた手に原因があるように思えました。Hさんご自身はその癖に対して無意識だったようですが、力みがあると発声がうまくできません。
無意識の癖をなくすには、その癖自体をあえて強調する方法があります。たとえば語りはじめに「あー」とか「えー」という癖がある方は、わざと「あー」や「えー」をつけて語っていただく。無意識の癖を意図的におこなうことによって自覚させ、癖をなくしていくのです。
Hさんにもこの手法を取りました。5か月前のことですので記憶は曖昧ですが、その際に「おっぱいを触らないで」と言い、両手の位置を変えるようお願いしました。
「癖がなおせないなら、わざとやればいい」といったことも伝えました。Hさんにとっては、それがセクシャルハラスメントに感じられたようです。そのため3回目のレクチャーは中止になりました。経緯としては以上です。
Hさんはわたしの発言に苦しみ、大変つらい状態にあったとうかがっております。このツイッターでもジョークのつもりで軽はずみな発言をしておりましたが、今後はみずからの言動に注意し、二度とこのようなことのないよう肝に銘じます。
本来ならばHさんにお目にかかって謝罪すべきですが、それができない状況ですので、この場を借りて心よりお詫び申しあげます。
ほんとうに申しわけございませんでした。
糸柳寿昭