SMAPの元メンバーのテレビ出演をめぐり、ジャニーズ事務所が民放各局に圧力をかけた疑いがあると、7月17日に報道各社が報じた。公正取引委員会はジャニーズ事務所を「注意」したという。
奇しくもジャニー喜多川社長が7月9日に死去し、12日には所属タレントによる「家族葬」が営まれたばかり。このタイミングでの報道から見えてくるものとは?
番組は相次いで終了
SMAPは2016年末に解散。元メンバーの稲垣吾郎さん、草彅剛さん、香取慎吾さんの3人は2017年9月にジャニーズ事務所から独立した。
3人はいずれも民放でレギュラー番組を持っていたが、事務所移籍後に相次いで終了している。
内情を知る関係者によると、公取委は独禁法違反の疑いで昨年からテレビ局などに対して任意で聴取。ジャニーズ事務所への立ち入りも視野に調査を進めていたという。
関係者は「民放がジャニーズに嫌われるのを恐れて圧力について明言しなかったため、ガサ(立ち入り調査)は見送られ、行政処分や警告ではなく注意にとどまった」とみる。
「関係者によると」の理由
独禁法が定める公取委の対応には、重い方から順に「排除措置命令などの行政処分」「警告」「注意」と3段階の措置がある。
公取委のホームページには《違反行為の存在を疑うに足る証拠が得られないが,違反につながるおそれがある行為がみられたときには,未然防止を図る観点から「注意」を行っています》と記載されている。
「行政処分」や「警告」は公表されるが、「注意」は通常、非公表。報道各社が「公取委によると」ではなく「関係者によると」という報じ方をしているのはこのためだ。
公取委が発表しないため、関係者から情報を得て記事にしたことを意味する。
公取委内部の積極派と消極派
今回もっとも軽微な「注意」がなされた理由はどこにあるのか。
前出の関係者はこう指摘する。
「ジャニーズに関しては、公取委幹部の間でも積極派と消極派で意見が分かれていました。妥協点としての『注意』だったのではないでしょうか」
「行政処分を出すと、不服のある相手側に裁判で争われるリスクがある。注意であれば、言いっぱなしなので裁判リスクもありません」
事務所への配慮はあったのか
ジャニーさんの死後、間を置かずに明らかになった今回の一件。ジャニーさんの死去を待つ特別な「配慮」はあったのだろうか?
関係者によれば、公取委がジャニーズ事務所に「注意」したのは数週間前。まだジャニーさんが存命のころだったとみられる。
「ジャニーさんの死去を待ったわけではなく、省庁の幹部が動く霞ヶ関人事が7月だから。異動前までに仕事を片付けたい、という役所心理の結果でしょうね」(関係者)
圧力か、忖度か
そもそも、本当に圧力はあったのか。
ある民放関係者によれば、ジャニーズ案件の取り扱いには細心の注意を払っており、絶えず編成による「確認」が入る。
「編成からさらに局首脳へと報告があがる。そこで事務所側との接触が持たれることもあるでしょう。『圧力』なのか『忖度』なのかは当事者同士にしかわかりません」
「ジャニーズもバカじゃないから『やらないでくれ』なんて言うことはない。局側の自主規制の可能性もあり得ます」
局と事務所の「あうんの呼吸」
ジャニーズ事務所と放送局の間には、こうした「あうんの呼吸」がある。
たとえばSMAPの解散の第一報がスポーツ紙で報じられた際は、番組で取り上げないことはもちろん、ほかのニュースを紹介する時にも紙面が画面に映りこまないように配慮したという。
今回の公取委の「注意」をめぐる報道でも、どう取り上げるか、いつ取り上げるかに関して、各社の報道ぶりを横目に見ながら神経をすり減らすことになった。
「ジャニーズはそれぐらい大きな存在。局にとってのお得意様なので仕方がないんです」
ジャニーズ「重く受け止め」
報道を受け、ジャニーズ事務所は以下のようにコメントしている。
弊社が公正取引委員会より独占禁止法違反につながるおそれがあるとして注意を受けたとされる報道につきましてご報告申し上げます。
弊社がテレビ局に圧力などをかけた事実はなく、公正取引委員会からも独占禁止法違反行為があったとして行政処分や警告を受けたものでもありません。とはいえ、このような当局からの調査を受けたことは重く受け止め、今後は誤解を受けないように留意したいと思います。
Ryosuke Kambaに連絡する メールアドレス:ryosuke.kamba@buzzfeed.com.
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