【芥川賞発表】アルバイトを“クビ”になり、小説を書き始めた ――新・芥川賞作家の今村夏子が作家になるまで
第161回芥川賞の選考結果が発表となり、今村夏子さんが『むらさきのスカートの女』で令和最初の受賞者に決定した。
今村さんは1980年広島県生まれ。現在は大阪府在住。2010年に太宰治賞を受賞し作家デビューした。そのデビュー作を収録した単行本『こちらあみ子』で三島由紀夫賞を受賞。その後、2016年に「あひる」(のちに河合隼雄物語賞を受賞)、2017年に「星の子」(のちに野間文芸新人賞を受賞、本屋大賞ノミネート)で共に芥川賞の候補となり、3度目のノミネートで受賞となった。
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芥川賞を受賞した「むらさきのスカートの女」は、近所に住む<むらさきのスカートの女>と呼ばれる女性のことが気になって仕方のない<わたし>が、彼女と「ともだち」になるために、自分と同じ職場で働きだすように誘導していくという、コミカルな筆致ながらも不穏な空気を漂わせる作品だ。先の展開がまったく読めず、「小説を読みなれていない人でも読みやすい」という評判だ。
<わたし>の望み通り、<むらさきのスカートの女>はホテルの清掃員として働くことになるのだが、作者である今村さん本人も大学卒業後は就職をせず、25歳から30歳ころまで、ホテルの清掃員のアルバイトをしていたという。ある日、そのバイト先から「明日休んでください」と突然言われ、その帰り道に「ふと小説を書いてみよう」と思いつき、ノートに手書きで小説を書き始めた。やがてパソコンを購入し清書したものが、デビュー作となった。
デビュー後、しばらく作品を発表しない期間もあり、つねに「次に書くものがない」と悩んでいるというが、作品を発表するごとに「本当に書くのが嫌だと思うまでは小説を書き続けていたい」という気持ちも強くなっているという。現在は2歳の娘の子育てをしながら、朝の2時半には起きて、毎日5時間はパソコンに向かう日々を送っている。