「希望の塾」
1年ちょっと前には散々に聞かされた単語であったが、小池都知事率いる希望の党の大失敗からいつの間にかすっかり忘れてしまっていた。風の噂では公式サイトも閉じてしまって、もうアクセス不可能になっているとの零落ぶりである。
11月21日、そんな「希望の塾」という単語を久しぶりに目にした。
東京都が2017年の政治資金収支報告書を公表したのだが、希望の塾の運営母体である都民ファーストの会が1億795万円も希望の塾の運営費として支出していた事が明らかになった。
とはいえ、希望の塾が会費収入で1億7000万円も集めていたのはとっくの昔にわかっていたので驚きはない。そもそも小池都知事のための集金マシーンであった事は公知の事実である。
しかし、その都民ファーストの会を離党して絶賛迷走中の音喜多都議が
政治塾(希望の塾)運営に1億円超?!都民ファーストの会、政治資金報告書が公開されるも…
というブログを公開し、「希望の塾の支出に違和感。情報公開が必要だ」と書いたのだ。当然、「貴様が希望の塾の会計責任者だろ。貴様が説明しろ」とツッコミの嵐であった。
まあ、これはいつも自分を棚に上げて誰かを批判するしかない音喜多ブログの様式美ともいえる。だが、今回はここから新しい動きがあったのだ。
「私は希望の塾の会計責任者をとっくに辞めている」との突然の自白
都民ファーストを離党して以降、音喜多都議は過去の悪行三昧を「小池都知事、都民ファーストの幹部に指示されて仕方なくやった」と言い訳を繰り返して来た。「土壌Xデー」とかどう考えてもノリノリだったと思うが。
しかし、今回の言い訳はちと様子が違った。「貴様が会計責任者だろ」の総ツッコミに対して、
と、自分は無関係で何の責任も無いと言い出したのだ。
ブログもよく読むと最後の方に、
私自身、初期は会計責任者として、またその立場を降りた後も組織内部で繰り返し「運営費用について、少なくとも塾生に対しては具体的に開示するべきだ」と主張してきました。
と書いてある。この「初期は会計責任者」「その立場を降りた」という言葉は正しく初耳であった。
そして、ここから音喜多都議が隠蔽してきた問題が明らかになって行く。
まず、希望の塾の運営はあくまで都民ファーストの会に置かれた事務局が行っているはずであり、都民ファーストの会とは別物である。音喜多都議が都民ファーストの会の会計責任者を降りたとしても、希望の会の会計責任者を降りた事には直ちに繋がらない。そのため、
「都民ファーストの会の会計責任者の交代は選挙管理委員会には届けている。だから問題無い」
との認識は完全に間違いだ。
それは都民ファーストの会の話であり、希望の塾の話では無い。これは希望の塾の運営が都民ファーストの会と完全に一体化して、「小池都知事のための怪しい金儲け集団」だった事を示している。
そして今さらになって白状したのがもっと問題だ。そう、音喜多都議は公的な政治団体の役職変更を隠蔽し、都民を騙したまま都議選に当選したのだ。
音喜多都議は「希望の塾の会計責任者交代」を全く情報公開していない
音喜多都議は確かに都民ファーストの会の会計責任者であり、希望の塾の会計責任者であった。
都民ファーストの会は2016年9月16日、希望の塾の運営のために誕生した。その時の規約では会長・会計責任者・監査の三役を置くと規定されており、自民党の本橋区議が会長、音喜多都議が会計責任者に就任したと発表された。
これは希望の塾は規約でも明らかである。
希望の塾・規約 第3条(運営)
本塾は、政治団体「都民ファーストの会」が組織する事務局をもって運営する。
そして都民ファーストの会の結成の直後、小池都知事により希望の塾のスタートが宣言された。
この時期、音喜多都議は
なんか一部テレビで私が政治塾・政治団体の中枢かのように扱われておりましたが、私は中枢ではなくて雑用の中心です!!(力説)
塾立ち上げ準備の風景を撮りたいとか言われましたけど、銀行口座を開設したり…https://t.co/yIn5RXDJ95 #NewsPicks
— おときた駿(あたらしい党 代表 /都議・北区選出) (@otokita) September 21, 2016
と都民ファーストの会と希望の塾の会計責任者である事を自らアピールしていた。
しかし、今回ツイッターで総叩きにされて自分で暴露するまでついに一度も自分のツイッターやブログで都民ファーストの会と希望の塾の会計責任者を交代した事を発表していない。
唯一、記録で見つかったのは都民ファーストを離党した時の記者会見(2017年10月5日)である。
(記者) 希望の塾のところで、「疑問を持たれることも多い『希望の塾』の運営費についても開示されることを求めます」とあるんですが
(音喜多) 私は希望の塾の、初代の責任会計者なんですね。ですから多額のお金を預かった時には、まだ関与しておりましたので、やっぱりこの多額のお金がどう使われたかというのは、しっかりと開示をすべきであろうというふうに思いますし、その多額のお金がどこに使われたというのは私はわかりません
会計責任者交代Xデーは2017年1月23日か?
