消費税収は年金、医療、介護、少子化対策に使うことになっている。社会保障制度の改革は財源の議論なしには前に進まない。
参院選の論点は増税の是非だけではない。どうしたら誰もが納得できる税制となるか、どこまで負担したら将来に安心を得られる制度になるのか、その将来像こそ知りたい。
もちろん増税は慎重であるべきだ。所得が低い人ほど税負担が重くなる逆進性の問題があるし景気動向などを注視する必要もある。
だが、高齢化で年金、医療、介護分野への支出は増大する。高齢者数がピークに近づく二〇四〇年度には、社会保障の費用は国内総生産(GDP)比で一八年度の21・5%(約百二十一兆円)から24%(約百九十兆円)に増える。
一方で現役や将来世代にばかり負担を強いるのも無理がある。保険料と税でどう財源を確保するのか知恵を絞らねばならない。
消費税率の10%への引き上げは一二年の旧民主、自民、公明三党の「社会保障と税の一体改革」で合意した。その財源で社会保障制度を立て直すためだ。例えば、基礎年金(国民年金)給付額の半分は税財源だし、保育所整備などにも充てられている。
10%になるとその財源を使い低年金者への給付金制度が始まる。高齢者の介護保険料軽減や幼児教育・保育の費用にも回される。
野党は十月からの増税に反対している。ならば財源をどうするのか。立憲民主党は金融所得課税や法人税の見直し、国民民主党は「子ども国債」発行、共産党は富裕層や大企業の負担増、日本維新の会は行政・国会改革、社民党は予算の見直しなどによる財源確保を訴える。
実効性に疑問のある提案もあるが、消費税に限らず幅広く税制を考える点は理解できる。財源確保への具体的な道筋を示すべきだ。
安倍晋三首相はこの政権でのこれ以上の税率引き上げを否定、「今後十年くらい」は上げる必要がないとの見通しを示した。その根拠が「税収が順調に伸びているから」だけでは、説得力を欠く。
一体改革は、団塊世代が七十五歳以上となり医療や介護のニーズが高まる二五年の社会保障の体制整備を目指したものだ。
四〇年問題をどう乗り切るのかが次の課題だが、財源確保の議論は始まっていない。各党には建設的な議論を望みたい。
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