今回の裁判は、虹コンの元総合プロデューサーで、ピクシブ株式会社の元社長・永田寛哲氏が元メンバーAさんからセクハラをしたとして訴えられていると報じているところが多いのですが、実際はもう少し複雑です。
詳細は後述しますが、永田氏がAさんを盗撮していたとして、Aさん側が地元の弁護士に依頼してピクシブ社、虹コンの所属するディアステージ社、ピクシブ社の親会社にあたるアニメイト社に対して損害賠償請求の内容証明を送付していました。
この時点で永田氏は「事実関係の真偽はさておき」としながらも謝罪と賠償を行うことで双方の代理人を通じて示談がまとまりかけていたんです。ところが送付された内容証明がアニメイト社やピクシブ社に送付されたため、永田氏は関係者からきつく怒られました。そのため和解から一転、永田氏はAさんを名誉毀損で訴え、2018年5月7日、東京地裁で第一回口頭弁論が行われました。
これを受けてAさんも永田氏を訴え、訴訟合戦が始まりました。Aさんは、永田氏から盗撮を含めたセクハラがあったとして損害賠償請求をしています。お互いがお互いを訴えているので永田氏もAさんも原告であり被告になります。6月17日に行われたのは本人尋問。双方でやりあうので裁判の時間も約4時間の長丁場でした。
民事裁判の傍聴席はガラガラなことが多いんですが、今回に関しては裁判が始まる30分前から法廷横にある控室に男性が続々と集まってきました。東京地裁に毎日いると分かるんですけど、どの法廷に行ってもほとんど毎日見た顔なんです。それがこの裁判は見たことのない人が集まっていました。その時点でちょっと違うなと。恐らくですが、Aさんのファンなのかなと。傍聴席は42席あったんですけども、数えたところ40席が埋まっていました。
アイドルとしての月給は3万円
まずは永田氏側の弁護人(以下弁護人A)と永田氏の尋問です。
弁護人A「Aさんにマッサージを依頼していたのは事実ですか?」
永田氏「事実です」
弁護人A「メンバーの給料が1ヶ月3万円だったというのは間違いないですか?」
永田氏「間違いないですが家賃、光熱費、私服代もこちらで出していました」
弁護人A「アナタからマッサージのバイトを提案したんですか?Aさんは嫌がっていましたか?」
永田氏「いいえ」
弁護人A「Aさんの方からマッサージどうですか?という提案はありましたか?」
永田氏「ありました」
だからマッサージを強要したものではないという主張ですね。ここでは値段を言ってませんでしたが、マッサージは1回5000円だったそうです。
京都旅行へ同行し、布団を並べて就寝
続いて、問題になっている京都旅行について。これはAさんが虹コンからの脱退を悩んでいた時、気分転換に行った京都旅行に永田氏が同行してきたというもの。永田氏とAさんは同じ宿の同じ部屋に布団を並べて寝たということですが、その点について永田氏へ尋問が行われました。弁護人A「Aさんを一人で旅行に行かせなかったのはなぜですか?」
永田氏「メンバー一人での旅行を禁止していました。Aさんはその時精神的に不安定だったので旅行に行った方がいいんじゃないかと思いました」
弁護人A「お金についてはあなたが出しましたか?」
永田氏「そうです」
弁護人A「それは会社が出すものではないんですか?」
永田氏「イレギュラーなパターンです。他のメンバーも『言えば旅行に行けるの?』って思ってしまう可能性があります。これだと不公平ということになりメンバーのモチベーションが下がってしまうので個人で京都旅行の費用を出しました」
弁護人A「京都旅行で寝てる時とかに、体に触れましたか?」
永田氏「一切触れていません」
永田氏の自宅にAさんを泊めた時の話についても尋問がありました。こちらは永田氏の自宅に泊まったAさんが入浴する際、小型カメラで盗撮されていたと主張しています。
弁護人A「なぜ自宅に泊めたんですか?」
永田氏「私は不動産をいくつか持っているのですが、2017年、彼女が虹コンを辞めて実家に帰っていた時、受験のために上京するので『1~2日泊めていただける場所はありませんか?』とLINEで相談を受けました。そこで『うちの客間は独立しているので使っていいよ』と伝え、彼女が了承しました」