では、一体音喜多都議はいつ会計責任者を交代したのか?
当の本人が「2017年初までには」とはっきりとわかってないのが衝撃である。だが恐らく、都民ファーストの会が地域政党として発足した2017年1月23日であろう。
この時、音喜多都議は都民ファーストの会そのものではなく、都議会議員の会派である「都民ファーストの会 東京都議団」の幹事長に就任した。
同時に都民ファーストの会も規約を変更した。三役の在り方も全く変わり、代表・幹事長・政務調査会長となった。このタイミングで都民ファーストの会の会計責任者が小池事務所の白石氏に代わったのだろう。
だが、これは音喜多都議の主張通りに「希望の塾の会計責任者は音喜多都議じゃ無いんだね。だから説明責任は発生しないね」という話では無い。
逆だ!
説明責任は発生する。そして、さらにもっと悪質な有権者への裏切り行為である。
※2018/12/09追記
音喜多都議からツイッターで「事実誤認である」との反論を頂いた。
このYoutubeの動画を確認したところ、確かに「1月14日付けで会長・会計責任者・会計実務者の三役から我々、都議・区議は退いております」との音喜多都議の発言がある。つまり、会計責任者交代Xデーは2017年1月14日が正しい日付である。
だが、これは「一度も自分のツイッターやブログで都民ファーストの会と希望の塾の会計責任者を交代した事を発表していない」という私の主張と何ら矛盾しない。音喜多都議が自身のメディアで文書として記録に残る形で発表していなかった事を証明した形である。
ただし「都民ファーストの会の会計責任者の交代について『全く』情報公開していない」という指摘は修正させていただく。
そして、肝心の希望の塾の会計責任者の交代についてはあらゆるメディアを通じて全く情報公開せず、隠蔽していたことが音喜多都議自身によって明らかになったのである。
音喜多都議には希望の塾の会計について説明責任がある
まず、希望の塾が多額の収入を集めた2016年10月の会計責任者は間違い無く音喜多都議である。
ただの6回の講演会にも関わらず、一般男性の受講料は5万円とすさまじく高額であった。運営費の使い道が問題になる遥か以前から「なぜそんな使いきれないお金を集めるのか?」と批判が殺到していた。
2017年11月に2016年の政治資金収支報告書が公開された時、繰越金が約1億6000万円もあると問題になっていた。もちろん、2016年は音喜多都議が会計責任者の期間である。
さらに、2017年1月23日に交代していたとしても、それまでに10/30(日)、11/12(土)、12/10(土)、1/14(土)と6回中4回の講演を実施している。運営費が1億円近くも有って問題だと言うならば、その2/3である7000万円については音喜多都議の責任で支出されたのだ。
さらにさらに、音喜多都議は会計責任者を交代しても塾の運営に携わっている。これは会計責任者交代後の2月4日に当の本人がつぶやいたものだ。
これで「自分は何も知らない。今の会計責任者が説明しろ」はあまりにも無責任である。音喜多都議には今でも希望の塾の会計について説明責任がある!
