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講義No.02605

電子の“波”の性質を利用した次世代テクノロジー

「半導体素子」における“電子のふるまい”

 私たちが日常的に使っている携帯電話やパソコンなどといった現代の電子機器には、IC(集積回路)をはじめ、半導体を利用した「半導体素子」と呼ばれる部品が必ず使われています。ICやトランジスタなど、現在主に使われている「半導体素子」は、電子の“粒”としての性質(“ふるまい”とも言う)を利用して成り立っています。
 電子には“粒”としての性質のほかに、“波”としての性質もあることが知られています。この波としての“ふるまい”を見せる電子を利用した半導体をつくると、「半導体素子」に新しい機能、新しい特質を持たせることができるのです。
 この新しい「素子」は、現在の機能を著しく凌駕(りょうが)する次世代テクノロジーの実現に道を開くものなのです。

電子の“波”の性質を利用する方法

 それでは、どうしたら電子の“波”の性質を利用することができるのでしょうか。ここで出てくるのが、「量子力学」という分野です。量子とは物理量の最小単位。量子力学とはこの極めて小さい世界を扱う力学です。
 電子は、比較的広い領域では“粒”としてのふるまいを見せますが、量子力学が扱う狭い領域では“波”としての性質を見せるのです。この場合の量子力学の“狭い領域”とは「ナノレベル(ナノは10のマイナス9乗)」です。その極小レベルではじめて、“波”としての電子の性質を見ることができます。

量子力学が次世代テクノロジーの扉を開く

 量子力学によって実現する、電子の“波”の性質を利用した新しい素子は、量子コンピュータ、量子情報通信などと呼ばれる次世代テクノロジーを可能にするものです。今後は「量子」と名のつく機器や技術が、実現する時代になるのです。
 それは、今までの常識的な物性を超える機能が見込まれてさえいます。高速、超低消費電力、高効率、高性能化が期待されています。

この学問が向いているかも 電子工学、半導体工学

電気通信大学
情報理工学域 III類(理工系) 電子工学プログラム 教授
山口 浩一 先生

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メッセージ

 半導体やナノテクノロジーといった電子工学の分野は、次世代技術の研究と開発に携わるやりがいのある分野です。個々の研究には一見、社会とのかかわりが見えにくいものもありますが、携わってみれば、世の中と強くつながっていることも、よくわかってきます。電子工学の分野に興味を持ったら、ぜひ、飛び込んでみてください。そして自分の興味をさらに伸ばして社会に役立てられるよう取り組んでほしいと思います。

先生の学問へのきっかけ

 学生時代、世の中に役に立つ電化製品や情報通信機器の研究開発者になることを意識し、電子工学の勉強に力を入れていました。それらの機器の動作原理を理解するには、機器に使用されている電子素子や光素子の動作原理を理解する必要があり、さらにその素子の理解には、素子を構成している物質中の電子や光の振る舞いを知る必要があると、次第に物質のミクロの世界での現象に興味を持つようになりました。ナノメートルの領域になると、量子力学に基づいた特有の性質が現れるようになり、ナノテクノロジーへの興味・関心が高くなったのです。

先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

電子電気機器・半導体回路設計・プロセス開発/精密機器・光学システム開発/電力エネルギー・デバイス開発・システム開発/大学高校・教員など

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山口 浩一 先生がいらっしゃる
電気通信大学に関心を持ったら

 電気通信大学は、東京にある理工系国立大学で、「工学」と「理学」のうち、特に情報分野および理工分野を核とした教育研究を行っています。先端科学技術を支える全分野、例えば、情報、通信、電子、知能機械、ロボティクス、光科学、物理、量子、化学、物質、生命などの分野を網羅しています。社会で活躍する人材の育成をめざし、ものづくりに意欲を燃やす学生の期待に応える教育環境を提供します。