ここまではいいんですけど、この裁判で問題になっているのはAさんが泊まった永田氏の自宅の浴室の洗面台に小型カメラが置いてあることです。当然、泊まりに来たAさんが服を脱いでから入浴するわけですから、小型カメラにはその様子が映ってしまうというわけです。これについて永田氏は「うっかり置きっぱなしにしていた」と話しています。弁護人が続けます。
弁護人A「そもそも趣味のために小型カメラで撮影を始めたのはいつなんですか?」
永田氏「5~6年前からです」
弁護人A「最後に撮影したのはいつですか?」
永田氏「2018年1月3日、4日」
今回Aさんに対する盗撮疑惑が持たれているのは1月6、7日なので3日ぐらい前が小型カメラを使って撮影をした日になります。
弁護人A「最後に撮影した場所はどこですか?」
永田氏「渋谷でそういったお店の方とホテルで」
弁護人A「どのお店ですか?ホテルはどこですか?」
永田氏「相手の女性に迷惑がかかるので言えません」
弁護人A「Aさんから訴えられましたけど(内容証明の送付先は)あなた宛ではないですよね?」
永田氏「なんで会社宛てで僕に来ないんだろうとは思っています。元々虹コンが所属していたピクシブプロダクションにも届いていません」
弁護人A「あなたはなぜ訴えたんですか?」
永田氏「マスコミにプライベートな事をしゃべったからです」
弁護人A「じゃあ今、Aさんに対してはどんな感情を持っているんですか?」
永田氏「悪感情を持っておりません。(内容証明)の宛先を彼女が決めたとは思えない。代理人が決めたんだと思います」
受験で上京するため永田氏の自宅に宿泊
永田氏の弁護人による尋問はこのぐらいでした。続いて、Aさん側の弁護人(以下弁護人B)からの尋問。永田氏が総合プロデューサーとしてどれだけ力を持っていたのか、虹コンがディアステージに移籍した後も総合プロデューサーとしてどれくらいの立場で参加するのかといった内容の尋問が続きました。そして永田氏とAさんが2人っきりで行った京都旅行の話題へ。弁護人B「京都旅行についてお尋ねします。宿泊施設は一泊いくらですか?」
永田氏「記憶にないです」
弁護人B「10~20万?」
永田氏「そこまではいかないでしょう」
弁護人B「何部屋あったんですか?」
永田氏「2部屋です」
弁護人B「あなたとAさんは同じ部屋に泊まったんですか?」
永田氏「そうです」
弁護人B「布団は隣り合わせなんですか?」
永田氏「う~ん…そうです」
弁護人B「別々に寝ようと思いませんでしたか?」
永田氏「そういう判断もあったんですけど、食事の間に布団が準備されていて彼女の悩みを聞いているうちに寝てしまいました」 ※どちらが寝たのはか不明
弁護人B「立場上、そういうのは問題があると思いませんでしたか?」
永田氏「う~ん。そういう認識はあまりなくて」
Aさんに5000円でマッサージのアルバイトをさせていた件について。
弁護人B「マッサージのアルバイトですけど、他のメンバーにもそういうことをさせていたんですか?」
永田氏「それはないです」
弁護人B「ではメンバーではなく他の女子社員にさせていたことはありますか?」
永田氏「してもらったことはあったかもしれない」
盗撮疑惑についての尋問です。
弁護人B「(盗撮が)疑われている件についてですが、なぜ自宅に泊めたんですか?」
永田氏「他に泊める場所がなかったので」
弁護人B「他に物件はなかったんですか?」
永田氏「空いてなかったです」
弁護人B「ビジネスホテルを取ってあげるという発想はなかったんですか?」
永田氏「『受験で上京するためにどこか泊めて下さい』ということだったので安くすませたいんだろうと。まさかホテルとは思わなかったです。うちは客間が完全に独立しているので大丈夫だと思いました」
我々には見えませんでしたが代理人が間取りを見せて裁判官に説明していました。浴室が2つあるという話をしていたので、かなり大きな自宅だったことが推測できます。
弁護人B「客間を使っていいということについて、彼女は難色を示していなかったですか?」
永田氏「示していませんでした」
弁護人B「あなたは(Aさんに)好意を持っていたんですか?」
永田氏「好ましくはありました。虹コンのメンバーだった時も夢を応援していましたが、卒業した後も医学部という夢を持っていたので応援は続けていました」
弁護人B「虹コンを辞めたメンバーを自宅に宿泊させることは問題ないと思ったんですか?」
永田氏「スタッフの女性の家にメンバーが泊まることがありました。ほとんどが結婚している女性スタッフなのでご主人がいます。なので大丈夫かな、問題ないかなと思った。Aさんが私の家に泊まった時も、奥さんと子ども(赤ちゃん)が自宅にいました」
