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【社説】

<’19参院選>沖縄の基地 負担の公平を考えねば

 全国の一人区で激突する自民党と四野党。対立軸の一つが、沖縄県の米軍普天間飛行場返還に伴う辺野古新基地建設の是非だ。

 立憲民主、国民民主、共産、社民各党は五月、民間の「市民連合」との政策協議で「新基地建設の中止」で合意し、各党が参院選公約に掲げた。一方、自民党は辺野古への移設を「着実に進める」と強調。公明党は辺野古に直接触れていないが「国の安保、防衛政策を基本的に推進していく立場」(山口那津男代表)だ。

 四野党が辺野古問題で足並みをそろえたのは、国が昨年十二月、沿岸への土砂投入に踏み切り、ことし二月の県民投票で反対票が七割超を占めたにもかかわらず、埋め立てを続けていることに全国の関心が集まった影響が大きい。

 しかし、各党党首らの論戦では社会保障や財政政策に並ぶ大きな争点となっていないのが残念だ。

 安倍晋三首相は街頭演説でほとんど触れず、沖縄県選挙区(改選一)では、自民党の新人候補が辺野古移設への賛否を明らかにしていない。あえて争点をぼかそうというのなら看過できない。

 沖縄に限らず全国の有権者は、今回の参院選を、日米安保を巡る負担や防衛政策と地方との関係を見直す機会にしてほしい。

 トランプ米大統領から「不公平」と言われる日米安保条約だが、日本国民は今や約八割が日米安保体制を支持している。

 ただ、安保の「最前線」である米軍基地が沖縄に集中する中、本土側は騒音や事件事故の不安など沖縄の負担に無関心なまま、安保の恩恵のみを得ている状況ではないか。この先も安保の維持を望むなら負担の公平を考えるべきだ。

 辺野古問題でいえば、普天間の代替施設が真に必要か、本土または国外への移設が可能か、国民的議論で考え直す必要があろう。上陸部隊の海兵隊を沖縄に置き続ける意味があるのか、地域情勢の変化も考慮する必要がある。

 辺野古新基地建設では、閣内の手続きによって県の埋め立て承認撤回を無効にしたり、県の許可なく護岸の構造を変えて埋め立て土砂を陸揚げしたりと、法治原理を自ら蔑(ないがし)ろにする国の強引な手法が目につく。

 沖縄以外にも秋田県では、地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」整備に関して不誠実極まりない住民対応が露見した。

 地方軽視の防衛政策は厳しく問われねばならない。

 

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