音喜多都議は有権者を騙して都議選に当選したのでは?
そして最も問題なのは、音喜多都議が会計責任者の交代をずっと隠蔽していた事だ。
東京都北区の有権者を始め、人々は音喜多都議が都民ファーストの会と希望の塾の会計責任者だと思っていた。無論、私もである。
ツイッターで音喜多都議へのリプライを検索するだけでも、「あなたが会計責任者でしょ」という呟きがこの11月になるまで多数見つかる。その中には希望の塾の塾生の方もいる。
私は希望の塾の塾生でしたが、当時音喜多氏は塾の「会計責任者」でありました。
塾生たちが、受講費の使徒開示を求めても、一切無視して要望に応えなかったのは、他でもない会計責任者であった音喜多氏です。
音喜多氏には、本件について意見をする資格など、1ミリたりともありません。— 中川 恒司 (@nakagk) November 22, 2018
人々は希望の塾はあくまで都民ファーストの会が運営するもので別物だと思っていた。お金や役職が都民ファーストの会の幹部に牛耳られているような悪質な集金マシーンだとは塾生も知らされていなかった。
これは塾生に対して事務局が酷い隠蔽体質で有ったという事だ。これを会計責任者で無いとしても事務局のメンバーである音喜多都議が黙っていたのは、自分自身が毎日のように主張する「情報公開」から最も離れた態度である。
さらに、公的な政治団体・地域政党である都民ファーストの会の役職を代わった事を自分のツイッターやブログで黙っていたのは、政治家として最も悪質な有権者に対する重要情報の隠蔽である。
都民ファーストの会の支持者にとっては、音喜多都議は都民ファーストの会と希望の塾という2つの組織の会計を任された上、1億7000万円もの多額な政治資金を獲得したヒーローだ。しかも都議会会派の幹事長までもこなしているのだからスーパーマンである。
こういった誤った認識のまま、都議選で彼に投票してしまった人もいたのではないか?
しかし実態は会計責任者をあっさりクビになり、少数会派の幹事長という名誉職をこなすのが精一杯という低スペックの無能議員だったのだ。その証拠に、都民ファーストの会から55人もの大量当選が出た都議選の後に都議会会派の幹事長を交代させられている。
音喜多都議は都民ファーストの会が与えてくれた有能さの幻想を最大限活用し、都議選に当選したのだ。しかし、音喜多都議はそんな感謝すべき都民ファーストの会を都議選のわずか3ヶ月後に裏切り、離党したのである。
これでは有権者に嘘の情報を流し、騙してでも都議選に当選したかった「当選ファースト」の議員と言われても仕方ないだろう。法律には違反していないと強弁するかもしれないが、自分自身がいつも言っている「情報公開の姿勢」とは全く違っている。
私は2年前に「音喜多氏は4つの嘘をついている」と指摘した。その時、音喜多都議はブログで
「自分にできること・やるべきことは、新しい政治判断を迫られた時、それに向き合って説明を果たすことです」
と書いていたが、全くの嘘だったという事だ。
音喜多都議の正体は、まさにその記事に自分で書いた「こんな奴は有権者に見放される」「組織の言いなりになる信念のないヤツ」だったのだ。それがバレて都議選で落選するのが嫌だったから必死で隠蔽していた。そして都議選が終わったから堂々と白状したのだろう。
それにしても、ここまで言ってる事とやってる事が逆の人間はそう見ない。だけど「自分がやってるからこそ」的確に、しかも毎日立て続けに他人を批判する記事を書けるのだな。納得したよ。
参照:「希望の塾」運営で1億円余り支出 昨年、都民ファーストの会、Wikipedia 都民ファーストの会、希望の塾公式サイト(アーカイブ)、2017年政治資金収支報告書(都民ファースト)、2016年政治資金収支報告書(都民ファースト)、小一時間の記者会見で、小池百合子知事の凄さを改めて知る。地域政党「都民ファーストの会」、発足!、音喜多駿・上田令子 両都議 記者会見 #3/3