弁護人B「小型カメラについて、あなたが設置したものではないと言ってますよね。この部屋にはあなたと奥さんと赤ちゃん。あとAさんしか出入りしていません。あなたでもない、奥さんでもないとなるとAさんが仕掛けたと思っているんですか?」
永田氏「思っていないですね」
弁護人B「じゃあ物理的に誰が仕掛けるんですか?」
永田氏「それは私が考えることではないです」
弁護人B「彼女の自作自演だと思っているんじゃないですか?第三者も考えられるんですか?」
永田氏「それは僕が考えることではありません」
弁護人B「盗撮をしてませんと否認したのが遅くないですか?」
永田氏「写真も見せられてないし、何の話をしているのかわからなかったので」
弁護人B「Aさんがあなたの自宅に泊まったのは2018年1月6日、7日ですが6日についてはAさんの勘違いの可能性があるということを弁護士に伝えましたか?」
永田氏「こじれているからこうやって裁判になっているわけで。軽々に僕が指示するのもよくないのではないかと思います」
弁護人B「2018年3月19日にAさんを被告として訴えましたね」
永田氏「ディアステージとピクシブ側の資料をマスコミに流出させたからです」
弁護人B「流出したと考える理由はなんですか?」
永田氏「そういう風に考えさせる話があるからです」
弁護人B「話ってなんですか?」
永田氏「それはお答えしません」
流出については一番重要な証拠となる部分なのかなと思ったんですけどね。言えないけどAさんが流出させたという確たる証拠があるということなのかもしれません。
裁判官はマッサージについて質問
ここからは永田氏側の弁護人による反対尋問です。弁護人A「アルバイトとしてのマッサージで彼女にいくら渡しましたか?」
永田氏「10数万円です」
弁護人A「小型カメラでAさんが撮影したという画像を法廷で見ましたか?」
永田氏「見ました」
弁護人A「あなたの自宅の浴室は家族用と客間用の2つありますよね。彼女が泊まっている部屋からは客間用の風呂の方が近い。当然脱衣所はどちらにもあります。それなのにどうして彼女はわざわざ遠い家族用の風呂と脱衣所を利用したのでしょうか?」
永田氏「客間用の風呂は壊れていました。普段から利用しているわけではないので、水が流れるところから悪臭が漂う状態になっていたんです。そのため家族用の風呂を使ってもらいました」
弁護人A「Aさんがあなたの家に泊まることが決まったのはいつでしたか?」
永田氏「2017年の10月頃です」
弁護人A「あなたは家族が使用することが分かっている風呂の脱衣所にカメラを置きますか?」
永田氏「置きません」
左陪席の裁判官による質問です。
裁判官「今まで家族がいるところに小型カメラをうっかり置き忘れたことはあるんですか?」
永田氏「あったのかもしれないけど、基本的には目に触れないようにしていました」
裁判官「奥さんから『これなに?』と示されたことはあるんですか?」
永田氏「それはないです」
右陪席の裁判官による質問です。
裁判官「あなたの認識としてはうっかり置きっぱなしにしていた小型カメラですけども、回収したのはいつなんですか?」
永田氏「10日とかですかね」
裁判官「最後に撮影したのは1月3日、4日と言っていましたが、7日間置きっぱなしにしていて気がつかなかったんですか?」
永田氏「そうです」
裁判官「カメラ内にSDカードがあって、もしカメラを誰かに取られたら映像はパソコンで見られるものなんですか?」
永田氏「はい」
普通に考えれば、こそこそ撮影するものなんだから1週間置きっぱなしにしていることは不自然過ぎないかということなんでしょう。続いて、裁判長の質問です。
裁判長「マッサージの件ですけど、1時間5000円ですよね。1時間というのは結構な時間ですけど1時間もやってもらってたんですか?」
永田氏「いや、タイマーをつけてないので」
裁判長「1時間って大変だろうなと思いまして。『ほどほどでいいよ』とかそういう感じでしょ?」
永田氏「はい」
裁判長「Aさんが卒業した後に出演した1月のライブ。出演料は?」
永田氏「出してません。交通費は出していました」
裁判長「1月6日、7日。Aさんが泊まっていた2日間ともあなたの奥さんは自宅にいたんですか?」
永田氏「いました」