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俳優・清原果耶さんと「毒」

次世代を担う俳優として注目される清原果耶さん。彼女が現在放送中の「連続ドラマW 湊かなえ ポイズンドーター・ホーリーマザー」(WOWOW)に出演しています。原作は期待を裏切らないイヤな気分になるミステリー、いわゆるイヤミス作品にどう向き合ったのか。ご本人に話を聞きました。
(文・坂口さゆり 撮影・小原雄輝)

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清原果耶さんの名前の由来をご存じだろうか。
カヤは「もののけ姫」の主人公アシタカを思う幼なじみの名。スタジオジブリ作品が好きなご両親が付けたと言う。漢字はココナツ、椰子(ヤシ)に由来している。「なんとも平和な名前ですよね」と笑顔で教えてくれた。

今回清原さんがWOWOWの「連続ドラマW 湊かなえ ポイズンドーター・ホーリーマザー」の第3話「罪深い女」で演じるのは、そんな平和な果耶という名前とは対局にあるかのようなまさに罪深い、天野幸奈という女性だ。

幸奈は警察に、ショッピングモールで連続殺傷事件を犯した黒田正幸の知り合いであり、事件は自分のせいだと語り始める。幸奈はかつて、母親に虐待されていた正幸を弟のように面倒をみていた時期があった……。

俳優・清原果耶さんと「毒」

正しさとは何か。思いやりとは何か。正幸のために良かれと思った幸奈の行動は、親切どころかアダとなる。しかし彼女は、自分の物の見方や考え方を疑おうともしない。それどころか、善いことをしていると思っているからなお、始末が悪い。

「お話をいただいたときは、単純に難しいだろうなという思いがありました。幸奈としての思考に共感できないだろうと気づいてしまったので、どう幸奈に寄り添って、役を分解していくかが挑戦どころだと思いました。どの作品に参加させていただく時も『覚悟』はしますけど、今回はまた種類が違いました」

『幸奈っぽい、幸奈っぽくない』って何だろう

湊かなえさんの本を撮影前に原作を含め何冊か読み、台本も繰り返し読んだが、撮影に入ると文章だけではわからない、現場でなければわからない感覚が出てきてしまうことがあったという。

「とにかく基本は台本をしっかり頭に入れて、『わからない』と迷ったら、現場で感じたことを素直に表現しようと思いました。それができれば幸奈として映るのではないかと思ったんです。役作りはしませんでしたが、それは『できなかった』に近いかもしれません」

とはいえ、幸奈という人物の模索は、撮影前、衣装合わせの時に滝本憲吾監督から「幸奈っぽいって何だろうね」と投げかけられたところから始まった。

俳優・清原果耶さんと「毒」

「幸奈っぽさを探しましたが、どうにもこうにも見つかりませんでした。そうしたら監督が『幸奈は普通の人だから』って。普通の人というと語弊があるかもしれませんが、私たちの生活で普通に生きていておかしくない人物です。

私自身、演技をしながら『幸奈っぽい、幸奈っぽくない』をどういう基準で分けていたのか、いまもわからないんです。でも、何となく撮影中にそれがありました。言葉というより動きかな、これは幸奈っぽくない、とか。衣装でも感じました。そういう部分はすごく監督と話しました」

自分の中の「普通」や「常識」そして「毒」

ドラマから見えて来るのは、無自覚のまま「毒」をまき散らす人の姿。幸奈をわが身に置き換えようものなら冷や汗が止まらない。清原さん自身も自身が「毒」を吐く側に回ってしまう可能性をこう語る。

「普段お仕事をしている中で、こうしたインタビューを受ける機会がありますが、清原果耶として発する言葉が『毒』となってしまうこともあり得ます。

表現する場をいただいているからこそ、自分の言葉には気をつけたいですね。ブログの文章や、インスタグラムに書く時は言葉を意識しています。無意識や無自覚で他人を傷つけてしまうことが一番怖い。誰かを傷つけることがないように、そこはできるだけ自覚していたいなと思います」

俳優・清原果耶さんと「毒」

今回のドラマから得たものとは?

「自分の中の『普通』や『常識』という言葉を表現するにあたって、世界が狭すぎたことに気づいたことは大きかったと思います。それに気づけたから、今後こうした役があったらどうしたらいいのかなと考えることができる。勉強になりました」

17歳にして落ち着いた、思慮深い雰囲気が漂う。芸能界へ入ったのは、所属する事務所主催のオーディションがきっかけだった。

「家族そろって、事務所の先輩であるPerfumeさんが好きだったんです」

俳優・清原果耶さんと「毒」

俳優・清原果耶さんと「毒」

NHK連続テレビ小説『あさが来た』で俳優デビューを果たす。その後の活躍は目覚ましく、映画「3月のライオン」やドラマ主演作「透明なゆりかご」など、すでに忘れがたい作品を何本も残している。

今後はどんな役に挑戦してみたいですか?

「特に決めない方がいいと思っています。自分の幅を狭めてしまうのは自分なので。いただけた役を地道にひとつひとつ丁寧に演じていけたらいいなと感じています」

ところで、いま『セブンティーン』(集英社)のモデル業も楽しんでいる清原さんが普段好んで着るのは「古着」。意外!とこぼすと、「みなさんに驚かれます」とティーンらしい笑顔を見せた。

俳優・清原果耶さんと「毒」

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清原果耶(きよはら・かや)
2002年1月30日生まれ。大阪府出身。「アミューズオーディションフェス2014」でグランプリに輝く。朝ドラ「あさが来た」で俳優デビュー。主な出演作に、ドラマ「精霊の守り人」(NHK)、映画「3月のライオン」、映画「ちはやふるー結びー」、映画「愛唄-約束のナクヒト-」、映画「デイアンドナイト」など。今年7月から主演ドラマ「蛍草」(BSプレミアム)が放送予定。

WOWOW「連続ドラマW 湊かなえ ポイズンドーター・ホーリーマザー」
出演:寺島しのぶ/足立梨花/清原果耶/中村ゆり/倉科カナ/伊藤歩 原作:湊かなえ(『ポイズンドーター・ホーリーマザー』光文社文庫刊) 監督:吉田康弘、滝本憲吾 脚本:清水友佳子、吉川菜美、藤澤浩和 
 音楽:きだしゅんすけ、池永正二 プロデューサー:井上衛、澤岳司 制作協力:デジタル・フロンティア 製作著作:WOWOW 毎週土曜夜10時(全6話)
【番組特設サイト】 http://www.wowow.co.jp/dramaw/poison/

佐久間裕美子さんが、わざわざ手作り雑誌をつくるわけ「TOKYO ART BOOK FAIR 2019」

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