(cache)甦るマサ斎藤、永遠のGO FOR BROKE<4>知られざるアントニオ猪木への思い : スポーツ報知

甦るマサ斎藤、永遠のGO FOR BROKE<4>知られざるアントニオ猪木への思い

若手時代のマサ斎藤さん(左)とアントニオ猪木(斎藤倫子氏提供)
若手時代のマサ斎藤さん(左)とアントニオ猪木(斎藤倫子氏提供)
マサ斎藤さんの棺を運ぶ長州力、佐々木健介、坂口征二氏、蝶野正洋、前田日明ら
マサ斎藤さんの棺を運ぶ長州力、佐々木健介、坂口征二氏、蝶野正洋、前田日明ら

 日米のマット界でトップレスラーとして活躍したマサ斎藤さん(本名・斎藤昌典。享年75)がパーキンソン病で亡くなって14日に一周忌を迎える。明大4年時に1964年の東京五輪でレスリング日本代表として出場。卒業後に日本プロレスに入門、その後、東京プロレスへ移籍し同団体が崩壊後は、単身、米国マットに乗り込みトップヒールとして活躍した。80年代後半から日本マットに定着し、選手としてだけでなく新日本プロレスの渉外部長として日米マット界の懸け橋となり、ドーム興行で隆盛を極めた90年代の新日本プロレスの黄金時代に大きく貢献した。引退した99年にパーキンソン病を発症し、亡くなるまでモットーの「GO FOR BROKE(当たって砕けろ)」を掲げ、懸命に病と闘った75年の人生。「WEB報知」では、マサさんの妻・斎藤倫子さんを取材。「甦るマサ斎藤、永遠のGO FOR BROKE」と題し、マサさんの秘話を連載します。第4回は、「知られざるアントニオ猪木への思い」。

 2018年7月22日。東京・港区の梅窓院でマサ斎藤の告別式が営まれた。出棺時、柩を運んだのは坂口征二、北沢幹之、長州力、キラー・カン、前田日明、タイガー服部、武藤敬司、蝶野正洋、佐々木健介、西村修、中嶋勝彦、マサ北宮の12人だった。いずれも生前のマサと親交があるレスラー、レフェリーだったが、中にはマサとほぼ絶縁状態となっていた者がいれば、柩を運んだレスラー同士でも、もう2度と顔を合わせることはないと言われている間柄の者もいた。恐らくこの顔ぶれが公の場で出会うことは、今後ないだろう。誰からも愛され信頼されたマサだからこそ実現した奇跡の遭遇だった。

 そして倫子は、出棺の時をこう振り返る。

 「マサさんは、とても心が豊かで、人を愛し愛される人でした。ピースメーカーでもありました。ですから、過去にいろんな思いを持っていることがあったかもしれませんが、マサさんの中では、きっとこだわりはないだろうと私は思いました。ですから、並外れた猛暑の中、大きな棺を運んで頂いた皆様には感謝しています。ただ、私には、出棺も葬儀のシーンもすべてに現実味はなく、映画を見ているかのように呆然としていました」

 奇跡の遭遇が起きた告別式の前日。21日の通夜には、人知れずアントニオ猪木も弔問に訪れていた。ただ、猪木は当時、脊柱管狭窄(きょうさく)症を患っており、目前に手術を控え、歩くことが難しい状況だった。梅窓院に面した道路に車を止めると、窓を開け、葬儀が営まれた会場へ両手を合わせたという。

 「後日、猪木さんは、関係者から私の電話番号を聞いたみたいで直接、お電話を頂きました」

 マサと猪木は、マサが日本プロレスに入門してからの間柄だった。猪木が豊登に引き抜かれ、1966年に東京プロレスを旗揚げするとマサも合流した。東京プロレス崩壊後は、単身、渡米し実力で全米マットでトップヒールの地位を築いたマサ。その後、猪木が72年3月に旗揚げした新日本プロレスに参戦。猪木とは、87年10月4日、山口県の巌流島で無観客で行った2時間5分14秒の死闘が伝説となっている。生前、マサは巌流島の戦いを「プロレスラーとしての誇り」と明かしていた。そして、猪木への思いを倫子へこう伝えていた。

 「マサさんは、猪木さんのことをターザンみたいな人だと言っていました。スパーリングをした時に“あんなに柔らかくてねちっこい人はいない”と言って“猪木さんと手を合わせた瞬間、強いと思った。あの人がレスリングをやっていなくて良かった。もし、やっていたら、オレは東京五輪に出られなかった”と敬意を表していました」

 猪木もマサが亡くなった後に、取材で「特別なレスラー」と感謝していた。時代を築いたトップだけが知る境地がそこにあった。

 数々のドラマがあった通夜と葬儀。喪主挨拶で倫子は「これから夢が実現するはずだったのに…」と号泣した。2人が抱いた夢を倫子は明かした。=敬称略=(取材・構成 福留 崇広)

若手時代のマサ斎藤さん(左)とアントニオ猪木(斎藤倫子氏提供)
マサ斎藤さんの棺を運ぶ長州力、佐々木健介、坂口征二氏、蝶野正洋、前田日明ら
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