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【大相撲】

炎鵬、痛恨の左手

2019年7月18日 紙面から

佐田の海が小手投げで炎鵬を破る

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◇北の富士評論「はやわざ御免」

 本当のところとても原稿を書ける心境ではない。高安は休場するし、炎鵬が負けるし、ペンを持つ気力もない。それでもこんな記事でも毎日楽しみにしていてくれる人がいるので、私まで休場? 休筆しては申し訳ない。

 それにしても炎鵬は悔やんでも悔やみきれない星を落としてしまった。相撲は狙い通り二本差しとなり、頭を付けて食い下がる炎鵬にとっては願ってもない体勢とした。珍しく内掛けを飛ばして下手投げ、切り返し、次から次へと攻め続ける。その都度、佐田の海は懸命に残す。しかし、上体が浮いて腰も高くなる。ここが攻めどきとばかり炎鵬が寄った。必死に回り込んで残す佐田の海。見応えある土俵際。炎鵬はこの勝機を逃してはならじとばかり体を預けて寄った。勝負をかけての寄りを佐田の海は捨て身の左小手投げを打った。この投げで左足の流れていた炎鵬が思わず左手を出してしまった。際どい判定だったが、わずかに炎鵬の手が早く、物言いも付かなかった。

 あの左手は悔やまれる。顔から落ちても手を突くなは鉄則である。それだけにあの左手は痛恨の突き手だった。もし手を突かなかったら、あるいは左肩の方を痛めていたかもしれない。顔面をズリむけてもいたことだろう。

 返す返すも悔しい一番ではあったが、私は佐田の海の粘りと執念をほめるべきだと思っている。なあにまだ4日ある。勝ち越しはできる。必ずできる。これだけ頑張っているのに、相撲の神様が見捨てるはずがない。

 4大関が休場し、何の面白くもない場所を救っているのは炎鵬と照強、そして人気の遠藤の3力士。優勝は両横綱で争えばよろしい。私はもはや関心はない。今場所は4大関休場で本場所の体をなしていない。4大関の休場は史上初と聞く。休んだ大関の責任は当然だが、各指導者協会の責任も免れないだろう。

 こんな状態でもお客さまは足を運んでくれている。今日も満員札止めである。誠にありがたいことだ。そんなお客さまに対して協会はどうおわびをするべきかを考えてもバチはあたらない。人気にあぐらをかいている場合ではないことを肝に銘じてもらいたい。

 また余計なことを言ってしまった。今日はテレビで観戦しているが、気のせいか内容が良くない。熱戦は炎鵬と佐田の海の一番だけである。酒も飲む気になれないが、約束があるので早く出掛けようとしよう。 (元横綱)

 

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