うわさ通りの「ド」のつく天然ぶりとフンワリとした雰囲気に圧倒された。
16日、東京・浜松町の文化放送で行われた上口宏社長の定例会見。ゲストとして夏らしい白のワンピースで登場したのが、健康的な日焼けぶりから“黒過ぎる女子アナ”として人気の岡副麻希(26)だった。
最強の女子アナ事務所、セント・フォース所属のフリーアナウンサーとして、1月スタートの「岡副麻希のほくほくたいむ」(木曜・深夜2時)で初のMCに挑戦中。番組のゲストとして最多出演中の“ほぼ準レギュラー”「アンタッチャブル」の柴田英嗣(44)と20人の記者の前に現れると、放送半年を経過した自身初の冠番組について、「ここまで自由にして大丈夫かなと言うくらい、伸び伸びやらせていただいています。でも(トークに)自分の中でもオチがなくて…」と、いきなり笑いを誘った。
「裏に岡村(隆史)さん、おぎやはぎさんの、いつも急上昇ワードに乗るくらいの番組があって。(その2番組が)『もまれている社会の現代』って感じなら、こっちは『優しい保育』みたいな、ギャップがあります。(番組は)すごい包み込んでくれるゆりかごの中のような暖かい場所です。日本人が時間に追われた生活をしている中、普通の女の子でもやっていけると思ってもらって、ほっこりできる番組になればと思っています」と続けた。
隣に座った柴田が「今の話を聞いていても、何を言っているかよく分からない。よく文化放送さんも勝負してくるな。30分間、ツッコミまくって、しっかり番組を成立させないといけないなと正義感でやらせていただいています」と苦笑した天然発言の連発。
岡副が話したとおり、同時間帯の裏にはニッポン放送「ナインティナイン・岡村隆史のオールナイトニッポン」、TBSラジオ「JUNK おぎやはぎのメガネびいき」などの強力番組がズラリ。その天然の魅力はこれまで見てきた出演番組などから重々分かっていたつもりだったが、想像以上の「ユルさ」全開の返答。フリーアナとしての今後について、正直「大丈夫か?」と思ったから聞いた。
「ついに冠番組も持った今、ご自身のフリーアナとしての立ち位置をどう見ているか?」―
「昔からなんですけど、紹介される時に『フリーアナの岡副さん』と呼ばれるんですけど、そうなると『あれ?』って思うところがあって。かと言って、タレントさんと言うのもおこがましいし。ずっと、ずっと模索中なんですけど、どこにも属さない生き物というか…」と笑わせ、「取材先で『フジテレビの何々です』と言うのと違って。事務所の名前を言うのも違うし、(いまだに)フリーアナと言うのが、しっくり来なくて。なんですかね…。とりあえず名前は名乗るんですけど、なかなかしっくり来るものがないんです」と正直に続けた。
次々と返ってくるフワッとした答え。一方でフリーアナ戦線は熾烈だ。今年、民放各局で相次いだのが女子アナの電撃退社。TBSでは1月末退社の吉田明世アナ(31)に続いて、ツンデレ・キャラで人気となった宇垣美里アナ(28)が退社。大手芸能事務所「オスカープロモーション」所属のタレントとして活躍中だ。
テレビ朝日でも朝の情報番組などでエース級の活躍をしてきた宇賀なつみアナ(33)が退社し、フリーに。11年4月から昨年9月まで看板番組「報道ステーション」のサブキャスターを務めた小川彩佳アナ(34)に至っては、退社直後の6月からライバル局・TBSの看板番組「news23」のメインキャスターに就任する“離れ業”を見せた。
早大時代にフジテレビ系「めざましテレビ アクア」の現役女子大生キャスターとしてデビュー。フリーアナとしては“先輩”の岡副だが、数多くの有名局アナが退社してフリーアナ市場に参戦してくる現状に不安はないのだろうか。そう思ったから重ねて聞いた。
「これからフリーアナもサバイバル時代に入るのかと思うが、岡副さんはどのように自身の居場所を見つけていくのか?」―。
