マイケル・ジャクソン。ピーターパンを夢見た彼が、この世から姿を消してもう十年。キング・オブ・ポップ(ポップ音楽の王様)が生み出した曲やステップは色あせず、地球規模で愛されている。
先月二十二日、若者たちでにぎわう名古屋の大須商店街。マイケルの代表曲「Beat It」が鳴り響き、通行人を装っていた“ダンサー”たちが、いきなり踊りだす-。いわゆるフラッシュモブだ。
泉下のスーパースターにささげる追悼のパフォーマンスは、二十五日の命日前後、世界各地で展開された。日本でも、もちろん。金沢の近江町市場、あるいは奈良の繁華街などで。
一方、米国では今年一月、性的虐待疑惑をめぐるドキュメンタリー映画も公開された。良くも悪くも、マイケルの存在感は依然強烈だ。“キング・オブ・ポップ”の地位は揺るがない。なぜか。
CDアルバムの売り上げは二億枚以上、グラミー賞八部門独占、没後の収入だけで、二十億ドル以上…。だが、数字だけが、玉座を支えているのではない。
黒人差別や偏見の壁を乗り越えて、マイケルがその卓越したパフォーマンスに託したメッセージの数々が、何光年も離れた星から届く光のように、今という時代に響くからではないのだろうか。
♪気づいてないの?/地球が叫んでいることに/海も泣いていることに…。「アース・ソング」
マイケルは、彼が最も好きだったとも言われるこの曲について、映画「THIS IS IT」の中で、次のように語っている。
<環境破壊が気がかりだ。だからこういう曲を書く。人々が目覚めて希望を抱けるように。地球は病んでいて熱があるんだ。今でなければ治せない>
「ウィー・アー・ザ・ワールド」。一九八五年、四十五人のスーパースターが参加した、アフリカ救済のチャリティーソング。
♪私たちは世界の仲間/私たちの未来のために/今こそ分かち合おう…。発起人のハリー・ベラフォンテが「みんなをハグするような」と表現した、このサビのパートを書いたのもマイケルだった。
国境に壁を築けと、指導者たち-。そんな時代だからこそ、共通の課題と向き合おう、未来を分かち合おうと訴える彼の歌声、そしてステップは、さまざまな“壁”を乗り越えて、世界中の人の心に染み渡っていくのだろう。
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