今度もこちらをじっと見つめてほほ笑んだ岡副は宇賀アナや小川アナについて「大先輩なんですけど、職業の先輩と言うより人としての先輩、女性としての先輩として拝見していて…。あまり同じ枠として捉えていないと言うか。どんどん世の中を元気にしてくれていて、私も元気になりますし…」と答えた。
こちらが重ねて「サバイバルへの危機感はないですか?」と聞くと、「おこがまし過ぎて、同じカテゴリーとして捉えていないというか。絶対、私には『news23』とかの話は来ないし。でも、『news zero』のインスタライブは拝見していて、面白いなって」と記者たちを笑わせた。
「いいのか。そんな答えで」―。思わず隣で口にした柴田は、それでも岡副について、「可能性しかない。なんせ、こんな人間見たことないですから。他のフリーの人のこと聞かれて、『世の中を元気にしてくれる』って答えが返ってきちゃう子なんで。可能性は無限大ですね。やりがいがありますね。ツッコミサイドとしては」と変な評価をした。
私も柴田の言うとおり、こちらの“ガチな”問いかけに、真面目ながら、どこかピントのずれた答えを続ける岡副の笑顔を見ていて、戸惑いより先に面白みを感じた。
いまだ「女子アナ30歳定年説」がささやかれるほど、旬の時期が短い女子アナという存在。入社数年での退社と直後の大手事務所入り。そのさらに上を行くライバル番組への“移籍”と、仁義も何もない局アナたちの激し過ぎる動きにやや疲れを感じていただけに、岡副の「フワリ」「ノンビリ」とした答えの数々に、どこか癒やされたのは事実だ。
女子アナの人生も様々だ。ある人は社内での自身の待遇に不満を持ち、退社を選んだのかも知れない。ある人は年収アップを目論んでフリーとなったのかも知れない。もともとタレントになりたくて、その手段として、約1000倍の倍率をくぐり抜けてキー局アナとなった人だっているだろう。そこには“女の戦い”が確かにある。
同じ文化放送で4月から朝の番組「なな→きゅう」(月~金曜・前7時)のパーソナリティーを務めている日本テレビ出身のフリーアナウンサー・上田まりえ(32)は3月の定例会見で意気込みを聞いた私に目を輝かせて、こう答えた。
「基本的に動いてないと死んじゃうタイプなんで。ヒマが苦手なんですよ。何かしらやってたいというタイプなので。いろいろなことに挑戦したいと思ってますし、今回の『なな→きゅう』も自分にとって、人生の新しいチャンスであり、責任も感じながらやらせていただけるものと思ってます。自分でどんどん動いていきたいんです。いろいろなことにトライしたい。人生、もう33になるんで。やばいな、あと50年生きられるかな、時間ないと思って生きているんですよ」―。
どうだろう。いい意味でギラギラした上田と、どこまでも「フンワリ」した岡副。対照的だが、どちらにもシビアな女子アナの世界でのサバイバルをかけた、したたかな計算や思いもまたあるのかも知れない。
それでも私は自身初の冠番組について、「すごい包み込んでくれるゆりかごの中のような温かい場所」と表現した岡副の“ゆる~い”ラジオ番組を聞きたいと思う。何かと人のあらを探す世知辛い世の中、一つくらいは、そうした「ユルさ」が存在してもいいと思うから。(記者コラム・中村 健吾)
◆岡副 麻希(おかぞえ・まき) 1992年7月29日、大阪・富田林市生まれ。26歳。大阪桐蔭中・高を経て、早大文化構想学部卒。大学1年時から読者モデルとして活動開始。14年から芸能プロダクション・スプラウトに所属し、フジテレビ系「めざましテレビ アクア」に現役女子大生キャスターとしてレギュラー出演。天気予報を担当する。15年、早大卒業後、フリーアナウンサー事務所・セント・フォースに移籍。フリーアナとして活動のかたわら、フジ系「痛快TVスカッとジャパン」などで女優にも挑戦。今年1月から文化放送で初の冠番組「岡副麻希のほくほくたいむ」がスタートした。特技はピアノ、フィンスイミング日本選手権1500メートル優勝歴を持つ水泳など。血液型A。
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